昨今、ESGへの対応要請の高まりから、環境・社会といったサステナビリティ課題の解決をテーマとした新規事業に取り組む企業が増えています。例えば、以下のようなケースが考えられます。
一方でこうしたサステナビリティ課題解決型の新規事業は、従来型の自社の売上・利益追求を目的とする新規事業と比較して、事業設計上の観点で異なる点や難しさがあります(図表1)。
図表1:新規事業開発における「従来型」と「サステナビリティ課題解決型」の違い・難しさ
サステナビリティ課題解決型の事業は、単独で成立させることの困難なケースが多いため、既存事業も含めた経営全体の中での意義・貢献価値を定義していくことが求められます(図表2)。この時に重要な視点が「外部不経済性*の内部化」です。
*外部不経済性:自社の経済活動が環境や社会にもたらす負の影響のうち、現時点で当該企業が負担していない(外部の公的機関や消費者が負担している)コスト
ESGの対応要請とは、見方を変えると、これまで企業が負担してこなかった外部不経済性を負担するようにする、つまり内部化することを強いるものであると言えます。こうした構造変化に早期に目を向けて対応することは、リスク低減につながるだけでなく、自社の新たなケイパビリティ獲得にも寄与します。
また事業目線では、今までコストを負担してきた外部の公的機関や消費者が持つニーズ・課題は、ホワイトスペースの市場に他なりません。早期参入することで、彼らとの新たな関係性の構築や、課題解消による対価獲得も見込めるでしょう。
図表2:サステナビリティ課題解決型の新規事業に必要な着眼点
サステナビリティ課題解決型の新規事業は、大きく3つのステップで構想を具体化していくことが重要です。PwCコンサルティングの実績に基づく検討例を図表3に示します。
図表3:サステナビリティ課題解決型の新規事業の検討アプローチ(例示)
サステナビリティ課題の解決を事業成果に結び付けていく際には、マテリアリティなどの開示目的での分析よりも具体性をもった事業/ビジネスモデルの粒度で検討していくことが重要です。
また、内部化対象として着目すべき「外部不経済性」は、業界や事業特性によって異なります。図表4に例示するような要素を参考に自社の既存事業/ビジネスモデルを分析することが求められます。
図表4:外部不経済性の類型・特徴
外部不経済性の内部化は短期的にはコスト増を伴いますが、それを乗り越えた企業は長期的に競争力を強化し、新たな市場のルールメーカーとしての地位を確立することができます。その実現に向けた検討こそが、サステナビリティ課題解決につながる新規事業の成功の鍵となるでしょう。
日本では、既存事業の成長に停滞感を抱く企業が、新たな柱となる事業の姿を模索しています。PwCは「新規事業開発の取り組みに関する実態調査2025」を実施し、日本企業における新規事業の取り組み動向や課題、成功企業から学ぶべき方策を明らかにしました。
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