国際課税の大原則を転換するデジタル経済課税/第1の柱に係る最近の議論の動向について

2023-05-02

  • 第1回 概要・対象範囲・ネクサス・収益に係るソースルール
  • 第2回 課税ベースの決定、利益Aの配分、二重課税の排除、利益Aの執行、税の安定性、デジタルサービス税の撤廃
  • 第3回 利益B:一定の販売会社が得るべき独立企業間利益の算定を簡素化し効率化する新ルールの動向

【執筆者】
PwC税理士法人 国際税務サービスグループ(移転価格)
パートナー 舩谷 晃一(第1回~第3回)
ディレクター 城地 徳政(第1回~第3回)
シニアマネージャー 清水迫 誠(第3回)

第1回 概要・対象範囲・ネクサス・収益に係るソースルール

1. デジタル経済課税/第1の柱の概要及び背景

2021年10月8日、経済協力開発機構(OECD)は、BEPS包摂的枠組みメンバーである140の国・地域のうち136カ国・地域が、多国籍企業が事業を行う場所において公平な税を負担することを確保するための二つの柱について合意したとして、「経済のデジタル化から生じる税務上の課題に対処するための二つの柱の解決策に関する声明」を公表しました。

このうち第1の柱の下では、新たな課税権である「利益A」として、グローバル収益が200億ユーロ超かつ利益率10%超の多国籍企業について、物理的な存在の有無にかかわらず事業活動を行って利益を稼得している市場国に対して、収益の10%を超える利益として定義される残余利益の25%に係る課税権が再配分され、OECDでは年間1,250億ドル超の利益に対する課税権が市場国に再配分されると想定しています。

第1の柱の背景については、経済のデジタル化の進展に伴い、IT企業/デジタル企業は、市場国において物理的拠点を必要とせずに事業を行い、利益を稼得することができる一方、現行の国際課税原則においては、その国に物理的な拠点、すなわち恒久的施設(PE)がなければその経済活動が行われている市場国において課税を行うことができず、市場国で生み出された価値に見合った課税ができないという問題が生じていました。そのため第1の柱は、市場国に対して適切に課税所得を配分するための国際課税ルールの見直しであり、大規模な多国籍企業グループを対象として、グループ全体の利益のうち通常の利益を超える残余利益の一部を、物理的拠点の有無にかかわらず、市場国に配分するルールとなります。

また、第1の柱においては、新たな課税権のほかに、「利益B」として、グループ企業の市場国における基本的なマーケティング・販売活動について独立企業間原則に基づき一定の利益を固定利益として市場国に配分するルールが検討されています。これは、販売子会社の機能・リスク評価等に係る紛争が頻発していることを背景として、移転価格ルールの執行の簡素化を図るとともに、納税者のコンプライアンスコストを低減させ、税の安定性を高めることを目的とするものとされています。また、2021年10月のBEPS包摂的枠組み合意では、利益Bに関して、基本的なマーケティング・販売活動に対する独立企業原則の適用については執行能力の低い国の必要性に焦点を当てて簡素化及び合理化を進めることとされています。

本シリーズでは、「3. 2022年2月以降の議論の動向」(PDF参照)で紹介する進捗報告において提示された第1の柱の制度設計及び各構成要素に係るドラフトモデルルールの概要について解説します。

※本稿は、「月刊国際税務」2023年1月号に掲載された記事を転載したものです。
※本記事は、株式会社 税務研究会の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。

(全文はPDFをご参照ください。)

執筆者

舩谷 晃一

パートナー, PwC税理士法人

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城地 徳政

ディレクター, PwC税理士法人

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