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2021-07-13
2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により世界規模で人々の行動が制限され、「巣ごもり需要」が急増した一年でした。結果的に活況となったのがeコマース(EC)市場です。需要増への対応や感染対策としての非接触のオペレーション遂行などに迫られた企業は少なくありませんでしたが、こうした変化に対応したのが中国企業と言われます。ECでの小売全体の売上は11.76兆元で、2019年より10.9%増加しており*1、コロナ禍における経済回復を後押ししたと言えるでしょう。パンデミック下における中国企業の対応にはどのような特徴があるのでしょうか。
中国では2015年に発表されたインターネットプラス政策を起点として、各企業のEC事業が盛り上がりを見せています。近年はライブコマースをはじめとするECサイトやソーシャルメディアを利用した新たな販売モデルが、市場の活況を後押ししています。結果として流行の移り変わりが早くなり、企業にとっては需要予測の精緻化や、さらなる納期短縮が求められる状況にもなっています。
そのような中、ECプラットフォーマーが提供するプラットフォームを活用して、需要の予測を行う企業が多く見られます。そうした企業は、その情報を製造委託先やサプライヤーなどを含めたサプライチェーン全体で共有するだけでなく、販売データを自社工場および製造委託先の工場とリアルタイムに連携することで、多品種少量生産かつ短納期を実現できる体制を構築しています。こうした対応が、今回のパンデミック下において有効だったと考えられます。
多様化するビジネスニーズに迅速に対応するためのキーワードが「アジリティ」です。これは、私たちが「コロナ時代」に求められるサプライチェーンの5つの要件のうちの一つと考えているもので(図表1)、ここでは「最新の情報を元にした、地域単位、国単位のサプライヤー、生産拠点、物流経路の切り替えなど、状況の変化に伴うビジネスニーズへの迅速な対応」と定義します。では企業がアジリティを体現するためには、具体的にどのようなアクションが求められるのでしょうか。「組織」「プロセス」「データ」の3つの観点から紹介します。
事業継続計画(BCP)をはじめ、有事に備えた危機管理手引きを定義している企業は少なくありません。しかし、有事の際に、組織や部門横断で指揮・命令可能な組織・機関を配置している企業は多くないと推察します。また、その組織・機関が、企業内のみならず、必要に応じて外部の取引先などにも適切なコミュニケーションをとおしてガバナンスを効かせることができる状態にあるとなると、さらに数は少なくなると考えられます。急激な変化にサプライチェーン全体で迅速に対応するには、イニシアチブを取れるよう、企業内外を巻き込んだ指揮・命令系統(ネットワーク)を構築することが重要です。
これを実現するには、企業には前述のガバナンス態勢構築と迅速な意思決定が求められます。企業内外の関係者に対するガバナンスのレベルが高ければ、意思決定のための情報収集がしやすく、また意思決定後の施策実行も効率的に推進することが期待できます。
サプライチェーンを構成する各プロセスに関しては、企業内の組織・部門ごとにサイロ化されていることが通常で、外部取引先とのコミュニケーションを個々に行っている企業も数多く存在します。今回のような状況の変化に対応するためには、サプライチェーンにおける各組織・部門間のプロセスおよび外部取引先とのコミュニケーションの統合、代替サプライヤー・製造シェアリング先・製造委託先の確保、柔軟な配送拠点複線化などが必要になります。また、組織・部門および外部取引先との間では実行上のプロセスが整備され、標準化されている必要があります。注文から製造指示、必要な素材の調達および商品の配送までのプロセスを一つのプラットフォーム上で構築し、自社の各部門およびネット通販加盟店やサプライヤー・配送事業者などの外部取引先がこのプラットフォーム上で各プロセスを実行することが、プロセスの標準化の一例と言えるでしょう。
プロセスの統合や標準化といった対応を行うことにより、急な変化においても各組織間の情報の断絶やリアルタイム性の喪失を招くことなく、リーダーの意思決定に基づき、即座にサプライチェーン上のプロセスを実行することが可能となると考えられます。
サプライチェーン上のさまざまな情報の可視化を、デジタル化の推進により実現している企業は少なくないと考えられます。しかし、可視化する情報の鮮度を追及している企業はそれほど多くありません。
需要量の変動に伴う安全在庫の見直しと供給計画への反映、およびそれらをサプライヤーや生産拠点で即座に把握可能か、生産状況や配送状況が可視化されて異常があれば検知できる状態かどうかなど、サプライチェーン上のさまざまな情報をオンデマンドに把握できることは、状況の変化に迅速に対応する上で肝要です。ECサイトの例で言えば、ライブコマースなどで得られたネット通販上の需要データを自社工場や生産委託先にまでリアルタイムに共有し、即座に生産を実施できるようにすることが挙げられます。
ここまで「組織」「プロセス」「データ」の観点で、アジリティ強化のポイントを紹介しました。上記の考え方は、PwCコンサルティングが提唱するConnected Supply Chain(コネクテッドサプライチェーン)ソリューション(図表2)と近いものがあると筆者は考えています。つまり、デジタルを活用してあらゆるオペレーションを視覚化・データ化することで「統合されたエコシステム」を構築するという考え方は、アジリティを強化する一つの手段としても有効と言えるのではないでしょうか。
急速なデジタル化が進む市場で成功するために、サプライチェーンの変革はもはや不可欠と考えられます。各プロセスを担う部門が直線的につながる従来の構造から、あらゆる部門がパートナーとして「協調」できる構造にトランスフォームすることが、アフターコロナ/ウィズコロナ時代の急激な変化に対応するアジリティの強化につながるのではないでしょうか。
*1:中華人民共和国商務部, 「数据查询」
https://dzswgf.mofcom.gov.cn/sjcx.html(2021年7月2日閲覧)
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