『セキュリティ・クリアランス制度』法制化の最新動向と日本企業が取るべき対応

【第5回】「能動的サイバー防御」関連法成立によって基幹インフラ事業者に求められる、セキュリティ・クリアランス制度への対応

  • 2025-10-10

1. 基幹インフラ事業者を保護対象とする能動的サイバー防御法

2025年5月、能動的サイバー防御を導入する関連法1(以下、総称して「能動的サイバー防御法」)が成立しました。これに伴い、経済安全保障推進法において基幹インフラ事業者として指定されている企業においては、政府から機微情報の提供を受けることや、その際には事前にセキュリティ・クリアランス制度への対応が必要となることが想定されます。

能動的サイバー防御とは、国や重要インフラなどに対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃の未然防止または発生した場合の被害拡大防止のために、攻撃源の特定、情報収集、攻撃者の無力化を行うことを指します。日本では2022年12月に閣議決定された国家安全保障戦略において、能動的サイバー防御の導入のための法整備や新組織の設置などが盛り込まれ、2025年5月に能動的サイバー防御法が成立しました。同法の大半の部分は、公布の日(2025年5月23日)から1年半以内に施行されます。

能動的サイバー防御法の保護対象には、経済安全保障推進法において基幹インフラ事業者として指定された企業や、基幹インフラ事業者が使用する電子計算機のうち、サイバーセキュリティが害された場合に重要設備の機能が停止・低下するおそれがあるものが含まれます。基幹インフラ事業者として指定されている企業は、2025年7月末時点で約257社にのぼり、電気、ガス、石油、水道、鉄道、貨物自動車運送、外航貨物、港湾運送、航空、空港、電気通信、放送、郵便、金融、クレジットカードの15業種に及びます2

4. おわりに

2026年中の能動的サイバー防御法の施行に向けて官民での事前協議や連携が開始される中、基幹インフラ事業者においては、セキュリティ・クリアランス制度への適切な準備や対応が早急に求められています。これに関しては①影響を受ける部署・役員・事業ポートフォリオの特定、②必要となる予算・体制・施設などの確認および整理、③影響を踏まえた対応方針の作成(社内体制、社内システム、人材雇用・研修、ガバナンス制度、社内規則の刷新など)、④国内外セキュリティ・クリアランス人材の獲得または育成に向けたプランニングといった観点での準備を進めておくことが効果的であり、競合他社への優位性確保も期待できるでしょう。

重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律(令和7年法律第42号)及び重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備などに関する法律(令和7年法律第43号)

内閣府”特定社会基盤事業者として指定された者(令和7年7月31日現在)”

3 重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(令和6年法律第27号)

4 内閣府「重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)(第1版)」2025年5月2日

執筆者

日比 慎

パートナー, PwC弁護士法人

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雨宮 弦太

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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坂田 和仁

マネージャー, PwC Japan合同会社

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