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2021-06-21
米国トランプ政権や英国のEU離脱に象徴される2010年代中盤からの保護主義への回帰は、多くの産業においてこれまでのグローバルでの規模拡大と効率化競争に一定のブレーキをかけた。そこに昨今のCOIVD-19やそれに起因する様々な物資の供給不足が物理的な追い打ちをかけ、グローバル経済は多極分散化へ向かっている。
自動車産業のグローバル経営を振り返ると、端的に言えば完成車メーカーは展開地域の拡大と人気車種の開発による成長の追求であり、部品サプライヤーはそれらへの追随と原価低減要請への対応が主軸であった。しかし多極分散化する世界においては、従来の規模拡大や効率化だけでなく、有事への対応力を含むレジリエンスや、各地特有の制度・ニーズを踏まえたローカル対応力を大幅に強化する必要がある。世界的な潮流となったカーボンニュートラルの実現に向けても、各国がたどりうる道筋は様々であり、パワートレインの構成変化やCO2削減においてもローカル市場への対応が求められる。
このような状況で企業は、喫緊の課題として自社の展開地域と製品ポートフォリオの見直しをすべきである。従来のグローバル最適による効率化は一部断念せざるを得ず、相対的に収益性が低下することが想定されるため、一定の絞り込みは避けられないだろう。一方、レジリエンス強化のため生産・調達などの現地化を進める場合、固定費をカバーするために進出地域・製品を拡大するといったポートフォリオの転換が有効となることもある。
また個社単位での取り組みを超え、同業他社同士の水平連携や完成車メーカーとサプライヤーの垂直連携ができる分野もあるはずである。例えば、供給不足が叫ばれる半導体や電池などに関してはキャパシティの共同確立や仕様の標準化・共通化など、カーボンニュートラルに向けてはグリーン電力の共同確保や部品リサイクルの仕組み構築などが、縦・横連携で追及できる可能性がある。
そして各地での収益性を維持・向上させるためには、現地でのサービス事業の強化も重要である。世界各地でクルマのコネクテッド化やモビリティサービスが普及し始めており、従来の「モノ売り」以外の収益機会は広がっている。都市づくりやエネルギーマネジメントなどモビリティを超えた事業に進出するプレイヤーも多い。一方で留意しなければならないのは、サービス開発は現地固有のニーズに合わせることが必須であり、地域に根差した事業モデルを追求することである。
これまで述べた経営は、日本の本社主導では限界があり、現地に大幅な権限移譲が求められる。本社はグローバルで全体最適が必要な領域にフォーカスし、そうでない領域はローカル主導の事業運営に移行する。即ちマネジメント(執行)とガバナンス(監督)を明確に切り分け、本社はガバナンスに徹することになる。本社は長期トレンドに基づく大きな舵取りや経営人材の育成・配置などに重心を置き、各地の事業運営に関しては、期初に目標を設定したら、その後は原則として口出しせずに結果報告を受け、未達や不祥事の場合は更迭などの措置をとる形となる。そこまで徹底して権限移譲できるのか、が新しいグローバル経営の鍵となるだろう。
パートナー
PwC Strategy&
※本稿は、日刊自動車新聞2021年6月21日付掲載のコラムを転載したものです。
※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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