「経済安全保障推進法」企業に求められる対応

先端重要技術開発(官民技術協力)について

  • 2023-12-13

連載コラム「『経済安全保障推進法』企業に求められる対応」では、日本における経済安全保障政策や法規制の整備状況と経済安全保障の確保に向けた主要国の動向(第1回)、経済安全保障推進法の主要施策である「基幹インフラの安全性・信頼性確保」(第2回)、「機微技術の流出防止(特許の非公開)」(第3回)、「重要物資の安定供給(サプライチェーンの強靭化)」(第4回)について解説してきました。第5回となる今回は、同じく経済安全保障推進法の主要施策の1つである「先端重要技術開発(官民技術協力)」について、施策内容と企業の活用方法や留意点を解説します(図表1)。

図表1. 経済安全保障推進法の主要4施策

企業の本施策活用メリットと留意点

日本企業は、NEDOやJSTが実施する公募に研究開発機関として参画することで、研究開発費用の支援を受けたうえで要素技術の確立を図ることができます。研究実施段階においては、経済安全保障推進法に基づいて設置される協議会などから、研究成果を社会実装につなげるための伴走支援を受けることができます。予算規模が数百億円にのぼるプロジェクトも存在し、1社の企業努力だけでは予算確保が難しい規模の研究開発に取り組むことで、国内外の競合他社に対する技術優位性の確保を進めることもできます。

一方で、プログラムによっては8年間といった長期間にわたり研究開発のための人員体制を維持したうえで、委託研究契約や予算計画に沿った適切な経費支出、定期的な自己評価や外部評価の実施、協議会や関係府省との意見交換会への参加などが求められる点には留意が必要です。また、企業利益だけではなく、国が定める構想に沿った経済安全保障に資する研究開発を行ったうえで、民生利用だけでなく公的利用につなげることや、国が定める期限までに成果目標を達成することも求められます。

また日本政府は、流出した際の影響が⼤きい重要技術については、研究成果活⽤の促進だけでなく技術流出防⽌についても今後取り組みを強化する必要があるとの方針を示しています。2023年5月のG7広島サミットの首脳声明においては、「最先端の機微な技術については、国際平和と安全を脅かす軍事力の増強のために利用されることを防止するために、適切に管理する必要がある」との趣旨が盛り込まれました。2カ国間、複数国間の協議の場でも重要技術について議論され、国際協⼒の重要性および必要性が⾼まっています。さらに、2024年の通常国会での法案提出が見込まれ、機微情報を扱う資格要件を定める「セキュリティクリアランス(適格性評価)」への対応も求められる可能性があります。

こうした状況を踏まえると、本施策を活用する日本企業においては今後、特定重要技術に関する機微情報の情報管理の徹底がますます求められるでしょう。守秘義務も厳格化する可能性があるため、留意しておく必要があります。

1 内閣官房「経済安全保障重要技術育成プログラム(K Program)の現状」 2023年11月

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執筆者

坂田 和仁

マネージャー, PwC Japan合同会社

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