次世代型のファイナンス機能を実現するための3つの柱

2021-09-21

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、企業はこれまでにない不確実性の中で経営のかじ取りをすることが求められてきました。そして、市場や社会の需要が劇的に変化したことで、ファイナンス機能(財務、経理、経営企画)に求められる役割や提供価値が再定義されつつあります。パンデミックに限らず、ビジネスモデルの多様化、テクノロジーの発展、地政学リスクの増加などの変化が加速度的に進展する中で、企業にはファイナンス機能の変革がこれまで以上に求められています。

実際に、先進的なファイナンス機能の導入を変革の機会として捉え、経営により大きな貢献を果たすための取り組みがさまざまな企業において進められています。しかし、このようなファイナンス機能の抜本的な変革を成功させるためには、「パフォーマンス」「プロセス」「人材」という3つの柱が重要であると考えます。

1. パフォーマンス

テクノロジーの発展に伴い、ファイナンス担当者は手作業でデータを収集する煩雑な業務から解放される一方で、ビジネスパフォーマンスのドライバーを理解し、インサイト(洞察)を提供することが期待されています。

つまり、ファイナンス担当者は、データから組織を目標達成に導くための実用的なインサイトを抽出する必要があり、そのためには、どの指標が組織の戦略目標に合致しているかを明確にし、意思決定者に有用な形でこれらの多様な指標を測定し、報告することが求められます。

パンデミックに伴う市場の変動により、過去の実績や従来の指標は経営上の意思決定に活用しづらくなりました。ファイナンス機能はさまざまな切り口で自由に分析を行えるテクノロジーを活用する必要があります。外部と内部のデータを組み合わせて、市場からのシグナルをタイムリーに捉え、さまざまなシナリオをモデル化し、先読みとインサイトを通して経営意思決定を支えることが求められています。

2. プロセス

業務プロセスの標準化と改善はファイナンス機能にとって新しいコンセプトではありませんが、テクノロジーやツールの飛躍的な進歩やデータの増加に伴い、潜在的な効果は拡大しています。先進的なファイナンス機能は、データに基づき業務プロセスの改善機会を特定するとともに、さまざまな打ち手やデジタルツールを組み合わせることにより高い生産性を実現してきました。

また、現行ERP製品の標準サポート終了に伴い、多くの企業は次世代型のERPへの移行を進めています。先進的なファイナンス機能は、これをチャンスとして捉え、過度のカスタマイズによって複雑化、ブラックボックス化したこれまでのシステムから脱却し、最新の機能・サービスを全面的に活用した、よりシンプルで、アジャイルかつ高付加価値なシステムの再構築を目指しています。大規模なシステム移行の効果を最大限生活かすためには、経営陣はファイナンス機能、組織全体のステークホルダーと対話を進めながら、あるべき姿を前提とした機能改革に取り組むことが肝要です。

3. 人材

ファイナンス機能は、企業活動の実態や変化の予兆を正確に捉え、経営や事業部門の意思決定を支えるアドバイザー(=ビジネスパートナー)へと進化することが求められてきました。近年はFP&A(Financial Planning & Analysis)機能の新設や、デジタル化による広範囲な自動化に伴い、多くの日本企業においてもこれらの取り組みが本格化しています。

新たな役割を担うにあたり、ファイナンス機能は財務データの分析や報告に留まらず、意思決定やアクションをプロアクティブに推進することが期待されます。従来の会計・財務の専門性に加えて、企業価値経営やESGなどの異なる視点や分析力・交渉力・変革推進力・デジタルリテラシーなどのスキルを備える必要があります。

ファイナンス機能のアップスキリングとリスキリング(学びなおし)は、長期的な投資として捉えなければなりません。ファイナンス機能のリーダーは、組織の将来ビジョンを明確化するとともに、それらを実現するために機能配置や人員・スキル構成を見直し、能力のギャップに対処するための採用、育成、評価制度を再構築することが求められます。

最適なバランスを目指す

ファイナンス機能の変革は、組織の規模や複雑性によって異なりますが、どのプロジェクトにおいても、「パフォーマンス」「プロセス」「人材」が重要な要素となります。これらの3つの要素を考慮しながら、中長期的な将来像とロードマップを描く必要があります。

PwCでは、パフォーマンス、プロセス、人材の3つの視点を踏まえて、ファイナンス機能の抜本的な改革を支える「Finance Transformation Integrated Solutions」を提供しています。

執筆者

駒井 祐太

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

本ページに関するお問い合わせ