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多様性の必要性がうたわれる昨今、職場の世代間ギャップも多様性の1つとして捉えられるようになってきました。
それぞれの世代が生き抜いてきた社会の情勢も、その時々によってさまざまです。定年退職を迎える世代は、社会人になった当時に男女雇用機会均等法が施行された世代であり、法律は整ったものの、多くの女性は仕事を通しての自己実現にまだまだ限界を感じていたことでしょう。いま会社を支えるベテラン40代後半は、厳しい就職氷河期を経験し、思ったような仕事に就けなかった人も多いと思われます。ゆとり世代やZ世代、さらにその下のデジタルネイティブ世代は、多くの蓄積された環境問題や社会問題と向き合うことを余儀なくされています。
そして近年は「多様性が確保された組織がイノベーションを生む」あるいは「多様な考え方を包摂し合うことで、よりよいワークプレイスを実現できる」といった考えが浸透してきており、多くは自分の価値観を大事にしつつ、他者の価値観も理解しようという風潮になっています。
一方で、それぞれの世代が育ってきた社会情勢を踏まえた考え方や、その世代で一般的とされていた働き方を無視することはできません。例えば、ベテラン世代は、経済的価値を最優先することに疑いなくやってきた人が多いでしょう。クライアントや会社の要求に高いレベルで応えることや、上司からの高い期待に必死に応えて昇進することを目標にしてきた人が多いのではないでしょうか。
しかし最近の若者の傾向は、それとは異なります。デジタルデバイスを通じて自分が知りたいと思う情報を世界中から瞬時に入手することができ、ひと昔前のように情報入手に時間や労力を割く時代ではもはやありません。そして、情報に直接触れることが可能となり、誰かを介してバイアスのかかった情報を得るというケースも少なくなったため、情報の透明度が上がり、それをどう解釈するかは個人の考え方に委ねられるようになってきました。
ベテラン世代も社会人生活を送る中で多くの社会課題に直面してきましたが、現在のより複雑で変化の激しい社会において、若い世代はこれまでに未解決とされてきた社会課題や、今までにない新たな社会課題と対峙することになります。そのため、より一層社会の中での自分を意識する機会が多くなり、働く際にも自身の高い報酬を得ることや昇進することにフォーカスするのではなく、自分自身が携わっている仕事の意義を問うようになっていると考えられます。そして、これまでとは異なる自己実現の方法を模索しているのです。
少々過去の論文になりますが、1988年に発表された「職業(労働)価値観の国際比較に関する研究」※では、日本の成人における職業・労働価値観の分類がまとめられています。職業観にはさまざまなものがあり、どれに重きを置くかにより、その人の仕事に対するスタンスを垣間見ることができます。もちろんその人が持つ個性にもよるのですが、世代ごとに重きを置く項目に違いがあると推察できます。
職場環境における多様性とは、人それぞれの仕事観を否定せず、完全に受け入れることができなかったとしても理解に努め、尊重し合うことだと考えます。
人はそれぞれ、自分自身の仕事観などに基づき、仕事や家庭、その他の要素を含めて、自分の「ありたい姿(ビジョン)」を描くものです。平易な言葉でいうと、「こういうことをやってみたい」「こういうことができるようになりたい」「こういう価値を出していきたい」といったことです。そうした自分のありたい姿をぼんやりとでも描き、自分の現状と比較すると、大抵の場合はギャップが見えてきます。そして人は、そのギャップを埋めようと動くのですが、その力は「クリエイティブテンション(動機の源)」と呼ばれています。
「クリエイティブテンション」は、自分のありたい姿と現状のギャップを埋めようとする強い内発的動機であり、これが高まることによって「何とかしよう」という意欲が高まり、創造力が発揮されます。
筆者は、社会課題解決を志向する人たちの特徴を捉えるために、PwCコンサルティング合同会社の社員のうち、自己啓発活動やプロボノ・ボランティア活動などに積極的に取り組む社員へのアンケート調査、およびフォーカスインタビューを通して、以下の考察をまとめました。
社会課題解決に取り組もうとする人は、社会の出来事を自分事化する力が強く、ビジョン(ありたい姿)が社会に向いているケースが多い傾向にあります。もちろん「金銭的な報酬」と「仕事の意義」のどちらか一方にしか関心がないというわけではなく、配分・バランスを求める傾向があります。そしてそのギャップを埋めるために、例えば越境的学習などをきっかけとして学びや成長促進につなげていきます。
一方、これまで経済一辺倒の中で働いてきた人たちはどうでしょうか。この人たちは、ビジョン(ありたい姿)が「顧客の満足」や「上司からの期待」という第三者からの評価で成り立っており、内発的動機ではなく外発的動機が働く傾向があります。しかし、周囲の若手が社会の影響を受けてビジョンを描き、社会と接点を持ちながら学んでいる中で、「それで良いのだろうか」とモヤモヤしてしまうのです。ましてや、クライアントや会社のステークホルダー、あるいは上司が周りから触発され、「もっと社会に向いたビジョンを持った方がいいのではないか」と言ってくるようだと、さらにモヤモヤしてしまいます。
この傾向は、リモートワークの常態化により、さらに拍車がかかっていると思われます。日々の業務時間に融通をつけやすくなったため、自由な時間を会社の付き合いに使うことも減り、余暇は自分の関心事に使いたいという意思をはっきり示すことができ、かつ行動に移せる状態になっているためです。
本稿では、ビジョンに基づいて現状とのギャップを認識し、自らのクリエイティブテンションを内面から起こし、行動に移そうとするメカニズムについて考察しました。
本来ビジョンは、自分の内面で形成されるものであり、他人から提示されるものではありません。しかし、時代の変化や考え方の変化に戸惑ってしまう人、あるいは時代や他人の新しい価値観を受け入れることができない人は一定数いるものです。そういう人たちに、あえてきっかけとしての越境的学習の機会を提供することも方法論としてはあります。モヤモヤしているのであれば、まず動かざるを得ないという状態を敢えて作り出し、そこから逆算でビジョンを形成させていくというアプローチです。一定程度有効なアプローチではありますが、この場合、ビジョンが小さくなる傾向があると言われています。要は、達成できそうなものに留まってしまうため、クリエイティブテンションほどのパワーの発揮が期待できないわけです。
自分自身で内省し、自分の仕事観や生活全般にわたる価値観を振り返り、社会と接点を設けながら自分のビジョンを描いていければと考えます。
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