「Transact to Transform――M&Aを通じた変革の実現」について語る 第7回

テクノロジー・メディア・情報通信業界に必要なAI新時代の未来志向型ディール(前編)

  • 2025-12-01

生成AIの登場を契機に、テクノロジー・メディア・情報通信(TMT)業界は、これまでの産業構造や競争原理の再定義を迫られています。いわゆる「AI anywhere」の時代、企業の競争力を支える基盤は、従来の研究開発やものづくりから、計算資源・データ・信頼性・スピードへとシフトしつつあります。こうした環境下で問われるのは、M&Aやアライアンスを変革のドライバーとし、産業構造の変化を先取りしていく力です。「Transact to Transform――M&Aを通じた変革の実現」をテーマにした対談シリーズ第7回では、TMT業界のプロフェッショナルが、AI新時代における業界の構造転換や、それに対応する新しいディールの在り方について、技術・経営・法務の3つの視点から議論しました。前編では主に技術と経営について意見を交わします。

登場者

PwCコンサルティング合同会社 パートナー
長谷川 宜彦

PwCアドバイザリー合同会社 パートナー
西川 裕一朗

PwCコンサルティング合同会社 パートナー
三治 信一朗

PwC弁護士法人 パートナー
茂木 諭

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

左から、三治 信一朗、長谷川 宜彦、西川 裕一朗、茂木 諭

左から、三治 信一朗、長谷川 宜彦、西川 裕一朗、茂木 諭

TMT業界を取り巻く産業構造の変化

計算資源や電力などの制約下で、「自製」と「外製」を再設計する

長谷川:2025年は、「AIエージェント元年」と言われます。AIの実装に向け、関連企業がM&Aやアライアンスを一斉に加速させており、まさにAI新時代の幕開けを告げる1年になったと感じています。

生成AIの利活用を中心に各社で議論が進んでいますが、その進化はすでに次の段階に入っています。自律的に動くAIがあらゆるモノに常駐し、対話を起点としたサービスが進み、現場とクラウドが連携して自律的に動く世界がすぐそこまで来ているからです。AIはサービスやソフトウェアにとどまらず、車やペンといった日常生活上のハードウェアにも組み込まれ、「AI anywhere」が進んでいくでしょう。これは、インターネットやスマートフォンの登場に匹敵する構造転換であり、産業や社会の在り方そのものを大きく変えるものであると考えています。

特に、テクノロジーを中核とするTMT業界にとって、このインパクトは極めて大きいと言えます。TMT業界には製造業を源流とする企業が多いですが、AIの進化によってこれまでの常識が通用しなくなる局面が必ず訪れます。例えば、AIを活用したグローバルサービスを展開する際には、消費電力の大きいスーパーコンピューターや高性能GPUが欠かせませんが、データセンターや電力、通信容量は新たな制約条件となりますから、産業構造全体に影響を及ぼすことになります。

こうした環境変化の中で、「企業は全てを自前でまかなうのか」、それとも「M&Aやアライアンスを通じて外部の力を取り込みながら変革を進めていくのか」、「そのバランスをどう変えるのか」という観点を意識していかねばなりません。AI新時代においては、これまで以上にM&Aで経営における「時間を買う」余地が大きくなりますから、それに伴うさまざまなリスクへの配慮も必要です。

本日は、この産業構造の変化とディール戦略の行方について議論を深めていきたいと思います。まずは、このAI新時代においてTMT業界が受ける産業構造の変化(制約条件)はどのようなものになるか、これまでとの違いに焦点を当てながら、技術的観点で解説を三治さんにお願いしたいと思います。

PwCコンサルティング合同会社 パートナー 長谷川 宜彦

三治:TMT業界は、長谷川さんのおっしゃる通りAIのインパクトを「受ける側」でありますが、同時にインパクトを「起こす側」でもあると考えます。テクノロジー企業はまさに、AIを活用する側としてフロントに立たねばならない立場です。エンタテインメント&メディア企業でもAIの活用は加速しつつあり、コンテンツのビジネス化と、そのハイサイクル化が求められる時代になってきていると思います。

最も大きな変化は、生成AIを皮切りに、AIエージェントが登場し始めたことです。これまでのAIは情報の意味を理解し活用する「意味抽出」が難しかったのですが、生成AIによって社会性を学ぶようになりました。ここでいう社会性とは、人間社会における役割や関係性を理解して振る舞える能力のことです。AIエージェントの仕組みを使えば、AIが「どのような場面で、どんな役割を果たすべきか」を記述できるようになります。自動車を例にとると、「車内に搭載されたAIがどんな立場で機能すべきか」を定義し、その定義に基づいて必要なデータ通信や判断プロセスを設計できるようになるということです。運転支援に特化するAIと、車内のエンタテインメントを担うAIとでは、扱う情報や通信の内容がまったく異なります。したがって役割を明確にすることで、AIがより的確に目的を果たせるようになるのです。これは単なる技術の進化ではなく、AIが社会の一員として機能するための枠組みを与えるものであり、まさにイノベーションの根幹です。

これまで、自動車でも冷蔵庫でも、あらゆる機器は人間が操作することを前提に作られてきました。ところが今後は、機器そのものに役割が与えられるようになります。つまり、機器が自らの役割を理解し、人の操作を待たずに自律的に応答できるようになるのです。こうした変化によって、AIは人間の行動やデータを学習し、状況を予測して行動を最適化することが可能になります。モビリティの分野で言えば、そこにおける通信事業者の役割が大きく変わっていきます。従来は「通信を提供する」ことが主な機能でしたが、今後は通信を通じてユーザーの生活に寄り添い、行動や環境を踏まえて最適な支援を行う存在へと進化していくでしょう。例えば、カレンダー情報や地域のイベント情報を読み取り、移動や予定を先読みしてアシストする。あるいは位置情報や周辺環境をもとに、ドライバーや利用者に最適な行動を提案するといったサービスが、通信とモビリティの融合によって現実のものになりつつあります。AIが社会的な役割を学び、機器がその役割を果たす、いわば「フィジカルAI時代」の幕開けであり、これによって「サービス提供の仕方が根本的に変わる」といった変化に、企業は直面することになるでしょう。

一方で、AIの進化はエネルギーと計算資源(コンピューティングリソース)を前提にしており、それはすなわち制約となります。生成AIを動かすには大量のデータを瞬時に解析し続ける必要があり、そのためには膨大な電力と高性能なGPUが不可欠です。国家規模のプロジェクトでは、総予算の大部分をGPUの調達が占めるケースもありました。こうした状況を背景に、より効率的な計算基盤への転換が進んでいます。日本が強みを持つスーパーコンピューターや量子コンピューターなどの技術に加え、エネルギー源そのものの革新も注目され始めています。膨大なAI計算を支える新たな電力供給手段として、日本ではあまりなじみのない核融合や小型原子炉といった次世代エネルギー技術に投資が集まりつつあり、その変化に注目して、投資を始めているTMT企業も少なくありません。

もう1点、対応していかなければならないのが、AI新時代における「人間の在り方」の課題です。AIが急速に進化し、学習速度が飛躍的に向上することで、バックエンド業務やホワイトカラー的な職務の多くは自動化されつつあります。今後は、AIが担うべき業務と人間が担うべき業務を明確に分けて考える必要があるでしょう。人間ならではの価値を生み出す領域――人と人を結び付けるコミュニケーション、事業やアライアンスを構想する企画・戦略分野などは、これからも重要性を増していくと考えますし、人材のポートフォリオ自体を大きく変えねばならない世の中が早晩訪れると予想しています。テクノロジーが進化の起点となって産業構造に変化をもたらし、人々の行動変容を促す変化の波はすでに始まっています。

長谷川:そのようなAIの世界観に合わせて、商品・サービス・ソリューションも変わっていくでしょうし、企業もそれに応じた動き方に変わらざるを得ないほどのインパクトがあるということですね。こうした環境変化はもはや避けられない未来ですが、TMT業界の中でも製造業を源流とするテクノロジー企業群では、「垂直統合」や「自前主義」、自社内で強固に整備された仕組み・制度・プロセスを基盤として、製品やサービスを世に送り出すことが前提だったと思います。また、組織やオペレーションも、それを前提に構築されてきた印象です。しかし、AIの登場が起点となって産業構造に大きな変化が訪れるという認識のもと、従来どおり「自前で何でもつくる」といった構造は維持していけるのか、それともやはり他社と組まなければ前に進めなくなるのか、三治さんは、どのように考えますか。

三治:その点について、テクノロジー企業のCTOの方々と議論する機会が非常に増えています。CTOは10~20年の長期スパンで事業を見ておられますが、「20年前にドラスティックな流れが起きた」と振り返る方が多いですね。「コングロマリット型で多角的に事業を伸ばしてきたものの、約20年前に、CEOの方針を受けて『選択と集中』に舵を切らざるを得ず、花形事業を切り捨てるなどして選別しながら生き残ってきた。この20年は、集中的に内部の生産性を上げることが最重要だった」と語る企業もありました。

ただAI新時代では、その状況が明らかに変わりつつあります。これまでのように再生産を繰り返していくよりも、外部の変化スピードのほうが格段に速いからです。「速さ」に加えて、「広さ」も求められる時代であり、技術もビジネスもより多様に展開されています。これに自社だけで対応するのは難しく、アジリティを確保するには他社との連携が不可欠となります。また、パートナー探しをこれまでは国内にとどめていた企業も、「グローバルに事業を展開する自社にとって本当に必要なものは?」という視点で、M&A・アライアンスの関係の持ち方・広げ方を再設計しなくてはなりません。そうした危機感や、それに伴う組織体制の見直しが課題であるという経営上の懸念や組織的な課題意識をCTOからよく伺います。

R&D投資の考え方も変わってきていますね。以前は、研究開発機能を強化するための「外注」という位置付けでしたが、現在はそれをM&Aやアライアンスに置き換える動きが加速しています。外部の関係者とともに研究・開発を行うことが、スピードと柔軟性の両立につながるという認識が広がってきているのです。

長谷川:私はコンサルティングの立場でBPR(業務効率化)などを支援していますが、その際によく「コア業務」と「ノンコア業務」に分ける場面に直面します。従来のコア業務が技術進化によりノンコアと再定義され、そうした業務をAIに置き換える動きがあったり、これまで重視されなかった業務領域が重視され始めたることで、そこに積極的な資源注入を求められることもあります。こうした変化の中で企業は「自製」と「外製」を適切に使い分けなければいけないということですね。

また、既存のオペレーションやものづくり、ビジネスの仕組みなど、「既存」を多く抱える大企業は、バランスを取りながら新しい仕組みやオペレーション、ビジネスの在り方などを同時並行で考えていく必要があると感じます。

三治:生産性を高めるための取り組みは、これからも継続して行っていかなければならないでしょうね。そのうえで、AIを活用して生産性を高める動きというのは自製の領域でも起こってくると思います。一方で外部に求めるのは、「ビジネスそのものをつくること」になっていくのではないでしょうか。テクノロジー企業は、これまでの外注の発想ではなく「外部とともにどのようにビジネスを創出していくか」、あるいは「プラットフォームとの連携をどのような立ち位置で考えていくか」を、一層真剣に検討する必要があると感じています。

PwCコンサルティング合同会社 パートナー 三治 信一朗

TMT企業が再定義すべきディール戦略

選択と集中に求められるスピード感。サブセクター別にみるTMTの未来

長谷川:三治さんが解説したような状況は、まさに産業の範囲を超えた世の中の大変化であり、この変化によってTMT業界が大きく変わらざるを得ないことは、疑いようのない事実です。外部企業やベンチャー企業、あるいは産学官連携の協働など、さまざまなかたちでの外部連携が一層重要になります。そうした中で、長年続いてきた「自前主義の文化」との共存や「自製と外製のバランス」をどのように図っていくのかなど、TMT企業が直面する最大のチャレンジとはどのようなものになるのか、長年ディールアドバイザリーを提供している西川さんの意見を聞かせてください。

西川:三治さんからもお話がありましたが、TMT業界のプレーヤーは、AI新時代や急速なテクノロジーの変化の中で、自社が新しい技術を率先して取り入れると同時に、それをクライアントやユーザーへサービスとして提供していく立場にあります。よって、新しい発想や技術をいち早く取り入れ、それを自社のプロダクトやソリューションとして市場に出していこうとする新規事業開発のマインドセットは、どの企業も共通して有していると感じます。

ただ、企業が実際にそれを事業化しようとするとき、「新規事業だけで利益を生み出せるわけではない」という現実にも直面します。多くの企業では、既存事業で安定した利益を確保しながら新しい領域でさらなる成長を図ることのできるポートフォリオが必要になります。その際、重要になるのは「新しいものを取り入れる」と同時に「古いものを手放す」、あるいは「外部に出す」という動きを並行して行うことです。日本の大企業でも、新しい領域に積極的に踏み出す一方で、これまで自社が大切に育ててきた事業を早い段階で外部に切り出す動きを実現できているところが、結果として、最も大胆にイノベーションを取り込めていると言えるでしょう。

長谷川:確かにそうですね。現在私が支援している企業は、まさに「破壊と再生」を同時並行で推進しているフェーズにあります。既存事業の見直しと新たな成長戦略の構築が同時に求められる中で、そのインパクトの大きさに直面するとともに、変革を急ぐ必要性への強い危機感が生まれていることを感じます。

こうした企業では、既存のビジネスを最適な外部パートナーに委ねることで資源を効率化し、その原資を新規事業や成長領域への投資に振り向けていると思いますが、こうした「選択と集中」の戦略を明確に意図し、実行に移している傾向はやはり変革に積極的な企業に多い印象でしょうか?

西川:多いと思います。投資資金をほかの領域に振り向けるというキャピタルアロケーションにとどまらず、マネジメントや組織全体のベクトル、そして従業員のモチベーションといった観点からも、次の世代に向けて自分たちがどの方向へ舵を切るべきかなど、より新しい領域へ意識を向けやすくする、いわば「意識のアロケーション」も進んでいるように思います。

長谷川:今はまさに、企業がトランスフォームしていく過渡期にあることを実感します。既存事業(収益の柱であるメイン事業)を維持しながら新しい事業を同時に立ち上げていく「同時並行」の期間は、数年単位で続くものなのでしょうか。

西川:そうですね。この1~2年の日本の資本主義市場改革は、経営者がこれまで想定してきた時間軸をはるかに上回るスピードで進んでいると思います。20〜30年前と比べると資本主義の考え方は隔世の感がありますし、かつては経営不振企業を低価格で取得し、リストラや事業再編で企業価値を高めたのちに転売や上場によって利益を得る存在というイメージのあったプライベート・エクイティ(PE)ファンドも、今では「ベストオーナーを探す」という選択肢を日本企業が考える際に、欠かせない存在となっています。

こうした背景を踏まえると、構造転換が求められる日本企業は、3~5年というスパンではなく、1〜2年という短いサイクルで改革を終え次の世代や新たな事業へと舵を切っていくスピード感が期待されているのではないでしょうか。それは資本市場の要請でもあり、経営者も、そのような時間軸を持つることが重要だと思います。

PwCアドバイザリー合同会社 パートナー 西川 裕一朗

長谷川:第三者の力を借りることで、自社のトランスフォーメーションのスピード、いわば変革の時間軸を大きく短縮していくという「意図された動き」が、今後の中心的な潮流になっていくという見立てですね。

さらに具体的な内容に踏み込んでいきたいと思います。AI新時代における新しいビジネスを創出し、既存事業からの資源投下のシフトを進めていくというのが、今お話しいただいた世界観です。一方で、AI新時代のビジネス展開では、制約条件や産業構造そのものが変わっていくというお話もありました。これらを踏まえ、TMT企業にはどのようなディールが必要となってくるでしょうか。

西川:TMT企業を一様に語るのは難しいため、サブセクターごとにお話ししていきます。まず、電機産業を中心とする製造機能を持ったテクノロジー企業について言えば、ものづくりそのものの付加価値は、以前に比べて避けがたく低下してきています。そのため、DXやITサービス――すなわち生成AIを自らのビジネスに組み込み、サービス化していく動きが不可欠です。製造機能の部分はベストオーナーに切り出し、自らは顧客変革を実現するサービスやソリューションの創出に軸足を移していく流れは、もはや不可避だと考えます。そうした意味で、ものづくりの領域は他社とのアライアンスによって補完・拡張し、自社のトランスフォーメーションに直結するようなサービス領域については、積極的かつ前向きにAIを活用していく動きが必要だと思います。

エンタテインメント&メディア領域は、すでにグローバルプレーヤーがプラットフォームを抑えつつあります。したがって日本企業が戦うべきは、コンテンツIPの部分ではないでしょうか。先例をみると、韓国のプレーヤーはすでにIPコンテンツでグローバル展開しています。日本のコンテンツも十分なポテンシャルがありますので、ものづくりの側面を持ちながらも、「どのように稼ぐか」というビジネスとして収益性の観点を重視した投資が求められると考えます。

長谷川:そうですね。以前マレーシアのショッピングモールを訪れた際、日本のアニメのイベントに偶然遭遇したことがあります。数千人の若者がコスプレ姿で集まり、アニメキャラクターのパネルを背景に写真撮影をしていたのですが、驚いたのは、ファン層をターゲットとした「物販」がほとんど行われていなかったことです。これだけの集客力があり購買意欲の高いファンがいる場があるということに、今後、日本企業がビジネス展開していく上での大きな可能性を感じました。そういった観点で、M&Aやアライアンスを活用してビジネスを拡大していくことが、メディア業界に必要だということですね。通信業についてはいかがですか?

西川:通信業については、やや特殊な側面があります。日本の通信事業は、ある種「国を守る」機能を担っている面があり、単なるビジネスを超えた公共的な役割を持っています。確かに「通信は土管化している」と言われて久しいですが、通信そのものの機能がなくなることはありません。むしろ、セキュリティやレジリエンスといった観点から、その基盤を維持・強化していく重要性は高まるでしょう。その通信基盤の上で、どのように新しいビジネスを生み出していくかが次の焦点になります。通信各社はそれぞれのやり方でエコシステムを構築しています。かつてはスマートフォン上のエンタテインメントや余暇サービスが中心でしたが、現在は小売、保険、金融など幅広い分野への展開が進んでいます。各社の持つエコシステムの特徴を見極め、それをどう伸ばしていくかが今後のカギになると思います。また、日本の通信業界は、製造業を源流とするテクノロジー企業と似た構造を持っています。いずれも大企業としての歴史が長く、通信以外の多様な事業を抱えるコングロマリット的な側面が強い。そうした中で自社のコア領域にフォーカスするためには、ノンコア事業の切り離しやベストオーナーへのカーブアウトが必要不可欠になると考えています。

長谷川:いずれのサブセクターでも、「M&Aやアライアンスを通じてAI新時代におけるディールチャンスや大きなビジネスをどうつかみにいくか」が、今の日本企業に求められていると感じます。こうしたことを目指す企業にとって、従来とは異なる注意点や落とし穴となり得るポイントはどのようなものでしょうか。

西川:新しいテクノロジーを取り入れようとすると、スタートアップや新規事業への投資が欠かせません。その際、バリュエーションを払いすぎないことはもちろん重要ですが、成長企業であれば高い評価が付くのは当然です。したがって、入り口段階で「高いか安いか」の議論に終始するよりも、「投資後にいかに活用し、どのようにリターンを生み出していくか」という一段高い視点を、より重視するべきと考えます。特に、TMT業界のプレーヤーは新しいものを次々と取り入れていかなければならない特性を持っていますから、この視点が、より健全な議論につながると考えます。

よくM&Aや投資の成功や失敗について聞かれることがありますが、従来のバリュエーションや減損といった財務指標のみで評価するべきではないと感じます。一時的に評価が下がったとしても、その企業のやりたいことが実現でき、長期的に価値を高められたなら、それは成功と捉えるべきです。つまり、どの時間軸で成果を捉えるかで評価はまったく異なるものであり、定量的な指標だけでなく、戦略的意図の達成度を含めた評価が求められると思います。

もう一つ重要なのは、「コントロールしすぎないこと」だと思います。TMT企業の多くは、20〜30年前からシリコンバレーなどに拠点を置き、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)活動を展開してきました。全ての企業が成功しているわけではありませんが、この間に培われた知見や経験は確実に蓄積されています。買収した企業を自社の枠組みに取り込み過ぎるのではなく、投資先が自立成長していく余地を残すことも一つの成功要因だと思います。もちろんケース・バイ・ケースではありますが、「伸びるに任せる」という発想を持つことも、これからの時代のディールでは大切になると感じています。


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