CIOアドバイザリーサービス 若手社員とエキスパートがテクノロジーについて語る「日本企業のテクノロジー活用実態について教えてください」 ―経営戦略・事業改革に向けたテクノロジー活用のあり方―

2023-02-27

IT部門と事業部門で共通のKPIを設定する

中村:
お話を伺って、課題が山積していることを痛感しました。では、テクノロジー活用のインパクトを最大化するためには何が必要なのでしょうか。

請井:
中長期的な視点での「ゴール設定」、経営・事業目線でのテクノロジー活用の「ロードマップ」、そして大きな変革を遂行する強い「意志」が必要です。

実は経営者からIT部門、現場の業務担当者まで、多くの従業員はテクノロジーの活用やDXの必要性を理解しています。むしろ「やらないとマズい」という強迫観念を持っていると言ってもよいでしょう。

例えば、ERP(企業資源計画)ソリューションの導入で業務プロセスが改善されるのであれば、導入に反対する人はいません。しかし、ERPの導入で具体的に何を目指すのかといった「最終ゴール」が曖昧で、そこに至るまでのロードマップが明確に示されていないため、プロジェクトが空中分解を起こしてしまうのです。テクノロジーの導入に至るまでの詳細な議論を積み重ねるうちに、「なぜ導入するのか」「何のためにこの作業をしているのか」が不明瞭になってしまうのですね。

中村:
「ゴール設定が曖昧であり、共通認識を持てていない」という話は伺ったことがあります。以前、あるCIO(最高情報責任者)は、「IT部門と事業部門とのコネクションがDX成功のカギを握ることは理解しているが、実現には多くのハードルがある」と仰っていました。この課題を解決するにはどのようなアプローチが必要でしょうか。

請井:
解決策は2つあると考えています。1つは組織改革です。共有組織やバーチャル組織を構成し、既存組織の壁を取り払うのです。ただし、こうした取り組みが人事制度上難しいのであれば、部門別に設定されているKPIを、IT部門と事業部門が連動するKPIへと変えるべきです。これが2つ目の解決策です。

中村:
「KPIを変える」とはどういうことでしょうか。

請井:
例えば、現在のIT部門のKPIとしては「インシデント発生率の低減」や「保守・運用の効率化によるコスト削減」が挙げられます。一方、事業部門では「売上増加」や「業務効率化によるコスト削減」などが掲げられており、両者のKPIは異なっていますよね。これを一体化させて「テクノロジー活用による売上増加」「業務効率化への貢献」「新規事業創出支援」といった項目をIT部門と事業部門共通のKPIにするのです。そうすれば、両者は協力せざるを得なくなり、お互いの業務内容や課題を理解しようとします。こうした改革を貫徹する意思がなければ、DXの実現は難しいでしょう。

中村:
とはいえ、IT部門と事業部門で共通のKPIを設定するには、それを支える基幹システムや導入しているテクノロジーを見直す必要がありますよね。

請井:
そのとおりです。アーキテクチャのグランドデザインを見直すとしても、SoI(System of Insight)やSoR(System of Records)、SoE(System of Engagement)の思想をベースとしつつ、投資すべき領域とコスト低減を狙う領域を明確化していくことが重要です。先に説明したとおり、ゴールもロードマップも曖昧なまま最新テクノロジーを“つまみ食い”しても、その効果は限定的ですからね。ERPなどを活用し、基幹システムの在り方そのものを見直すことが肝要です。

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 中村 豪志

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 中村 豪志

中村:
最後に、PwCはどのようにクライアントのテクノロジー活用を支援していくべきだとお考えですか。

請井:
正直に言って、「経営戦略立案支援」といった普通のコンサルティング業務であれば、他のグローバルコンサルティング会社のサービス内容にさほど差違はありません。そのうえで、「PwCだけがクライアントに提供できる価値とは何か」を考えると、私は「ソリューション&デベロップメント(以下、SolDev)」だと考えています。

PwCではクライアントに対する一般的なコンサルティングサービスの枠を超えて、最新テクノロジーで新たな市場を開拓する支援や、課題解決に役立つコンテンツの開発に注力していますよね。特にコンテンツ開発はクライアントから具体的な要望に応える支援というよりも、クライアントが気付かない課題を想定し、率先してクライアントに“刺さる”コンテンツ開発に取り組んでいます。

中村:
私もこれまでにSolDevで「Anything as a Service」や「Growth by Design」の活動に携わってきました。そこでは、クライアントのビジネスを加速させるため、通常の業務とは別に自分が取り組んでみたい分野のサービス開発やプロジェクトに参加しています。普段のジョブのメンバーとは異なるメンバーとともに、「こんなサービスがあれば良いよね」という視点で、手と頭と口を動かしながら、部活動みたいな感覚で取り組んでいます。

請井:
実は私がPwCへの転職を決めた理由も、SolDevの活動が盛んだったからです。さまざまな立場やバックグラウンドを持ったメンバーが現在のポジションに関係なくチームを作り、闊達に議論しながら課題解決に取り組んでいます。私は15年以上コンサルティングの経験がありますが、こうした風通しのよい企業文化とフラットに議論できる土壌のある会社はなかなかありません。

中村:
テクノロジー活用を成功させるためには、全社的な変革が求められます。その際にはクライアントの構想策定に耳を傾けて具体的なゴールを設定し、伴走しながらその“想い”の実現を支援することが重要ですね。本日はありがとうございました。


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主要メンバー

請井 盛一

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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