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米国では2026年11月に中間選挙が予定されており、第2次トランプ政権発足から約2年間の成果に対して米国民が審判を下す選挙として注目されています。なお、米国では2年に1回連邦議会の選挙が実施され、4年に1回の大統領選挙の間に行われる議会選挙を中間選挙と呼びます。
※本レポートは執筆時点(2026年2月9日)の情報を基に執筆しています。
就任後1年が経ち、トランプ政権の支持率は漸減してきました。2025年1月の就任時には52%だった支持率は、就任100日目の4月30日には44%へと下がり、1年後の2026年1月20日には42%まで落ち込みました1。野党・民主党の支持者だけでなく、政権の支持基盤である与党・共和党の支持者や、2024年の大統領選挙でトランプ氏に投票した無党派層からの支持も低下しています(就任後1年間で共和党支持者の支持率は94%から79%に、無党派層は41%から29%に低下2)。また政策別の支持率では雇用・経済、インフレといった項目での低下が顕著であり、共和党支持者からの支持率も下がっています(図表1参照)。トランプ大統領は2024年の大統領選挙で、共和党支持者に加え、バイデン前政権下のインフレを嫌った無党派層の票を取り込んで勝利しました。トランプ政権下でインフレは減速していますが、食料品や光熱費、保険料などの価格上昇は継続しており、2024年にトランプ氏に投票した人々も生活費の負担増を理由に支持から離れつつあると言えます。
図表1:政策別の政権支持率
実際、2025年11・12月に行われたオフイヤー選挙(全国的な大統領選挙・連邦議会選がない年に行われる選挙)では、生活費の高騰・高負担への対策を意味する「アフォーダビリティ」が争点化し、民主党がニュージャージー州・バージニア州知事選、ニューヨーク市長選などで全勝しました。共和党の地盤であるテネシー州で行われた連邦下院補選でも民主党候補が善戦するなど、トランプ大統領の与党・共和党にとって厳しい結果となっています。この選挙結果と相関するように、オフイヤー選挙直後の調査では、支持政党に関係なく、トランプ政権は「物価引き下げ」を最優先すべきと回答する人が最多でした3(直近の調査については後述)。
米国連邦議会では、上院100議席は2年ごとに3分の1ずつ改選され(個々の議員の任期は6年)、下院435議席は全議席が2年ごとに改選されます(議員任期は2年)。2026年2月9日現在、上院では共和党53議席・民主党47議席、下院では共和党218議席・民主党214議席(空席3)となっており、上下院ともに共和党が僅差で過半数を占めています(図表2参照)。
図表2:現在の議席と獲得議席予想
この状況において、直近の中間選挙の投票先調査では、共和党42.6%に対し民主党47.6%と、民主党が5ポイントリードしています4。しかし、予想される議席数では、上院は改選議席の多くが共和党現職であり(改選35議席中22議席が共和党)、共和・民主が競う接戦区が少ないことから、共和党が過半数の51議席以上を保つ可能性が高いと見られています5。一方で435議席の全てが改選となる下院では、物価高によるトランプ政権への支持率低下などが影響し、民主党が過半数を制する勢いとなっています6。トランプ大統領は「アフォーダビリティ」という争点を否定しており(後述)、また世論調査では共和党支持者も「移民管理」を最優先すべきと回答していますが、民主党支持者や無党派層は「物価引き下げ」を最優先すべきと回答しています(2026年1月末調査7。図表3参照)。政権支持層と無党派層のどちらの声を汲むべきか、政権としては難しいかじ取りの局面と言えます。
図表3:トランプ政権が注力すべき政策分野(支持政党別)
このように下院過半数を失う可能性がある共和党・トランプ政権ですが、そもそも米国の中間選挙では政権与党の議席減少が通例となっています。1945~2022年の中間選挙では、与党が共和党・民主党のいずれの場合でも、上院で平均4議席・下院で平均25議席を減らしてきました8。クリントン政権(1993~2001年)以降、中間選挙で上下両院の議席を増やしたのは、9.11後の対テロ戦争中だった第1次ブッシュ政権(2001~05年)のみでした(下院過半数を維持し、上院は過半数を奪還)。第1次トランプ政権時(2017~21年)の中間選挙においては、上院では与党・共和党が過半数を維持したものの、下院では過半数を割り込み199議席となりました。その結果、議会運営が困難となり、国内での政策よりも、北朝鮮訪問や中東でのアブラハム合意、第1弾米中貿易合意といった外交など議会を通さない行政権限内で行える施策に注力することになりました。
今年11月に実施される中間選挙に向けた注目点としては、以下の3点が挙げられます。
①「アフォーダビリティ」:トランプ大統領は「アフォーダビリティ」という争点を否定しており、自身2期目の下でインフレは落ち着き、経済成長も達成していると主張しています。ただし、実際には昨年のオフイヤー選挙後にコーヒー・バナナなどの食品類を関税対象から除外したり、機関投資家による戸建て住宅の購入を禁止したりと、アフォーダビリティを意識した政策を次々と発表しています。今後も中間選挙まで物価高対策を主眼とした政策が打ち出されていくことが予想され、これが支持率回復につながるかに注目が集まります。
②成果重視の外交政策:中間選挙が行われる11月までに、有権者にアピールできる外交成果を狙う可能性があります。例えば、キューバの体制転換への働き掛けを通じてキューバ系米国人の支持を集めることが考えられます。また、対中規制緩和や米国産品購入を含む中国とのディールの合意9、日米合意に基づく戦略投資の実施を通じて米国民への経済的利益をアピールすることも想定されます。
③州規制を巡る争い:現在、各州でAIやデータセンターなどへの規制が乱立しつつあります10。その背景にはAIの安全性や雇用に与える影響への懸念の高まり、地域の電気代・水道代高騰、データセンター建設予定地に反対する住民運動などが活発化している状況があります11。これに対し、国策としてAIなどの開発を進めたい連邦政府は州による規制権限を制限する方向で動いており12、さらに煩雑な規制を回避して好ましい開発環境を構築したいテック企業によるロビイングも行われていると報じられています13。中間選挙と同時に行われる州知事選挙において、これらの規制に対するスタンスも候補者間で争われており、米国でビジネスを行う企業は進出先の州の状況を注視する必要があります。
11月の中間選挙については、各所の報道・分析を総合すると、以下の3つのシナリオが予想されています(図表4参照)。
図表4:中間選挙のシナリオと今後の政局
まず、民主党が下院過半数を獲得し、上院は共和党が過半数を維持するシナリオです。前述したとおり、現時点の選挙予想ではこの展開が有力視されています。第1次トランプ政権の後半と同様、ねじれ議会(英語ではDivided government、「分割政府」)で政権が進めたい政策を実現するのが困難になり、外交など行政権限内で実施可能な施策に注力することになります。この場合、政権と議会との衝突により政府閉鎖や民主党主導の大統領弾劾調査などが生じる一方、トランプ政権は大統領令による政策実行などでレガシー構築を目指し、米国内政が混乱する可能性があります。その中で共和党内ではバンス副大統領が、トランプ政権路線を継承しつつ無党派層を味方に付ける経済政策などを打ち出し、次期大統領候補者になるという見方が存在します。
次は、11月までにトランプ政権の支持率が回復し、各州で共和党有利の選挙区区割り変更にも成功して、共和党が上下両院で過半数を維持するというシナリオです。この場合、トランプ政権は中間選挙までに実施してきた移民管理・減税・行政改革などの政策を選挙後も続行・強化し、2028年の次期大統領選挙にはトランプ政権路線の後継者としてバンス副大統領らが出馬することが予想されます。一方、野党・民主党は2028年大統領選挙までに抜本的な体制改革を迫られ、その場合、サンダース上院議員やマムダニ・ニューヨーク市長ら経済左派路線へとさらにシフトする可能性があります。
最後は、民主党が上下両院過半数を獲得するシナリオです。この場合、トランプ政権はレームダック化し、共和党が上院過半数を維持するシナリオよりもさらに政府と議会との折衝が難しくなります。共和党内でもトランプ大統領の求心力が低下し、「トランプ離れ」が進むことが考えられますが、無党派層への訴求力などを考慮すれば、保護主義的な貿易政策や所得中間層への減税といったトランプ政権の「Make America Great Again(MAGA)」という右派ポピュリスト路線は継続または強化される可能性があります。すなわち、トランプ大統領という表に立つ人物が替わり、レトリックや関税による圧力といったツールの使い方は穏やかになることになっても、実質的にはトランプ政権の方針が引き継がれることが考えられます。
いずれのシナリオでも、中間選挙の次の政治的転機となり得る大きな選挙は2028年の大統領選挙となります。共和党の候補(現時点で最有力なのはバンス副大統領)はMAGA路線の継続を掲げて選挙に臨み、当選すればほぼ現状の政策が続く可能性があります。一方、民主党の大統領候補が勝利した場合には、移民や環境、多様性・公平性・包括性(DEI)、富裕層・大企業対象の増税といった政策が復活することがあり得ます。しかし、第1次トランプ政権下で始まった関税が民主党バイデン政権下で維持・拡大されたように、国内産業保護に向けた保護主義的な通商・産業政策などは変わらないことも考えられます。
前述したとおり、中間選挙が行われる今年11月まで、トランプ政権は物価高対策を積極的に実施する見込みです。例えば、クレジットカード金利上限の導入や、健康保険購入補助の復活、関税除外措置の拡大など、有権者の生活費負担を抑える施策を実行していく可能性があります。また対外政策では、キューバの共産主義体制転換に向けた施策や、さまざまな国との経済・政治的「ディール」、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)見直しでの強硬姿勢など、有権者にアピールできる政策が採られることも考えられます。短期的には、日本企業はそれらの政策による影響を見極め、対応を準備することが求められます。
中間選挙後も含めた中長期的な時間軸では、今後発生する地政学リスクへの対応として、米国と関係する企業は以下の体制を構築していくことが推奨されます(図表5参照)。
図表5:求められる企業対応
①まず、連邦・州レベルにおける政局・政策動向を継続的に分析するためには、インテリジェンス機能を備えた体制を構築する必要があります。米国では主な政策は政権内部や議会で議論され、その過程でメディアにも報じられることが多くあります。それらの議論が政策として発表される前に兆候を把握することで、自社に関係する政策がもたらす影響への備えが可能になります。
②①で得た情報に基づき、シナリオ・事業影響の分析を行います。例えば、前述したような米中合意による対中規制緩和や、日米で合意された戦略投資などの履行を米国主導で加速させる事態も想定されます。また、今年はUSMCAの見直しが予定されていますが、米国では原産地規則の強化などを求めるトランプ政権の意向が示されています14。この原産地規則の強化の範囲・程度によっては、自社や関係先の北米サプライチェーンに多大な影響を及ぼす可能性があります。このような予想されるシナリオに基づき、事業影響の分析を進めることが有効です。
③②で実施したシナリオ・事業影響の分析結果に基づき、必要に応じて経営戦略・事業計画の見直しを行います。上記の例で言えば、米中合意によって米国の対中規制が緩和されれば、米中間での取引・サプライチェーン構築が容易になるため、中国での事業戦略を検討し直す余地が生まれます。日米合意下での戦略投資については、同スキームのメリット(日本の政府系金融機関による出資・融資・融資保証、米国政府による各種規制対応優遇など)とデメリット(米国側による案件の最終決定、日米間の利益配分など)を考慮して、企業としての関与を検討することも選択肢の一つと言えます。また、USMCAの見直しで域内生産割合の引き上げや米国コンテンツ条項の新設が行われた場合には、北米サプライチェーンの域内化や米国現地化が必要となります。さらに、他国の製品排除の条項が新設された場合、サプライチェーンから当該国の製品を排除するなどの対応が求められることになります。
④上記のように地政学的な状況に対応するのみならず、「自ら状況を作る(変える)」こと、すなわち政策提言やロビイングといった行動も選択肢に入れることが考えられます。自社事業が有利になるないしは不利益を被らないように、産業団体における政策主張の調整を行うことや、政策提言や特定候補者の支援、政権・議会へのロビイング、メディアで主張を発信するといった行動は、米国では広く実施されています。①のインテリジェンス体制の構築と合わせて、政府渉外体制の構築も検討すべきでしょう。
このように、米国の中間選挙については、それが直近の米国の政治状況に影響をもたらすだけでなく、2028年の大統領選挙や、その後の展開、さらに日本企業がその中でどう行動すべきかまで示唆を得ることができます。本レポートが、日本企業における米国情勢の把握に資することを願っています。
1 小数点第1位は四捨五入。Nate Silver and Eli McKown-Dawson, “How popular is Donald Trump?” February 5th, 2026, https://www.natesilver.net/p/trump-approval-ratings-nate-silver-bulletin
2 The Economist and YouGov, “January 26 - 28, 2025 - 1577 U.S. Adult Citizens,” https://d3nkl3psvxxpe9.cloudfront.net/documents/econTabReport_m8tctwx.pdf
および “January 16 - 19, 2026 - 1722 U.S. Adult Citizens,” https://d3nkl3psvxxpe9.cloudfront.net/documents/econTabReport_WCk0aqK.pdf
3 Marist Institute for Public Opinion, “A Look to the 2026 Midterms, November 2025,” November 19th, 2025, https://maristpoll.marist.edu/polls/a-look-to-the-2026-midterms-november-2025/
4 RealClearPolitics, “2026 Generic Congressional Vote,” February 5th, 2026, https://www.realclearpolling.com/polls/state-of-the-union/generic-congressional-vote
5 270toWin, “2026 Senate Election: Consensus Forecast,” January 29th, 2026, https://www.270towin.com/2026-senate-election/consensus-2026-senate-forecast#google_vignette
6 270toWin, “2026 House Election: Consensus Forecast,” February 5th, 2026, https://www.270towin.com/2026-house-election/consensus-2026-house-forecast
7 Marist Institute for Public Opinion, “The Actions of ICE, February 2026,” February 5th, 2026, https://maristpoll.marist.edu/polls/the-actions-of-ice-february-2026/
8 The American Presidency Project, “Seats in Congress Gained/Lost by the President's Party in Mid-Term Elections," Santa Barbara, CA: University of California, December 6th, 2022, https://www.presidency.ucsb.edu/statistics/data/seats-congress-gainedlost-the-presidents-party-mid-term-elections
9 2026年2月の米中電話首脳会談で米国産品購入などが協議されたことが報じられている。
田島如生・坂口幸裕「中国、台湾巡り米国と「取引」探る 武器売却停止求め貿易は譲歩」日本経済新聞(2026年2月5日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0510C0V00C26A2000000/
10 2025年にまとめられた各州のAI規制の一覧:National Conference of State Legislatures, “Artificial Intelligence 2025 Legislation,” July 10th, 2025, https://www.ncsl.org/technology-and-communication/artificial-intelligence-2025-legislation
11 Data Center Watch, “$64 billion of data center projects have been blocked or delayed amid local opposition,” 2023 Q1-2025, https://www.datacenterwatch.org/newsletter (accessed on February 9th, 2026)
および Gabby Miller, “Data centers have a political problem — and Big Tech wants to fix it,” POLITICO, December 17th, 2025, https://www.politico.com/news/2025/12/17/data-centers-have-a-political-problem-and-big-tech-wants-to-fix-it-00693695
12 例えば2025年12月11日付大統領令「人工知能に関する国家政策枠組みの確保」, https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/12/eliminating-state-law-obstruction-of-national-artificial-intelligence-policy/
13 Samuel Larreal, “The AI Super PAC Fight That Might Shape the Midterms,” NOTUS, January 13th, 2026, https://www.notus.org/2026-election/ai-super-pacs-leading-the-future-public-first-alex-bores
14 Office of the United States Trade Representative, “Ambassador Greer Reported to Congress on the Operation of the United States-Mexico-Canada Agreement,” December 16th and 17th, 2025, https://ustr.gov/about/policy-offices/press-office/press-releases/2025/december/ambassador-greer-reported-congress-operation-united-states-mexico-canada-agreement
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