特別対談:デジタルトラストの構築に向けたPwCのアクション

日経とTBSのサイバー担当記者と議論する、企業に求められるインシデント対応時の経営判断

  • 2026-07-07

ランサムウェア被害や情報漏えいが相次ぐ中、企業には「何を、いつ、どこまで公表するか」という難しい判断が求められています。記者会見を開くべきか、それともプレスリリースを軸に対応すべきか。情報開示のあり方一つで、社会やクライアント、取引先からの信頼は大きく変わります。本セッションでは日本経済新聞社とTBSテレビでサイバーセキュリティ報道の最前線に立つ記者を迎え、メディアから見た「伝わる情報発信」の条件を議論します。平時の備えから有事の経営判断、BtoB/BtoCで異なる発信戦略まで、インシデント対応のあるべき姿を探ります。(本文敬称略)

登壇者

株式会社日本経済新聞社
編集委員
須藤 龍也 氏

株式会社TBSテレビ
報道局社会部 記者
福田 陽平 氏

PwCコンサルティング合同会社
ディレクター
上杉 謙二

※ 本稿は「Digital Trust Forum 2026」(2026年3月公開)のセッション3「日経とTBSのサイバー担当記者と議論する、企業に求められるインシデント対応時の経営判断」の内容を基に、再構成したものです。

左から、上杉 謙二、須藤 龍也 氏、福田 陽平 氏

インシデント対応時の「情報発信のあり方」と経営判断

上杉:
プレスリリースで情報発信をするか、記者会見を行うのか。頻度や説明責任、透明性なども加味し、インシデントの公表をどのように行うかは重要な経営判断です。このようなことは平時から準備ができることでしょうか。また、クライアントからは、判断基準をあらかじめ作りたいというご希望をいただくことがあります。事前の準備はどのくらい有効だと考えますか。

須藤:
災害対応と同じで、事前の備えは有効です。2020年以降、ランサムウェア被害が多発する中、インシデント対応の最中にある企業を内側から取材する機会も増えました。そこで共通して感じるのは、有事には正常な判断能力が失われやすいということです。

経営層は復旧対応、対外説明、取引先対応などを同時に迫られます。そうした状況では「いつ記者会見を行うのか」「どのタイミングで何を公表するのか」といった基本方針は、平時から整理しておくべきです。実際には想定どおりに進まなくても、あらかじめ方針を持っておくだけで、心理的負担は大きく変わります。

上杉:
一度作った判断基準を更新できていない企業も多いと伺います。どの程度の頻度で見直すべきでしょうか。

須藤:
理想は毎年アップデートすることです。実際、ここ5年ほどでランサムウェア被害が急増しましたが、それ以前は標的型メール攻撃やフィッシング、Emotet(エモテット)などが主流でした。攻撃手法や被害の形が変われば、企業に求められる対応も変わります。情報流出への対応と、事業停止を伴うランサムウェア対応とでは、公表内容や経営判断も大きく異なるからです。そのため、公表方針だけでなく、対応フローや判断基準を含めて継続的に見直していく必要があります。

上杉:
プレスリリースと記者会見の使い分けはどのように判断すべきとお考えですか。

福田:
先ほど須藤さんからもお話があったとおり、プレスリリースだけ、会見だけで済むものではなく、その都度の判断が求められます。社会から「どうなっているんだ」と説明を強く求められる場面では顔が見える形で記者会見を行い、企業の姿勢も含めて伝えることが重要です。一方、影響が限定的でも関係者にしっかり伝えたい場合は、プレスリリースをこまめに出して確実に届けることが大切です。

上杉:
情報発信のあり方は、企業のビジネスモデルによっても異なります。BtoB企業とBtoC企業では、プレスリリースや記者会見のスタンスに違いはあるのでしょうか。

須藤:
BtoC企業は一般消費者への影響が大きいため、メディアを通じて広く迅速に情報発信し、説明責任を果たすことが求められます。一方、BtoB企業では、まず取引先への説明を優先し、広く公表しないという判断もあり得ます。ただし、サプライチェーンを通じて消費者に影響が及ぶ場合は、公表が必要になるケースもあります。

取材する立場としては、もちろんもっと情報を出してほしいという思いはあります。ただ、ここで強調したいのはメディアの位置付けです。記者会見やプレスリリースへの対応は、企業にとってしばしば「マスコミ対策」と捉えられがちです。

しかし、メディアの向こう側には一般の消費者がいる。メディアは企業を批判するためだけに存在しているわけではなく、社会に必要な情報を整理し、混乱を抑えながら伝える役割も担っています。だからこそ、企業にはメディアを「対策対象」ではなく、社会へ情報を届ける手段として活用してほしいのです。

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 上杉 謙二

主要メンバー

上杉 謙二

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email


{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

本ページに関するお問い合わせ