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第1回と第2回では、GovTech産業の広大な規模と、ルワンダにおける事例を踏まえたDigital PPP(Public Private Partnership)による公共サービスDXの推進について説明しました。Digital PPPの進化は、制約が少なくDigital Leapfrogを進めやすいルワンダのような途上国で特に顕著ですが、国際的な連携を通じて先進国にも影響をもたらします。
そこで、第3回では国際連携を通じた公共サービスDX推進の取り組みの事例の紹介に加えて、日本のような先進国が、特に途上国との新たな協創関係を築くことにより、公共サービスDX推進においてどのような可能性があるかについて論じます。
インド政府が2009年から開始した国家デジタルIDプログラム「Aadhaar」は、国民識別番号を生体認証と紐づけて提供する仕組みを採用し、10年弱で成人の99%以上(10億人以上)に普及しました。インド政府は、補助金や給付金、公共サービスの提供において、国民に直接アプローチすることが可能になり、サービスの到達範囲の拡大や不正排除などの成果を上げています。
世界最大規模の成功を収めたデジタルID制度であるAadhaarを土台として、その恩恵を他国にも広めるため、インドの国立情報学研究所は複数の機関(タタ・トラスト、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ノルウェー援助機関など)の支援を受け、非営利プロジェクト「MOSIP(Modular Open Source Identity Platform)」を2018年に立ち上げました(図表1)。MOSIPはオープンソース型のプラットフォームとして提供されており、各国の法制度やニーズに合わせてカスタマイズ可能な柔軟性と拡張性を持つことが特徴です。また、生体認証や個人情報を活用しつつもプライバシーを重視した設計思想を掲げており、データの安全性やプライバシー保護にも重点が置かれています。さらに、非営利目的で提供されているためライセンス料は無料であり、各国は運用に必要な費用負担のみで導入できて、特定ベンダーに依存するベンダーロックインも避けられます。
MOSIPはアジア・アフリカを中心に26カ国以上で導入準備や実装が進められており、全国民規模での本格展開に踏み切った国にはフィリピンやエチオピア、モロッコが挙げられます。
フィリピンでは、国家IDプロジェクトのコア技術としてMOSIPを採用し、島々に点在する国民へのサービス提供範囲が拡大しました。エチオピアでは、難民の身元証明のためにMOSIPベースのIDシステムを導入し、登録を進めています*1。
MOSIPには、テクノロジーパートナーとして生体認証機器の製造やソリューションの設計などさまざまな企業が参画しています。インド国内の企業以外にも、米国・欧州・アジア等の企業が登録されており、主にパートナー企業が導入先での開発に携わっています*2。
国民識別IDはデジタル社会への入り口であり、その成果をグローバル公共財として横展開するMOSIPの試みは、イノベーションの国際波及の好例といえます。
図表1:インドによるMOSIPの展開
ドイツ政府主導で立ち上げられた「GovStack」は、政府のデジタルサービスを迅速かつ低コストで構築するためのグローバルなツールキットを提供する国際イニシアチブです。各国の行政サービスに共通する基盤機能(デジタルID、電子支払い、データ連携など)を構成要素(ビルディングブロック)としてまとめ、各国政府が自由に組み合わせてサービスを構築できるようにしています。
GovStackでは、自国発の技術を国際展開するだけでなく、他国発の実績あるデジタル技術を取り込み拡散させるアプローチをとっています。その中で、途上国で生まれた優れたデジタル技術を取り入れるReverse innovationの視点が重要となっています。例えば、ドイツが新型コロナウイルス対策として導入した感染症サーベイランスシステム「SORMAS」は、元々は西アフリカのナイジェリアでエボラウイルス病対策のために開発されました。ドイツ政府はSORMASを優れたシステムと見なして感染経路追跡に活用する方針を決定し、ドイツ以外にもフランスやスイスなど欧州の国々で採用が進みました(図表2)。現在、SORMASはGovStackのデジタルヘルス分野における推奨アプリケーションの一つとして位置づけられており、さらなる国際展開が見込まれます。これは、先進国が途上国から学ぶReverse innovationの好例といえます。
図表2:Reverse innovationの事例(SORMASの国際展開)
さらにGovStackには、「GovMarket」と呼ばれる市場創出の仕組みがあります。GovMarketは、GovStackが定める一連の標準仕様を共通言語として、各国政府の需要とソフトウェア・サービスを提供する民間企業をマッチングするプラットフォームです。GovMarket上では政府機関向けの公開案件の告知や、GovStackアプローチに精通したコンサルタント・企業の情報掲載なども行われており、官民のマッチングをシームレスに行う場となっています。各国政府は、必要なデジタルサービスに適合したソリューションを効率的に透明性高く検索し、信頼性の高い企業から調達できるメリットがあります。また、民間企業はスタートアップや中小企業も参画可能であり、自社のソフトやサービスを国際基準に沿って広く紹介・提案できます(図表3)。
このように政府のニーズと民間イノベーションを橋渡ししてDigital PPPを促進する環境を整えることで、GovStackは単なる技術展開にとどまらず、各国でのGovTech産業育成や調達改革にも貢献しようとしています。
図表3:GovMarketの取り組みと政府・民間企業の利点
日本が公共サービスDXで後れを取り戻し、さらなる進歩を遂げるためには、Digital PPPの推進が不可欠です。日本におけるDigital PPPを加速するカギは、上述の事例のような国際連携にあり、特に以下のような途上国との新たな協創関係の可能性が考えられます。
これらの取り組みによって、途上国との新たな協創関係を築き、日本における公共サービスDXが加速化する未来図が考えられます。
*1:MOSIP, “MOSIP-Rewind-2024” Accessed March 21, 2025. https://www.mosip.io/pdf/MOSIP-Rewind-2024.pdf
*2:MOSIP, “Technology Partners” Accessed March 21, 2025.
http://prod-website-903390823.ap-south-1.elb.amazonaws.com/technology_partners
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