「Transact to Transform――M&Aを通じた変革の実現」について語る 第7回

テクノロジー・メディア・情報通信業界に必要なAI新時代の未来志向型ディール(後編)

  • 2025-12-02

生成AIの登場を契機に、テクノロジー・メディア・情報通信(TMT)業界は、これまでの産業構造や競争原理の再定義を迫られています。いわゆる「AI anywhere」の時代、企業の競争力を支える基盤は、純粋な製造能力から、計算資源・データ・信頼性・スピードへとシフトしつつあります。こうした環境下で問われるのは、M&Aやアライアンスを変革のドライバーにして、産業構造の変化を先取りしていく力です。「Transact to Transform――M&Aを通じた変革の実現」をテーマにした対談シリーズ第7回では、TMT業界のプロフェッショナルが、AI新時代における業界の構造転換や、それに対応する新しいディールの在り方などについて、技術・経営・法務の3つの視点から議論しました。後編では法務の視点と、これからのディールの在り方について考察を深めます。

登場者

PwCコンサルティング合同会社 パートナー
長谷川 宜彦

PwCアドバイザリー合同会社 パートナー
西川 裕一朗

PwCコンサルティング合同会社 パートナー
三治 信一朗

PwC弁護士法人 パートナー
茂木 諭

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

左から、三治 信一朗、長谷川 宜彦、西川 裕一朗、茂木 諭

AI新時代のM&A・アライアンスにおける法務の要点

不確実性を前提に、リスクアロケーションを図る

長谷川:西川さんが話したとおり、新しい時代のディールの要諦が徐々に見えてきたように思います。その一方で、実際にM&Aやアライアンスを進める際には、やはり法務の観点から安心・安全を担保し、リスクを適切にコントロールするための仕組みづくりが不可欠です。とりわけスピード感が重視されるAI新時代のディールにおいては、法務上の確認や設計の精度が事業全体の成否に直結する場面も増えていくでしょう。そこで、AI関連企業とのディールを検討・実行する際に、法務面で最優先に確認・設計すべきポイントは、どのようなものがあるのかを茂木さんに伺います。

茂木:ここまでの話の通り、AIの世界は非常に先進的で、新しいものを生み出して、これまで実現できなかったことに挑戦していく領域ですが、私たち法務の専門家の役割は、それらの新たな挑戦に対して、法的観点からどこが重要になるのか、何がリスクになるのかを見定めていくことだと考えます。AI関連企業とのディールを検討・実行する際の、法的な着眼点は大きく2つあると考えます。

1点目は企業が買収によるメリットを最大限かつ確実に享受するための法的な着眼点です。特にAI開発企業においては、知的財産の確保とキーパーソンのリテンション(人材の確保)が、競争優位性を維持する上で重要な要素だと思います。開発段階を含めた権利の所在やライセンスの範囲を明確にしておくことは、買収後に想定外の法的リスクが生じることを回避するための基本的な備えとなります。

2点目はAIのような先進技術の特性として、技術の新しさゆえに法規制が後追いで整備されるということです。現時点では規制対象となっていない事項についても、将来的には法制度のループホール(抜け穴)が埋められて、規制強化される可能性も否定できません。したがって、AI関連企業とのアライアンスやM&Aを進める際には、近い将来の規制追加・変更を見越した契約設計が重要になります。

また、AIを「開発する企業」と「利活用する企業」とでは、直面する法的課題の性質が異なるため、問題となる事例において「何が問題となるのか」を個別具体的に検討する必要があります。例えば、生成AIの活用においては、著作権の問題が顕在化しており、コンテンツの合法的な利用方法を明確にしておかなければ、AIの利活用自体がリスクになってくるということをしっかりと理解して進めなければなりません。

PwC弁護士法人 パートナー 茂木 諭

長谷川:AI関連の法的リスクの査定において今後は、法務はもちろんのこと、テクノロジーの観点を持った人材も一緒に査定にあたることが必須になっていくように思います。

茂木:その通りです。テクノロジーの専門家が法的リスクを十分に理解しているケースは少ないのと同じように、法務の専門家がテクノロジーの仕組みや現場の課題感を十分に理解しているケースも少ないのが実情です。中にはテクノロジーと法律の両方に通じている人もいますが、そのような少数の人材だけに頼って組織を動かしていくことは現実的ではありません。したがって、テクノロジーと法務、それぞれのスペシャリストが連携して進めていくことが重要になるでしょう。そうした体制を整えておけば、見落としかねない法務上の落とし穴を回避できる可能性は格段に高まると思います。

長谷川:別の観点の指摘になりますが、AI新時代のディールや事業開発を考えるうえでは、AIが扱うデータそのものの正しさも重要であると思います。そのデータはそもそも正確か、適切に収集・管理されているか、そのデータをもとにAIが導き出した解やソリューションは確からしいものかなど、データの適正性と信頼性をいかに見極めるかという視点も、リスクマネジメント上の大きなテーマになっていくように思います。

茂木:「データそのものの確からしさ(AIが扱うデータが客観的事実として正しいかどうか)」や「AIが導き出した解やソリューションの確からしさ」は、非常に重要な論点です。ただし、それを利用している段階で正しいか否かを判断することは利用する関係者には非常に難しく、分からないまま使われていくケースが多いのが現状だと思います。したがって法務の観点では、将来的に誤りが見つかった際にいかに損害や責任を最小限に抑えるかという点を契約に落とし込んでいくことが重要になります。

AIの関係するディールの場合、不確実性を完全に排除できないため、契約締結時点で全てのリスクを把握することは不可能です。ですから、潜在的なリスクが顕在化した時にリスクをどのようにアロケート(分配)するかを明確にしておくことが重要になります。開発者、利用者、運用者のそれぞれが一定程度のリスクを取っていく必要があるので、どのようなリスクを誰が負うかといったアロケーションが適切であれば、各当事者の想定の範囲内となりトラブルは最小限に抑えられるはずです。つまり、AI新時代の法的リスクマネジメントは「不確実性をなくすこと」というよりは、契約において不確実性に備え、「リスクを適切にアロケートしていくこと」が重要だと思います。

長谷川:なるほど、「リスクアロケーション」が必要なのですね。買う側も売る側も、組む側も組まれる側も、それぞれがリスクをある程度が取らなくてはならないわけですから、そのアロケーションを適正化するよう法的にチェックしていくという感じですね。

茂木:そうですね。利害対立のある当事者間においては、いずれか一方にとって百点満点の契約交渉は存在しないという理解が前提です。契約交渉のエコノミクスの観点からは、いずれかに偏りすぎた結論ではなく、プロセスの中でいかにフェアに物事が分配されていくかという点が重要になります。契約の流れをフローチャートに例えるなら、交渉から締結、運用に至る各段階で、関係者が納得感を持てるかどうか、つまりそれぞれの経済的利益やリスクが適切かつ公正に反映されているかどうかがポイントです。

長谷川:納得感が得られるよう、リスクアロケーションの考え方をしっかりと契約の中に落とし込んでいくこと、明文化されたもののうえでビジネスジャッジすることを促進するために、法的な観点が重要だということですね。

PwCコンサルティング合同会社 パートナー 長谷川 宜彦

茂木:もう一つ、生成AI関連のM&Aやアライアンスの際に注意しておかねばならないのは、競争法の問題です。生成AI関連市場では、ビッグテックや先行した大企業が新規有望企業を取り込む流れや、支配的地位を既存のプラットフォームを利用して新規市場でも確立しようとする傾向があります。そのため、M&Aやアライアンスにおいては、競争法上の問題点も理解・認識したうえで検討を進めていかなければ、目的を達成できない可能性があります。

このような観点については公正取引委員会も着目しているようで、2024年には生成AI関連市場における公正かつ自由な競争の維持・促進に資するための論点整理として、生成AIを巡る競争に関するディスカッションペーパーを公表して情報・意見を募集するとともに、関係事業者へのヒアリングを実施しました。また2025年には、その成果を踏まえた「生成AIに関する実態調査報告書(ver.1.0)」を取りまとめており、半導体チップやAIソフトウェアへのアクセス制限、他社排除、既存デジタルサービスとの抱き合わせ提供といった行為が、独占禁止法上の問題を生じさせるおそれがあると指摘しています。したがって、今後のM&A・アライアンスの検討にあたっては、取引行為が独禁法上・競争法上のリスクを内包していないか、また対象会社に同様の懸念がないかなどについても、慎重に精査することが肝要になります。

長谷川:AIソリューションビジネスにおけるボトルネックは、今後ますます特定の領域に集中していくように感じています。その一例が、GPUなどの演算能力やデータセンターといった計算資源の確保・争奪戦です。さらには、その根幹を支える電力供給やエネルギー確保も同様に競争になっていくでしょう。こうした状況を踏まえると、競争とアライアンスが重なり合う領域で、企業の戦略的行動が一層激化する、そのような構造で捉えるべきだと考えてよいでしょうか。

茂木:まさに、そうした競争の激化はすでに顕在化しています。関係当事者が平等な立場で一斉に市場を取りに行くパターンもあれば、先行する大企業が構築してきたアプリケーション、システムやプラットフォームの中で、新興のAI企業が独自に力を発揮できないまま買収されていく――そんな構図も見られます。

2024年にイタリアで開催された「G7競争サミット」において、大規模AI関連企業が中小規模のAIベンチャーを事実上グループ内に取り込む動きについて、各国当局が懸念を示しました。このような取り込み手段として、資本提携や買収といったストレートな企業結合ではなく、ファイナンスやライセンス、人材の確保といったかたちで、現行の法制度の枠組みでは捉えきれない手法が用いられるケースも増えてきていることは注目すべき点の一つです。このような動向には、世界の競争法の関係者も強い関心を寄せていると言われており、今後は、こうした新しい動きを踏まえ、法制度面でも何らかの対応が進む可能性もあると考えています。

長谷川:そういう意味では、企業間連携の焦点となる領域には、すでに当局の目線も向けられているということですね。今後はそうした領域に対して、何らかのレギュレーションや法規制の影響が出る可能性も十分に考慮しながら、戦略を進めていく必要があるということですね。

茂木:競争法の観点では、公正な競争環境を維持することが最も重要とされていますが、一方で、こうした規制が、日進月歩の技術革新のスピードや方向性を阻害してしまうリスクもあるのではないかと考えています。もちろん法令遵守は大変重要ですが、この点について、ビジネスやテクノロジーの観点から見た時、どのように捉えるべきか、皆さんの考えを聞かせてください。

三治:テクノロジーの観点でグローバルなGDP動向を見ていくと、例えば中国では、わずか数社のビッグテックが国内経済全体の成長を牽引し、結果として国家のGDPを大きく押し上げたという構造が見えてきます。一方で、日本は失われた30年と呼ばれた期間において、同規模のビッグテックを生み出すことができませんでした。ここには、産業の求心力となる成長エンジンを欠いたという明確な課題があったと考えています。

産業革命の歴史を振り返っても、各時代の成長を牽引してきたのは、常にエンジニアリングの力だったと言えます。米国では、エンジニアが金融工学の分野に進出したことで金融業の生産性が飛躍的に向上し、その成果がGDPに反映されました。そして現在の第4次産業革命では、エンジニアが金融以外の産業にも進出し、生産性を高める仕組みそのものを設計することによって社会全体の成長構造を変えつつあります。このように見ていくと、エンジニアが果たしてきた役割は単なる技術革新にとどまらず、科学的アプローチを通じた社会の生産性の底上げだと思います。したがって過剰な規制など、その求心力を阻害する要因を作ることは避けた方が良いという仮説を私は持っています。

一方で、1つのプレーヤーが支配的地位を確立してしまうと、それ自体が市場の新陳代謝を阻害する可能性もあります。とはいえ、そこまでのプレーヤーが育ちきっていないのが日本の現状です。今はむしろ戦略的に一定の規模と影響力を持つテクノロジー企業を育て、そのうえでルールを整備していく順序が適切ではないかと考えます。

PwCコンサルティング合同会社 パートナー 三治 信一朗

長谷川:私はテクノロジーや法務の専門家ではありませんが、産業構造を俯瞰する立場から見たときに、特にTMT業界はテクノロジードリブンで動いているという実感があります。つまり、個々のエンジニアや起業家たちが、それぞれに「こういう未来を実現したい」というビジョンを描き、その想いが着火点となって新しい技術が次々と生まれていき、その総体として産業が前進しているという構図です。そして、こうした技術進化の流れが加速していくと、特定のビッグテックが市場を寡占し、競争が極端に集中する局面が訪れます。その段階で初めて当局が動く、つまり制度や規制が後追いで整備されるという構造が今後も続くと思います。特にTMT業界は「技術に引っ張られて制度が作られていく」といった構造の中で発展していくことは間違いなく、AI新時代におけるTMT業界という観点では、特にその傾向が強いと考えます。

ここまで、AI新時代におけるディールの留意点や新たな法規制が求められる背景などについて掘り下げてきました。その一方で、現在の法制度の中にすでに存在している、AI関連のディールを進める際の留意すべき規制やルールについては、いかがでしょうか。

茂木:AI新時代において法的に確保すべき権利として、よく議論されるものとして、先ほど触れた生成AIの文脈における著作権が挙げられます。その他にも侵害されやすいものとして、機密情報や個人情報、肖像権、営業秘密などがあり、特に生成AIを利活用する際に「使いやすい、使いたい、それがゆえに、侵害されやすい」という側面があります。

日本のように、今後ますますコンテンツビジネスを重要な産業として育てていかなければならない国においては、こうした権利をしっかりと保護する方向へ法制度や法規制を進めていくことが望ましいと考えます。ただし、繰り返しになりますが、保護を強めすぎるとAI技術やこれに関連するビジネスの発展を妨げかねないでしょう。例えば、以前より「機械学習パラダイス」と言われるように、日本の著作権法上には機械学習のために一定の利用を認める例外規定がありますが、生成AIの活用範囲が広がるにつれて、それでも現状ではその適用範囲に限界があって実務上は使いづらい部分があるという意見もあります。法律はどうしても整備までに時間を要しますから、行政がタイムリーに一定の方針を打ち出すことや、法規制を設計する側が業界動向を的確に把握して、新たな動きに合わせた法制度をつくっていくことが大切です。そうした柔軟なアプローチによって、技術の進展と権利保護のバランスを取りながら、日本のコンテンツビジネスを発展させていくことが重要なポイントになると思います。

長谷川:非常に興味深いですね。規制に対して非常に敏感で強固なレギュレーションを整備する地域がある一方で、比較的寛容に技術の発展を優先させるところもあるなど、国や地域ごとの温度差やアプローチの違いも、今後現れてくるのでしょうか。

茂木:もともと規制が強い国と緩やかな国、さらには保護主義的な立場をとる国とそうでない国とでは、法規制の在り方は大きく異なります。日本は極端な保護主義ではありませんし、新しい技術の活用を認めながら、著作権の保護に裏打ちされた文化の発展も促していく立場をとっています。AIの活用や新しいテクノロジーに関しても、ある程度の自由度を持たせつつ、権利保護、安全性や倫理面をどう担保していくか――そのバランスを取ることが非常に難しい局面にあるようには思います。

長谷川:先ほど話題に上がったコンテンツビジネスの輸出の話にも通じますが、今後は各国の異なる規制を踏まえたうえで企業間連携を設計していく必要があるということになりますね。もはや「日本国内で完結すればよい」という段階ではなくなっています。そうなると、グローバルレベルでレギュレーションを把握し、それらを踏まえて事業を組み立てていかなければならないという難しさが、今後ますます高まっていく可能性を感じました。

茂木:ビジネスの裾野が広がるほど、各国・各地域の規制を事前に確認し、適切に対応していく必要あります。そうした法規制への理解や準備を怠ると、思わぬところでつまずくリスクも増大します。したがって、規制対応を含めたリスクマネジメントを戦略的に組み込んでおくことが、グローバルにビジネスを広げていくうえで今後一層重要なポイントになります。

TMT業界のこれからのディールは「想像力の競争」

リープフロッグの発想で未来を描き、加速化させる

長谷川:TMT業界におけるM&Aやアライアンスは、今後ますます様相が異なってくることが分かりました。TMT業界で、そうした新しいタイプのディールが起こるきっかけは、どのような要因が考えられるでしょうか。また、日本企業は総じて慎重で、スピード感をもって意思決定を行うことが得意ではない面もあると思います。そうした企業が新たなビジネスを創出するために、あるいは変革を迫られて手を出さざるを得ないかたちでディールに踏み込むとすれば、どのような未来が予想できるでしょうか。

西川:まず日本企業の歴史を振り返ると、やはり外圧が変革のきっかけになってきたことは否めません。これは産業構造の転換期を振り返っても共通しており、日本企業が大きく動く時の起点は常に外部からの刺激でした。

TMT業界も例外ではなく、グローバルプレーヤーとの競争は避けて通れません。その競争に後れを取らず、対抗していくための手段として、M&Aを起点とした動きが加速しているのは間違いないと思います。M&Aの本質は、自社では生み出せないものを外部から取り込むための手段です。どれほど研究開発力を有する企業であっても、社内だけで新しいテクノロジーを創出し続けるには限界があります。だからこそ、CVCの活用や積極的なM&Aを通じて、新しい技術や発想を取り入れる仕組みを構築していく必要があるのだと思います。その観点で見ると、TMT業界のプレーヤーはもともと外部リソースとの連携に慣れており、M&Aとの親和性が高い産業領域です。こうした動きは、今後さらに広がっていくのではないでしょうか。

同時に、日本のTMT業界におけるM&Aは、これまで以上に「想像力」が問われる時代に入っていくと思います。ある技術を買収しようとする時、その価値を算定しようとすれば、必然的に事業計画を作成する必要が生じますが、その事業計画は作り手の想像の範囲を超えることはできません。しかし実際には、その技術が想定以上の大きなポテンシャルを秘めている可能性もあります。日本のTMT業界におけるM&Aは、単なる資本取引ではなく「未来をどこまで描けるか」というチャレンジングな想像力の競争、いわば「未来志向のディール」へと進化していく時代に入っていると感じます。

PwCアドバイザリー合同会社 パートナー 西川 裕一朗

長谷川:なるほど。これまでクライアントからはディールありきの相談や依頼をされることも多かったように感じます。しかし今後はもう一歩踏み込んで、「こういう新しいビジネスをつくりたい」「この領域で新たな価値を生み出したい」という大元の議論の段階から私たちも介在させていただくことで、その結果として「M&Aが必要ですね」「戦略的アライアンスを組むのが最適ですね」、あるいは「自社でつくるべきですね」などの選択肢の提案を行っていくべきだということですね。未来を一緒に想像して描きながら伴走し、TMT業界の企業変革に関わっていくことが、我々の果たすべき役割だと、本日の議論であらためて感じました。

三治:私も「未来をどれだけ想像できるか」がポイントだと思います。先日も、ある講演の中で「AIがもたらす変革を『リープフロッグ的』に捉え、想像力をもって戦略を描いておくことが重要だ」ということが話題に上りました。リープフロッグとは、既存の段階を一気に飛び越えて次のステージへ進むという考え方です。AIをキーワードに、そうした飛躍を見据えた世界観を早い段階で共有できていれば、あとはそこに向かって進むだけだという共通認識が組織全体で生まれていくはずです。ですから私としては、AIを軸にまずリープフロッグ的な発想で未来を描き、1年程度のスパンでそこにジャンプしていく――そんなスピード感で動くことが今後のTMT業界には必要だと感じています。いろいろなオプションを活用すれば、その実現可能性は十分にあると思います。

西川:繰り返しになりますが、日本のTMT企業は、AI関連企業と対立するのではなく「組む」という選択肢や、著作権を守るのではなく「広く利用してもらう」という方向に舵を切るという判断もあり得ると思います。どのリスクを取り、どの機会を生かすか、その判断が企業の未来を左右します。まさにTMT業界におけるM&Aとは、そうした戦略的意思決定の連続だと思います。

長谷川:本日の議論を通じて、AIの進化がTMT業界にもたらす構造転換の深さとスピードを改めて実感しました。AIがあらゆる商材・サービスに常駐し、対話を起点とした自律的な運用が主流となる「AI Anywhere」の世界では、企業の競争力の源泉が、これまでの製造能力から、計算資源・電力・信頼性・運用力へとシフトしていきます。こうした環境下では、従来の垂直統合型・自前主義の限界を見極め、自製と外製のバランスを再定義することが不可欠です。また、M&Aやアライアンスを通じて「時間を買う」戦略の重要性もかつてなく高まっています。ディールの目的は、単なる企業結合や資産の取得ではなく、変化を先取りし、事業変革の起点を生み出すことと言えるでしょう。その意味で、これからのディールに求められるのは、やはり「想像力」と「スピード」です。技術の進化が制度を動かし、競争環境が構造を変えていくことから、その最前線にあるTMT業界にとって、「Transact to Transform(M&Aを通じた変革の実現)」という発想は、もはや選択肢ではなく必然と言えます。


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