スマートモビリティ社会を実現するための産業アーキテクチャ構築を起点に、複雑化する企業の課題を組織横断のチームで解決する

  • 2025-11-17

社会が大きく変化しています。企業は異業種からの新規プレーヤーの参入対策、デジタル活用、さらには環境問題をはじめとする社会課題への取り組みを求められ、既存の事業の内容や領域にとどまっているだけではビジネスを継続することが難しくなりました。

このような背景を踏まえ、PwCコンサルティングはクロスインダストリーイニシアチブ(XII)を立ち上げました。これは業界や業種ごとに高度な専門性を持つプロフェッショナルが部門や組織横断でチームを作り、クライアント企業はもちろんのこと、企業が属する業界、産業、そして社会の課題解決までを支援する取り組みです。また、私たちはXIIを社内の連携にとどまらず社外を巻き込んだ活動へと発展させ、2025年にモビリティ産業への貢献を目的としたスマートモビリティ総合研究所を設立しました。

PwCコンサルティングならではの取り組みであるXIIの現在地と、変化する時代に活躍し評価されるコンサルティングのあり方について話しました。

(左から)細井 裕介、安井 正樹、矢澤 嘉治

登場者

PwCコンサルティング合同会社
代表執行役CEO
パートナー
安井 正樹

PwCコンサルティング合同会社
パートナー
スマートモビリティ総合研究所 所長
矢澤 嘉治

モデレーター
PwCコンサルティング合同会社
スマートモビリティ総合研究所 GX & Ecosystemプログラムディレクター
細井 裕介

※法人名、役職などは対談当時のものです。

社会の変化とコンサルティングニーズの変化

細井:
企業を取り巻く環境が変化しています。経営視点で特に重視しなければならない変化は何でしょうか。

安井:
3つあると思っています。1つ目は、生成AIをはじめとするデジタルテクノロジーの進化です。私たちのクライアントだけでなく、多くの企業がテクノロジー活用に取り組み、生産性向上や業務効率化といった成果を次々に生み出しています。現状はまだバックオフィス主体の業務変革ですが、今後は営業などフロントラインにも広がり、AIエージェントの活用も広がっていくでしょう。経営戦略では、テクノロジーを何にどう使うのかを示し、成果を出すことが今後の企業の競争力に直結します。

2つ目は、社会課題の複雑化です。CO2の排出量削減や生物多様性の保全といった環境分野の取り組みを例にすると、これらはステークホルダーの関心が高く、対応を誤ると企業価値の低下につながります。国内では労働人口の減少に対策を講じると同時に、人材の多様性も確保しなければなりません。人材不足をテクノロジーで補填するのは1つの手段ですが、その際には生成AIのハルシネーション対策や、機密情報を守るセキュリティの担保などが重要で、競争力を高めるためのテクノロジー活用が企業の信頼を毀損しないように注意が必要です。

3つ目は、社会変化とそれに対応する経営の変革のスピードが速くなっていることです。従来の経営は、10年かけてV字回復を果たす、20年で組織の構造改革を実現するといった時間軸が普通でした。しかし、今は変革に時間がかかると市場での競争に負けてしまいます。システムの導入や更改なら5年、新規事業開発なら長くても1年で行うといったスピード感を持って社会の変化に対応することが求められています。

PwCコンサルティング合同会社 代表執行役CEO パートナー 安井 正樹

細井:
これら3点を受けて、企業のコンサルティングに対するニーズはどう変わっていくのでしょうか。

安井:
コンサルティングサービスはハイエンドとローエンドの二極化が進んでいくと思います。ローエンドは、AIよりも早く安くできる業務のことです。特定の業界に詳しいコンサルティングファームはこのニーズによって成長していく可能性があります。ハイエンドは、AIにはできない業務です。AIの活用領域は今後も広がっていきますが、どうしても人にしかできないことは残ります。戦略立案、意思決定、人と人との関係性構築などが一例で、このニーズも引き続き大きいだろうと思っています。

細井:
複雑化する課題の中でハイエンドのニーズに応えていくためには、AIによる情報収集など最新テクノロジーの習得は当然のことながら、高度な専門性を複数活用することも求められます。そのような支援を実現していくために、PwCコンサルティングは組織横断型のイニシアチブ(XII)を立ち上げたと理解しています。

安井:
そうですね。クライアントの課題が複雑化するほど、単一の業界に特化した支援では対応できなくなります。XIIは、多様な専門性を持つプロフェッショナルが部門、組織、ソリューションの壁を超えた「ナナメ」の連携によってクライアントを支援しながら、ヘルスケアや地域共創といったより大きな分野での課題解決を実現していくものです。

例えば、異業種からヘルスケア事業の立ち上げを検討する企業は多いのですが、この領域は規制が多く、近年では医療のパーソナライズ化やテクノロジー活用といった大きな変革も起きているため、思うように事業化できないのが実態です。そこで私たちは、医療、疾患、ヘルスケア市場に詳しいメンバーの他に、バイオサイエンスやデータプライバシーなど多種多様な領域のプロフェッショナルを集結させ、クライアントのエコシステム構築を支援しています。

アーキテクチャ再構築からクライアントに伴走

細井:
XIIでは複数の注力領域を設定していますが、その1つであるスマートモビリティ分野では、2025年にスマートモビリティ総合研究所が設立されました。この分野は、EV(電気自動車)、自動運転、SDV(Software Defined Vehicle)の普及により、環境、エネルギー、テクノロジー、半導体調達などと深く関連するようになりました。まさにXIIが企図する組織横断の連携が求められますね。

矢澤:
はい。モビリティ産業は「100年に1度」の大変革時代に入っています。今では法律改正を含むルールメイキングを注視することや自治体との連携の他、蓄電池や半導体、通信など自動車産業の周辺技術を活用することも重要です。そうして産業内の企業だけでは課題を解決できなくなり、彼らを支援するコンサルティング側もモビリティ以外の知見が必要となりました。そのような中で、安井さんがXIIを立ち上げました。他部門との連携を模索していた私たち自動車チームにとっては渡りに船で、まずXII スマートモビリティを立ち上げ、さらに推進力を強化するためにインダストリアルトランスフォーメーション(IX)として新たに組織し、社外へも連携を広げるためにスマートモビリティ総合研究所を設立するに至りました。

細井:
IXは、クライアント個社にとどまらず産業構造全体を見据えた幅広い変革を推進していく取り組みですね。XIIは各分野のプロフェッショナルがバーチャルに集結する組織でしたが、IXはリアルな組織としてスマートモビリティ内外のメンバーが所属しています。IXの設立によってスマートモビリティ分野の活動はどのように変わったのですか。

矢澤:
組織同士の連携がしやすくなり、産業間の重要な課題解決にリソースをシフトできるようになりました。またビジネスとバリューチェーンの多様な領域の専門家が集結することで、戦略から実行までクライアントの期待に応える体制を整えることができました。今後はさらに各領域の専門性を高めていきながらより多くの相談を受け、ビジネスが大きくなっていくはずです。

IXではPwCコンサルティングやPwC Japanグループの多様な知見を集められる一方で、私たちは外部とも連携し、また外部のステークホルダー間での連携も促していく必要があります。その場となるのがスマートモビリティ総合研究所です。

PwCコンサルティング合同会社 パートナー スマートモビリティ総合研究所 所長 矢澤 嘉治

細井:
スマートモビリティ総合研究所の設立にはどのような背景があったのですか。

矢澤:
日本のモビリティ産業が一体となって世界と戦うために、つながりと共創を生み出す場を作りたいという思いから立ち上げました。スマートモビリティ分野において、日系企業が持つノウハウ、スキル、知識、技術、製品などは世界トップクラスです。しかし、現状この分野では米中にリードを許しています。その原因の1つが、企業内、企業間、産業間の連携不足であると考え、それらの間をつなげ、世界にインパクトを与えるイノベーションを生み出すために、関係者や有識者とリアルな場でコミュニケーションが取れるハブの機能を作ろうと考えたのです。スマートモビリティ総合研究所は、「モビリティ産業のつながりと共創を生み出し、信頼されるハブとなる」をビジョンに掲げ、研究所の名称も、日本語ではスマートモビリティ総合研究所ですが、英語表記ではSmart Mobility Innovation Hubとしています。

細井:
スマートモビリティ総合研究所は、産業の将来像を描くアーキテクチャデザインの機能を持つことも特徴です。これはXIIにおいても重要な考え方で、私たちの支援の価値向上につながります。

矢澤:
自動車産業だけでなく周辺産業を含めたモビリティ産業の課題を解決するためには、産業を横断したステークホルダーを巻き込む必要があります。一方で異なる産業が連携し会話するためには、全体を俯瞰的に見渡す地図であるモビリティ産業アーキテクチャが必要だと考えます。私たちは産業アーキテクチャを活用し、スマートモビリティ社会をみんなで描きながら実現に貢献していくことが重要だと考えています。

テクノロジー活用と知的好奇心が重要

細井:
次に、個人のスキルに焦点を当てると、業界や組織を横断して活躍するために、コンサルタントにはどのような素養や意識が求められますか。

安井:
素養の面では、知的好奇心を持ってさまざまな人と連携できる人が向いていると思います。PwCには組織横断の協働を推奨する環境がありますが、さまざまなことを学び、挑戦したい人にとっては格好のフィールドだと思います。加えて、個人の力のみで課題解決するのは難しいので、周りの人たちと積極的にコミュニケーションを取ったり、チームを作って取り組んだりするのが好きな人が活躍すると思います。

意識の面では、個々の能力を高め続けられる人が活躍すると思います。テクノロジーを例にすると、クライアントのAI活用ニーズに応えるためには、コンサルタントがAIを使いこなすレベルでなければなりません。「with AI」の意識を持って自身の活動領域を広げ、千手観音のようにあらゆるタスクをこなしながらアップスキリングしていくことが大前提だと思っています。

矢澤:
スマートモビリティも、自動運転やSDVが普及していく状況の中ではAIなどのテクノロジー活用が重要です。車そのもの以外でも生産管理などのデジタル化がさらに進むため、自ら学んでいく気概が求められます。また、スマートモビリティにはチャレンジングなテーマが多くあります。自分自身が取り組みたいテーマを主体的に探す姿勢も重要です。

細井:
コンサルタントとして自分に向いているテーマや掘り下げたい専門性などは、どのように見つけるのがよいでしょうか。

安井:
自分の興味に合うかどうかも大事ですが、それよりも、アサインされたプロジェクトをやり抜くことが大事だと思っています。なぜなら、何から、どんな順番で学ぶにしても、最終的には全てがつながると思うからです。目の前の課題を深掘りしていくと、その過程で関連する知識などを習得することになり、じわじわと穴が広がっていきます。点と点がつながって深掘りする穴が広がります。その繰り返しによってクライアントへの提供価値が大きくなり、自分の成長にもつながっていきます。

細井:
業界や組織にとらわれない「ナナメ」の連携は、そのための良い機会になりますね。

安井:
そう思います。コンサルティングは、個人としても組織としても専門性を高めて「尖る」ことが大事です。私たちは専門性を深掘りし、サービスで差別化するサービスセントリックで尖ろうと考えています。ただ、コンサルティングという仕事の特性として、その尖りはクライアントから見えにくく、他社との違いがなかなか認識されません。だからこそ、クライアントの課題を「ナナメ」の連携で解決し、クライアントセントリックでも尖っていくことが大事です。

支援を通じた価値提供は次のステージへ

細井:
XIIの立ち上げから約2年の今、IXやスマートモビリティ総合研究所をはじめ複数の企画が生まれ、連携やコラボレーションが進んでいます。その要因として、PwCコンサルティングやPwC Japanグループにはもともとコラボレーションの文化があり、XIIとの親和性が高かったことがあるように感じます。

PwCコンサルティング合同会社 スマートモビリティ総合研究所 GX & Ecosystemプログラムディレクター 細井 裕介

安井:
素地はあったと思っています。そもそも他部門との連携やコラボレーションは未知の専門性に触れる機会になり、コンサルタントにとっては知的好奇心が刺激される魅力的な活動です。組織横断で取り組みたいという思いはメンバーそれぞれにあり、それがXIIによって組織的、ビジネスモデル的な関所が取り除かれていき、私たちが本質的に大切にしてきたコラボレーションの文化が花開いたのだと思います。

矢澤:
仕掛けと仕組みの観点では、連携推進のさまざまな仕掛けがあると同時に、連携時のKPIやルールを柔軟に変えたり、バーチャルな組織でも予算がついたりといった会社の仕組みづくりも後押ししたと思います。私たちもそうでしたが、XIIでは、やりたいと手を挙げた人に挑戦させてくれます。これもPwCの文化であり、コンサルティングファームとしての強みであると感じます。

細井:
XIIは私たちの競争優位性の一つでもありますが、XIIでこれから目指すことを教えてください。

安井:
企業である私たちは、適切な利益を生み出すというミッションがあります。しかし、ファイナンスファーストではありますがファイナンスオンリーではありません。日本経済の成長、多様性の推進、貧困問題の解消、地方創生といった社会課題まで見る広い視野を持ち、企業、産業、社会に与えるインパクトにフォーカスして、インパクトオリエンテッドで支援をしていきたいと考えています。

細井:
そのために組織としてはどのような変革が求められますか。

安井:
ビジネスモデルの変革が重要です。時代に適応していく上では、組織の形も現状のピラミッド型からダイヤモンド型や逆三角形に変えていく必要があるかもしれません。

従来のコンサルティングは、クライアントから依頼を受けて課題解決することにより価値を創出してきました。しかし、今は複数の課題が入り組んでいます。そのような状況では、クライアントに伴走して成果創出を支援することや、産業アーキテクチャを踏まえて勝てる戦略を練ることが求められます。必要な情報をグローバルで収集して提供することや、クライアントが世界で戦っていくためのルールメイキングの支援、さらには既存と新規の事業を成長させるためのパートナーとのマッチングなども、コンサルティングファームの重要な役割になるでしょう。

細井:
スマートモビリティ分野ではどのようなインパクトを生み出していきますか。

矢澤:
スマートモビリティ総合研究所は、総勢250名、兼務のメンバーを合わせると400名の組織になりました。その半分ほどが自動車産業の出身で、私も、細井さんもそうですよね。私たちが共有しているのは、自分たちを育ててくれた日本のモビリティ産業に恩返ししたいという強い気持ちがあること、そして米中にリードを許している現状を変えるインパクトを生み出したいという思いです。思いの強さは定量化できませんが、個人と組織のモチベーション向上の源泉になると確信しています。同じ思いを組織内に浸透させ、外部から新たに参加してくれる人たちとも共有して、当事者意識を持って日本のモビリティ産業に貢献したいと思っています。

細井:
スマートモビリティ分野は国内外のプレーヤーによる競争が激しいのですが、だからこそXIIによって社会全体を統合させながら新たな勝ち筋を模索し、作り出すことの価値があると思っています。

安井:
そうですね。XII全体から見ても、スマートモビリティの取り組みは成功事例です。また、これから成功事例になるであろう「さなぎ」もたくさんあり、これらが羽化することにより日本全体への貢献度は大きくなるはずです。

PwCコンサルティングには新卒採用とキャリア採用の両ルートから優秀な人が数多く集まってきます。そのケイパビリティを正しく理解し協働することを通して、私たちはクライアント個社への貢献を超え、産業や日本全体をリードする立ち位置になると確信しています。

その過程では、クライアントからのコンサルティングへの期待がさらに変化していくでしょう。その期待に応えることで、より大きなインパクトを生み出すことができます。そのような未来を描きながら、社内ではXIIの「さなぎ」を育て、社外からは社会インパクトの創出をともに取り組める仲間を増やして、XIIの次のステージであるXII2.0に向けた次の一手を打っていきたいと考えています。

主要メンバー

安井 正樹

代表執行役CEO, PwCコンサルティング合同会社

Email

矢澤 嘉治

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

細井 裕介

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

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