連載コラム 地政学リスクの今を読み解く

マルコス後のフィリピンを考える―2028年大統領選に向けた日本企業の戦略―

  • 2026-06-10

本稿のポイント

  • 現職のマルコス大統領とドゥテルテ前大統領による政治連合の崩壊により、現政権の影響力低下を懸念する声も出始めている。2028年の次期大統領選を待たずして内政の地殻変動が始まり、日本企業が享受する事業環境が覆される「政策の断絶」リスクへの注視が必要となる。
  • インフレに伴う国民の生活基盤の悪化は、現政権の対米傾斜に対する批判を呼び込んでいると評価されている。中東情勢の緊迫化や米国の関与低下を背景に、実利を求めるポピュリズムの波が再び米中を天秤にかける「徹底した実利主義」への揺り戻しを加速させており、現在の対外政策の「有効期限」は早まるおそれがある。
  • 日本企業には、政治的ボラティリティに左右されない「不可欠な技術」によるロックイン戦略や、特定政権と距離を置いた有力財閥・地方政府(LGU)との多角的な連携が求められる。複数の政治シナリオを前提とした、実効的なエグジット戦略を含む「多層的なリスクヘッジ」の策定が不可欠な局面にある。

1. イントロダクション:揺らぐ黄金時代の再定義

日本企業が現在享受しているフィリピンの親和的なビジネス環境は、2028年の次期大統領選を見据えた内政の地殻変動により変化し、既存の戦略が通用しない競争環境や不確実性に陥る可能性が指摘されています。

現在、フィリピンでは南シナ海における中国との緊張が常態化し、エネルギー資源の確保や物流ルートの安定性に影響を及ぼす構造的なリスクとして、中長期的な投資判断に影響を与える段階に達していると見られます。フェルディナンド・マルコス・ジュニア政権は、2022年の発足以来、前政権の極端な対中傾斜(実利の追求)を鮮明に否定し、米国および日本との同盟・連携を加速させることで、この圧力に対抗してきました。しかし、一見すると強硬に見えるこの外交姿勢は、必ずしも盤石な戦略に基づくものとは限らず、さまざまな制約条件の下で難しい判断を迫られている状況を反映したものと考えられます。

マルコス政権が直面しているのは、伝統的な大国間バランシングの放棄ではありません。その実態は、安全保障面で日米への依存を強める一方で依然として中国への経済的依存を断ち切れないという、構造的なジレンマです。インフラ開発やエネルギー供給、サプライチェーンの要所に深く食い込んだ中国資本を排斥することは現実的に不可能であり、政権は対中経済依存を脱却できないまま、安全保障では一線を引くという不安定な綱渡りを強いられています。

ここで日本企業が冷静に見極めるべきは、現在の日米比による協力関係が、中長期的にどの程度持続するかについては不透明な要素も残されているという点です。フィリピン政治の歴史は、大統領交代に伴う外交方針の劇的な揺り戻しの歴史でもあります。現政権による親米・親日路線は、マルコス一族の政治的生存戦略と密接に結びついており、その基盤は決して永続的なものではありません。

特に注視すべきは、2025年の中間選挙を境に任期後半に入った現政権のレームダック化のリスクです。フィリピン特有の政治文化として、大統領任期の後半に入ると、地方政治家や有力なクラン(氏族)は、次期政権の座に最も近い勢力へとくら替えを始める傾向があります。マルコス大統領と、かつての同盟相手であるサラ・ドゥテルテ副大統領(およびドゥテルテ家)との亀裂は修復不可能な段階に達しており、中間選挙後の議会や地方自治体において勝ち馬に乗るための政党乗り換えの予兆は、すでに至るところに見え始めています。まず、親マルコス派からドゥテルテ陣営への大規模な支持移行の可能性が議論されています1。また、第3極として、ドゥテルテ前政権期(2016年〜2022年)に大統領を務めたレニー・ロブレド氏ら野党勢力の台頭など、情勢は多角的な展開を見せています。

仮に次期大統領選でドゥテルテ派、あるいはそれに類する予測不能な実利主義勢力が勢力を盛り返せば、現在日本企業が享受している競争環境や、政府肝いりのインフラプロジェクトの優先順位が書き換えられるおそれがあります。

本稿では、フィリピンが抱える内政・外交の多重的なリスクを解説し、2028年の政権交代を見据えた上で、日本企業が取るべき「戦略的レジリエンス」の再構築について提言します。現政権との良好な関係に安住するのではなく、フィリピン政治の宿命とも言える不確実性を前提とした、次世代のビジネス戦略を考えてみたいと思います。

2. 内政の地殻変動:2028年大統領選に向けた「ユニチーム」崩壊

2022年の大統領選で圧倒的な勝利を収めたマルコス・ドゥテルテ連合(ユニチーム)は、今や瓦解し、フィリピン政治は「マルコス家(親米・マニラ既存エリート)」対「ドゥテルテ家(親中・ダバオ発の地方ポピュリズム)」という、鋭い対立構造へと回帰しています(図表1)。この亀裂は単なる政敵間の争いではなく、国家の経済資源と外交方針の基本方針を二分する深刻な対立構造となっており、日本企業の事業継続性に直接的な影響を及ぼし始めていると考えられます。

図表1:フィリピン政治の二極化構造(2028年大統領選に向けた対立軸)

インフラの武器化と地方政府の「越境ディール」

マルコス政権では、ドゥテルテ派を支持する地方首長に対し、中央政府からのインフラ予算配分を制限するような動きも見られます2。これに対し、地方政府(LGU)は中央のコントロールをすり抜け、中国企業と直接交渉を行うパラ・ディプロマシー(自治体外交)を加速させています3。特にミンダナオ島やルソン島の一部地域では、中国資本による独自プロジェクトが、マルコス政権の親米路線とは対照的に進展していると見られます4。フィリピン国内で「マニラ(親米)」と「地方(対中融和)」という経済圏の分断が生じている事実は、日系インフラ関連企業にとってのリスク要因となっています。

サラ・ドゥテルテの戦略:経済的実利による地方票固め

現在2028年大統領選の有力な候補の一人と目されるサラ・ドゥテルテ副大統領は、この分断を巧みに利用しているという見方があります。同副大統領は、マルコス政権の米国一辺倒な外交が、中国からの投資停滞を招き、国民の生活基盤を毀損していると痛烈に批判しています5,6。米国との軍事連携強化が戦争のリスクを呼び込む一方で、経済的果実をもたらしていないというロジックは、開発から取り残された地方有権者の間で強力な支持を集めています。彼女の支持基盤は、単なるドゥテルテ人気の継承ではなく、目先の雇用と生活を守るための利益誘導型ポピュリズムへの回帰に他なりません。

司法・メディアを巡る暗闘:「主権の毀損」とする批判的世論

対立は司法の場にも波及しています。国際刑事裁判所(ICC)によるドゥテルテ前大統領の訴追問題に対し、マルコス政権が協力的姿勢を強めていることは、ドゥテルテ陣営に格好の反撃材料を与えました7。選挙戦の主戦場の一つであるSNSにおいては、「親米のマルコスは、国際司法という外圧を借りて英雄(ドゥテルテ)を売った」というナショナリズムを刺激する物語が拡散しました8。この外交的追随に対する批判的な主張は、地方の草の根レベルでマルコス政権に対する評価や支持に影響を与え始めていると指摘されています。また、フィリピン下院は2026年5月11日、機密費の流用疑惑やマルコス大統領への暗殺予告発言などを理由に、サラ・ドゥテルテ副大統領の弾劾訴追を圧倒的多数で可決しました9。これを受け、上院は5月18日に弾劾裁判所へと移行し、正式な手続きを開始しました。今後は6月中に本格的な口頭弁論が行われ、早ければ今夏にも有罪・罷免の判決(最終投票)が下る見通しです10,11。ただし、上院内にはドゥテルテ派の支持も根強く、罷免の決定(16票以上の有罪)に至るハードルは高いとみられています。

世代の変心:デジタルポピュリズムの再燃

次期政権の行方を左右する最大の流動要因は、有権者のマジョリティを占める若年層の変心です。かつてSNSを駆使した巧妙な情報戦によってマルコス支持に回ったとされるZ世代やミレニアル世代は、インフレや停滞する経済状況に失望し、再び強いリーダーとしてのドゥテルテ像に回帰し始めています。SNS上では、前政権時代を懐かしむデジタルノスタルジーが急速に拡大しており、これが「2028年ドゥテルテ回帰」の強力な推進力となる可能性は否定できません。ただし、この潮流の背後には意図的なデジタル影響工作や世論工作などの影響が潜んでいるとの指摘もあり、慎重な見極めが必要です12,13。フィリピンの政治は、「右傾化」という単純な尺度では測ることが困難です。生活基盤の維持を求める切実な民意が、ポピュリズムや情報工作に翻弄された結果、2028年に向けて再び中国側へとかじを切る。そうした強大な揺り戻しのエネルギーが今蓄積されつつあります。

3. 外政の駆け引き:中東の火種で揺らぐ「親米路線」の実効性

フィリピンの内政が地殻変動を起こす中、それを取り巻く国際情勢もまた、マルコス政権の外交基盤にダメージを与えています。特に今次の中東情勢の不安定化は、米国のアジア回帰の実効性を不透明なものにし、フィリピンに「ASEANにおける米国の空白化」という冷徹な現実を突きつけています(図表2)。

図表2:マルコス政権の外政の期待と現実

米国のコミットメント変質と「疑米論」の再燃

中東情勢が長期化を見せる中で米国は、インド太平洋地域に配備していた戦略資産の一部を転用せざるを得ない状況にあります。南シナ海で中国の圧力にさらされるフィリピンにとって、頼みの綱である米軍のプレゼンス低下は死活問題です。フィリピン国内では、「米国は本当にわれわれを守るのか」という伝統的な疑米論が、現実味を帯びて再燃しています14。マルコス政権が旗印としてきた「強固な米比同盟」は、米国のグローバル戦略の優先順位に翻弄され、その信頼性は急速に摩耗していると見られます。

ASEAN内での孤立と原油高の直撃

さらに、中東情勢の悪化に伴う原油価格の高騰は、エネルギー自給率の低いフィリピン経済を直撃しています。インドネシアやベトナムなどのASEAN諸国が、全方位外交を通じてエネルギー安全保障の多角化を図る中、対中強硬姿勢を崩さないマルコス政権は、域内での戦略的な孤立感を深めています。近隣諸国が大国間の対立から距離を置くことによる実利を取り始めている中で、米国との同盟を最優先するフィリピンの姿勢は、国内の経済的困窮と相まって合理性に検討の余地がある選択となっています。

トランプ流「二重の締め付け」と制裁リスク

米国優先主義の再来は、フィリピン経済に二重の苦難を与えています。第一に、トランプ政権による関税措置は、対米輸出競争力を直接的に低下させています。第二に、対イラン制裁の厳格化に伴う二次的制裁への接触リスクです。特に、中国企業が提供する安価な設備や部材供給から脱却できず、選択肢が限定されているフィリピン企業にとって、意図せぬ形での経済制裁や取引制限が課され、生命線であるドル決済網から排除される事態は死活問題となります。この外貨を稼ぐ力の減退とデカップリングの強制という挟み撃ちのリスクを背景に、国内財閥勢はマルコス政権の硬直的な対外政策への懸念を強めていると見られます。

中国による「一帯一路」の再定義

中国には、この情勢を戦略的機会と捉えている様子があります。かつての大規模融資を伴うインフラプロジェクトに代わり、中国は現在「エネルギー安全保障」と「中東リスクヘッジ」を旗印に、一帯一路を再定義しています。また中国企業は、フィリピンの中央政府を通さない地方自治体(LGU)レベルでの関係構築を図ったり、特定セクターにおいて現地のパートナーを通じた進出を模索しているとの指摘もあります15。中東の混乱を背景に、中国主導の安定したエネルギー供給網という選択肢をフィリピンの経済界や地方政府に提示することで、経済的影響力を静かに、かつ確実に再拡大させています。

2026年3月24日の「国家エネルギー非常事態宣言」を受け、石油の9割以上を中東に依存するフィリピン経済は深刻な麻痺状態に陥りました。こうした中で、中国はエネルギー安全保障の救済者として接近しています。フィリピン政府は非常事態宣言からわずか数日後に中国との共同資源開発協議を再開するとともに16、フィリピンのエネルギー省が在フィリピン中国大使館とエネルギー供給を巡り協議したことが報じられています17。中東リスクを逆手に取ったこの「エネルギー外交」により、中国は経済界や地方政府に対し、日米同盟では解決できない実利という選択肢を突きつけ、その影響力を確実に再拡大させています。

ドゥテルテ派の論拠:実利への回帰

これらの外的な損得の計算は、国内のドゥテルテ派の主張の論拠となっています。彼らはインフレと原油高にあえぐ国民に対し、米国に従って中東の戦火の余波を受けるより、中国との経済協力を優先すべきだという、実利的な主張を展開しています。この「安全保障より生活」というメッセージは、親米路線の代償として経済的苦境を強いられていると感じる層に深く浸透しており、2028年に向けた不確定要素の一つとして注視されています。

4. 日本企業の勝機とリスク:日本政府の経済安全保障政策やODAの先にあるもの

フィリピンにおける日本企業のビジネス環境は、現在、日本政府が推し進める経済安全保障政策と、フィリピン内政の不透明性が交差する極めて複雑な局面にあります。日本政府が掲げる「戦略17分野」―半導体、蓄電池、重要鉱物、次世代通信、防衛産業など―において、フィリピンは価値観や政策目的を共有する国としての期待を集める一方で、日本企業の前には特有のリスクが立ちはだかっています。

質の高いインフラに潜む事業の停滞・見直しリスク

日本の対比支援の象徴であるODA(政府開発援助)プロジェクトは、フィリピンにおける政権交代に伴う制度的な継続性の揺らぎという課題に直面する可能性があります。フィリピン政治の歴史を概観すると、新政権が前政権の主要施策に対し、透明性の再検証を名目とした事業の中止や再審査(レビュー)を命じるケースが少なくありません。

特に、現在のマルコス政権下で進展している大規模なインフラプロジェクトについては、2028年の政権交代の行方次第で、既存の契約スキームが政治的な文脈から再検討の対象となる実務上の懸念が浮上します。たとえG2G(政府間)契約であっても、現地の司法判断や行政命令によって数年単位の事業遅延を余儀なくされる可能性は、フィリピン特有のカントリーリスクとして改めて精査する必要があると考えられます。日本企業には、こうした政治的ボラティリティを前提とした上で、単一の政権に依存しない多角的なリスクヘッジ戦略の再構築が求められます。

戦略的投資先としての防衛・通信・エネルギー

日本政府の戦略17分野に合致する「防衛」「通信」「エネルギー」は、地政学的リスクそのものが参入障壁となり、日本企業の優位性が発揮される分野です。海洋状況把握(MDA)のためのレーダー配備やサイバー防衛、脱炭素に向けたLNG基地建設などは、中国資本の参入が安全保障上の理由で制限されるため、日本企業にとっては大きな商機となります。しかし、ここでの立ち回りは極めて繊細さが求められます。次期政権が対中融和路線に傾いた際、受注済みの通信インフラに対し、中国製コンポーネントの混入を事実上容認、あるいは強制されるといったハイブリッドリスクが浮上するからです。日本の技術によるクリーンネットワークの内部に忍び寄るリスクをどう防ぐかが、今後の契約実務の焦点となると考えられます。

「脱中国サプライチェーン」の受け皿としての限界と実態

フィリピンはチャイナ・プラスワンの有力候補と目されてきましたが、現実は甘くないようです。第一の障壁は、アジア最高水準の電力コストと、労働法規の複雑さです。製造業の脱中国シフトを受け止めるには、フィリピンのコスト構造は依然として非効率さを残しており、これが代替地としての魅力を削いでいます。第二の、そしてより本質的な限界は、政権による外交方針の極端な振れ幅です。数年単位で外交方針を転換する可能性がある国に対し、数十年単位の減価償却を伴う生産拠点の移転を決断できる企業は多くありません。地政学的バッファとしての価値は認めつつも、フィリピンをより安定的な受け皿と受け止めるためには、その政治的ボラティリティは現状高い水準にあると言えます。

ODA戦略の転換:技術による「ロックイン戦略」

こうしたリスクを回避するため、日本の支援策は新たなODAへと進化する必要があると考えられます。巨大な橋や道路といった目に見えるハードは、政権交代の影響を直接受けます。一方、サイバーセキュリティのプロトコル、高度な災害予測システム、農業DX(デジタルトランスフォーメーション)といった不可欠な技術インフラは、政権の色にかかわらず国家運営に必須となります。これらソフト面での標準化(デファクトスタンダード)を握ることで、政権が変わっても日本企業が排除されない「技術的なロックイン」を構築することが、2028年以降の生存戦略になると考えられます。

5. 2028年を見据えた日本企業のシナリオプランニング

2028年の大統領選に向け、日本企業は単一の予測に固執するのではなく、対極的な複数のシナリオを想定したコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を策定すべきです。

シナリオA:「親中政権回帰」シナリオ

サラ・ドゥテルテ氏が勝利するシナリオです。本来、彼女は父と一定の距離を置く独立心の強い政治家ですが、現在はマルコス政権との政争において「ドゥテルテ家」の支持基盤を維持するため、戦術的に父との和解と路線の継承を強調しています。父ロドリゴ氏が政権末期に対中融和の限界(投資不履行)を学習した背景を踏まえ、彼女の路線は単純な親中ではなく、不確実性の高い「極端な実利主義」へと変容する可能性があります。日本企業としては、中国企業の再流入による既存プロジェクトの停滞や条件変更も想定されます。特に、防衛協力(RAA)や重要鉱物といった戦略的セクターにおいて日本企業が米中対立の板挟みにあった場合、米国の制裁網への接触を避けるために事業継続を断念せざるを得ず、投下資本の回収不能や巨額の評価損計上を余儀なくされるリスクも起こりえます。

シナリオB:「マルコス路線継承」シナリオ

マルコス政権の指名する後継者が勝利し、親米路線が固定化されるシナリオです。一見、日本企業には追い風ですが、これは同時に「中国からの軍事的・経済的圧力のさらなる高まり」を意味します。フィリピンにおける中国由来の部材調達や中国資本活用の制約を想定し、調達コスト増やサプライチェーンの停滞に備える必要があるとともに、地政学リスクに対応するためのセキュリティコスト(安全対策費)の積み増しも避けられません。

日本企業に必要な「脱・政権依存」のネットワーク

いずれのシナリオに進んでも、日本企業が守るべきは政権との距離です。フィリピンにおいて、特定の政権と過度に密着することは、政局次第で外交方針や優先順位が劇的に変動する「実利主義のボラティリティ」に直接さらされるリスクを意味します。

日本企業に求められるのは、中央政権の動向に左右されないローカルネットワークの構築です。具体的には、以下の3点が肝要となります。

  • 有力財閥との多角的な連携:時の政権が誰になろうとも経済の実権を握り続ける、地元の有力財閥(コングロマリット)との強固なパートナーシップの構築
  • LGU(地方自治体)との直接対話:中央の外交スタンスに左右されず、現場レベルでプロジェクトの継続性を担保する「実務優先」の信頼関係の構築
  • 多角的なエグジット戦略の策定:投資段階から、米中対立の激化や現地政権による「天秤外交」の余波を想定し、資産の売却や他国への移転をスムーズに行うための法的・財務的出口戦略の策定

2028年のフィリピンは、日米との連携か、あるいは「自国第一の実利主義」の伸長が招く揺り戻しかの分岐点にあります。日本企業には、特定の政治勢力に依存せず、どの陣営が実権を握っても「日本との協力がフィリピンの国益に資する」と認識させるような、不可欠な技術と重層的なネットワークに裏打ちされた戦略が求められます。

1 Bianka Venkataramani "The Marcos–Duterte feud is undermining Philippine security in the South China Sea" 12 November 2025

2 RAMON ROYANDOYAN "Marcos-Duterte rift escalates over Philippines constitutional changes" February 2, 2024

3 Nova Mae Francas "City govt, City of Dalian in China, to sign sister city agreement" September 24, 2025

4 Global Times "Beijing’s Billion-Dollar Footprint: A Decade of PRC Infrastructure Deals Reshaping the Philippines" May 14, 2025

5 BLOOMBERG "Philippine Vice-President Duterte criticises Marcos for leaning towards US" Jun 23, 2025

6 Zacarian Sarao "Marcos daydreaming about economic recovery by year-end – Duterte" November 14, 2025

7 Joel GuintoandAnna Holligan "ICC judges hear charges against ex-Philippine president Duterte: What you need to know" 24 February 2026

8 Poppy McPherson "Exclusive: Fake accounts drove praise of Duterte and now target Philippine election" April 11, 2025

9 Jairo Bolledo "Senate convenes as court. What next for Sara Duterte’s impeachment?" May 18, 2026

10 Zacarian Sarao "LOOK: Tentative schedule for Sara Duterte’s impeachment trial" May 21, 2026

11 James Patrick Cruz "Sara Duterte’s impeachment trial to begin on July 6" May 21, 2026

12 Poppy McPherson and Karen Lema "How China waged an infowar against U.S. interests in the Philippines" October 6, 2025

13 Albert Zhang "China’s high stakes and deepfakes in the Philippines" 2 Aug 2024

14 Justin Baquisal "Dangers of Delay: US-Philippine Defence Cooperation in 2026" 26 Mar 2026

15 Jonathan A. Solis "Amidst rising tensions, Beijing bets big in the Philippines" September 13, 2024

16 Ellie Aben "Philippines, China restart talks on energy cooperation in disputed sea" March 29, 2026

17 Department of Energy Philippines "DOE held talks with Chinese Ambassador to the Philippines Jing Quan" 28 March, 2026

執筆者

坂田 和仁

マネージャー, PwC Japan合同会社

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