DXをデジタル技術導入で終わらせない。組織や仕組みの抜本的な変革を目指す

Digital Process and Platform CoE

  • 2026-01-21

DXに取り組んでいるものの、「思うような成果を上げられていない」と感じるビジネスパーソンは少なくありません。DXの成功には、単なるデジタル技術の導入にとどまらず、組織・人材、プロセス、さらには企業文化そのものを変革することが重要です。アジャイルとクラウドをキーワードに企業変革を推進するDigital Process and Platform CoEのメンバー4名が、DXの本質的な課題や解決策、ソリューション、今後の展望について語り合いました。

左から髙澤 良輔、川俣 友、岡田 裕、塩野 正浩

左から髙澤 良輔、川俣 友、岡田 裕、塩野 正浩

DXの壁を乗り越えるための課題は何か

川俣:
現在、多くの企業がDXに取り組んでいますが、「思うように成果を上げられていない」と感じる企業は多いとよく耳にします。実際、PwCコンサルティングが実施した2024年度のDX意識調査(ITモダナイゼーションサーベイ)※1によると、約60%が「期待通りの効果が出ていない」と回答しています。では、企業が直面している主な課題はどこにあるのでしょうか。

岡田:
DXの議論の際は、どの業務にデジタル技術を適用するかといった「やることを変える」ことに焦点が当たりがちです。しかし実際には、計画至上主義から仮説検証型へ、外部依存型から内製化へといったように「やり方を変える」議論も重要です。それにもかかわらず、多くの企業は既存のプロセスや考え方を踏襲しており、変化する時代に適したやり方に変えられていないのではないでしょうか。例えば、新規サービスの企画がまとまりシステム化を進めようとした際に、システムの開発環境準備に数週間かかり、サービスリリースのスケジュールを変更せざるを得なかったケースがあるとします。この環境準備では、申請フォーマットへの転記、セキュリティルールのチェック、オペレーションの承認など、従来のオンプレミスのやり方が踏襲されていることが多いです。

このような状況を避ける方法として、環境調達における申請から承認までの作業を自動化することが有用です。例えば、申請内容を基に環境設計のパラメータを自動生成して設計作業を自動化することや、インフラリソース構築や承認ロジックをコード化し、構築・確認作業を自動化することが考えられます。このような自動化により、環境調達のリードタイム短縮だけでなく、作業ミスの削減にもつながります。さらに、今後の申請増加を見越して、社内のセキュリティルールをあらかじめ設定した自動化テンプレートを用意しておくことで、承認ルール自体を簡素化することも可能です。

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 岡田 裕

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 岡田 裕

髙澤:
他にも、サービスリリース直前で業務部門とIT部門の認識齟齬が発覚し、手戻りが発生してしまい、リリースが遅れてしまったというケースもよく見受けられます。このような事象は、要件を最初に出し切りシステムに落とし込んでいくアプローチ(計画駆動型アプローチ)でサービスを開発する、いわゆる従来のやり方を踏襲しているケースで起きてしまいがちです。これには、業務部門とIT部門が一体となったチームを形成するとともに、利用者のニーズを都度確認しながら短いサイクルで開発をしていくやり方(仮説検証アプローチ)が有用です。コミュニケーション上のミスやロスも少なくなりますし、顧客の反応を見ながら開発することにもつながるため、使われないサービスとなってしまうリスクを避けることが可能となります。

川俣:
DXの議論はデジタルテクノロジーを活用するといった「やることを変える」視点だけでなく、新しい時代に即したやり方に変えていく視点を持つことの重要性がよく分かりました。それでは、やり方を変えていくために求められることは何でしょうか。

岡田:
大切なのは、新しいやり方を通じて、小さくてもいいので成果を残すことです。成果が出ることで意味があることと認知され、企業内で固執したやり方が徐々に柔軟になっていくきっかけになります。

そのためには、徹底的にユーザー視点を持ち、仮説検証型アプローチを高速に実践する組織能力の構築が重要です。私たちは、そうした組織能力を高めていくために、アジャイルトランスフォーメーションとクラウドトランスフォーメーションという2つの軸でソリューションを提供しています。

組織のアジャイル化を図るソリューションーアジャイルトランスフォーメーションー

川俣:
まずアジャイルトランスフォーメーションですが、具体的にどのような支援を実施しているのでしょうか。

髙澤:
アジャイルトランスフォーメーションは、伴走型の支援を通じてトライアル&エラーを繰り返しながら、成功体験を積み重ね、自社独自のアジャイル文化の醸成と早期のビジネス貢献を支援するソリューションです。近年では、基幹系システムの刷新のような大規模なプロジェクトでのアジャイル採用や、製造業の中でもハードウェアが関わるシステム開発分野でのアジャイル採用に取り組んでいます。また、システム開発プロジェクトに限らず、組織の意思決定のアジリティを向上しようという組織のオペレーティングモデルを変革する取り組みも増えています。

具体例として、大規模アジャイルプロジェクトのPMO(Project Management Office)の領域で、アジャイルプロジェクトマネジメントおよび内製化の支援を行なっています。個々のスクラムチームは自律的に活動ができているものの、経営層からはバラバラに動いているように見えてしまうため、それらを分かりやすくまとめる活動を行っています。ご相談いただく中では、デジタル人材の内製化を進める際の評価制度やスキル体系の見直しに関するものも含まれています。この場合、スキルに合わせて、評価制度と整合性が取れるように区分や段階分けを再定義する必要性があります。これが、前述の課題で取り上げた「やり方を変える」部分に関わります。特に難しいのは、今まで社内になかったロールをどのように評価して、さらには育成していくかであり、クライアントとともにチャレンジを行っています。

PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 髙澤 良輔

PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 髙澤 良輔

川俣:
私も必要なスキルの選定や、組織文化の醸成に向けて、クライアントと相談しあいながら、プロジェクトを進めています。その中で、全社員が納得できる仕組みを作る難しさを感じているのですが、その点を髙澤さんはどのように進めているのでしょうか。

髙澤:
私の場合、重要になるのは「伝える人」、つまり中間管理職の方々の役割だと考えています。現場で成果を上げ、実務者として実績を積んだ結果として管理職に就く方が多いですが、マネージャー業務はそれまでの実務とは大きく異なり、ある意味でジョブチェンジと言えるほど実務内容が変わります。1からマネジメントの勉強をしなければならないにもかかわらず、多くの企業で管理職としてのマネジメントスキルに関する教育体制が整備されていないケースが目立ちます。ベースのマネジメントスキルを学ぶことと同時に、アジャイルのような適応型のマネジメント手法も新たに学ぶ必要があります。具体的には、計画との乖離は失敗ではなく学習の機会として捉え、計画を常に見直し続けるスタイルです。管理職がこれらの考えを理解していないと、評価を受ける従業員に対して納得のいく説明をすることは困難です。そのため、こういった伝える人の育成も、DX推進における大事なファクターとして捉えています。

塩野:
髙澤さんのお話のとおり、伝える人である管理職の役割は極めて重要ですね。特に、管理職の現場への関わり方として、多くの企業にて実施されているコマンド&コントロール型のマネジメントから、コーチングを主体として現場メンバーの自律性と自主性を引き出し、それを支えるサーバントリーダーシップへのマインドチェンジが不可欠です。現場メンバー自身でゴールを設定し、その達成に向けて対話を通じて活動を支援することで、評価に対する納得感も大幅に高めることができます。そのため、組織へのアジャイル導入の際には、管理職を含めた体系的な教育プログラムの整備を重要な観点として捉え、支援しています。

クラウド利用の高度化を図るソリューションークラウドトランスフォーメーションー

川俣:
次にクラウドトランスフォーメーションですが、どのようなソリューションを提供しているのでしょうか。

岡田:
クラウドと言うと、特定のクラウドに関するシステム導入や移行をイメージするかもしれませんが、私たちが提供しているのは、クラウド(最新技術やそれに関連する考え方)を活用して企業のやり方を変革するソリューションであり、それに主眼を置いています。

具体的には、モダンエンジニアリング、自動化、ガバナンス整備などを通じて、効果的なクラウド活用を推進していきます。例えば、自動化について言えば、ITインフラ構築のコード化による環境調達リードタイムの短縮、運用業務のコード化による運用コスト最適化、SRE(Site Reliability Engineering)の考え方を適用していくことによる運用業務の近代化や人材育成などを行っています。これはDXを新技術導入で完結させず、クラウドを起点にしながら経営視点での変革を促進することが背景にあるからです。

昨今では、製品のソフトウェア化やコネクテッド化などが進み、ITに求めるサービスレベルが格段に向上しています。その一方で、技術の進化に伴ったSaaS(Software as a Service)やPaaS(Platform as a Service)、生成AIの普及により、システム運用はさらに複雑化してきています。このような状況下、デジタル技術を用いたサービス開発の前線にいる開発者が、安全かつ迅速な開発を可能とするようなデジタルプラットフォームの構想や、レガシーなIT運用の近代化を支援しています。

塩野:
ここで重要になるのは、IT組織全体が提供者視点に陥ることなく、従業員や開発者といったプロダクト・サービスのユーザー視点を徹底的に持つことです。例えば、デジタルプラットフォームを構想する際、将来使うかもしれないといった憶測で過度な機能を具備してしまい、利用者が使いこなせず無駄な投資になってしまうことも少なくなりません。そのため、IT部門全体でDXの前線にいるデジタル人材のニーズを理解するとともに、継続的に改善する仕組みづくりを行うことが肝要です。なお、この際、私たちの支援が終わった後にも継続的に改善していけるよう、伴走型でスキル育成や仕組み化を進めることを大切にしています。

また、昨今は生成AIの発展も目覚ましく、これがユーザー視点の重要性をさらに高めています。生成AIによってコード生成やプロトタイプ作成の難易度が低下した結果、競合他社でも開発スピードが上がり、類似プロダクトが短期間で市場に投入されるようになりました。そのため、単に機能を提供するのではなく、ユーザーにプロダクトを使い続けてもらうための工夫と努力がより重要になっています。こうした変化に対応するため、プロダクトを中心に据えて、リリース後もユーザー視点で継続改善を行うプロダクトマネジメントが求められていると考えています。

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 塩野 正浩

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 塩野 正浩

川俣:
生成AI時代にユーザー視点がより重要になるということですね。このような変革の活動は、社外の立場では困難な点もあると考えます。支援のポイントはどのようなところなのでしょうか。

岡田:
そうですね。企業によって根付いている文化はさまざまですから、私たちが一方的に解決案を提示するだけでなく、一緒に答えを考え、相手から課題と解決への道筋を引き出すことが重要であると考えています。例えば、検討の初期段階では、経営層を含めたリーダーの方々との議論を合宿形式で何度も行ったことがありました。実行フェーズでは伴走支援と同時に、クライアントの現場レベルの方々が自分ごとにつなげられるよう、1on1でのコーチングを行うこともあります。時には意見がぶつかることもありますが、納得を大切に、対話を重ねながら進めていくことを意識しています。

また、新しい取り組みを企画したとしても、現行業務に追われて新しい取り組みに割く時間が確保できないという課題に直面する企業も少なくありません。そのため、業務自体の削減や、徹底的な自動化による定常業務の工数削減、組織運営の改善などにより、新しい施策にリソースを集中できる環境を整えることも支援の重要なポイントです。

Digital Process and Platform CoEの魅力―特長と育成―

川俣:
DX支援として、アジャイルやクラウドを軸としたソリューションは市場に数多く存在している認識です。本チームとしての強みはどのようなところでしょうか。

岡田:
まず、アジャイルやクラウドと言うとテクノロジーにフォーカスしていると捉えられがちですが、組織・人材・プロセスへの変革までフォーカスした伴走型支援を提供している点は大きな特長であり、強みだと自負しています。

加えて、Industrial transformation(IX)内の組織として、ビジネスのプロフェッショナルと密に連携したアジャイル活用やクラウド活用は私たちの特長の一つと言えるでしょう。

髙澤:
ソリューションそのものの魅力だけでなく、事業会社やスタートアップ、SIer出身者、コンサルティング会社など、多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成されている点も特徴です。それぞれが業務経験を生かしながら、新しい分野にも積極的にチャレンジしていますし、組織としてチーム内の育成にも力を入れている点は魅力であると考えています。川俣さん、塩野さんから見たDigital Process and Platform CoEの魅力や特長はどんなところですか。

川俣:
一番の魅力は、新しいことやチャレンジングなことに対する受容度が高いところだと思います。例えば、直近ではチーム内の組織運営にアジャイルな働き方を適用しました。チーム内の全てのタスクをバックログで管理する方針とし、1カ月単位でタスクの振り返りや次のスプリントに向けた計画をチーム全員で行う運用に変更しました。これまでのチーム内の活動管理方法が大きく変わる出来事でしたが、自分たちがアジャイルを率先して実践していく、という思いの下、日々試行錯誤しながら運用方法をアップデートしています。

個人としても、挑戦してみたいと声を上げたことに対しては、裁量権を持ってチャレンジできる環境が整っています。実際に社内ポータルサイトの刷新活動に手を挙げた際には、塩野さんと私を含めた3人のメンバーで戦略設定から実際の刷新、その後の社内へのナレッジ共有活動まで任せてもらえました。このように、新しいことへの受容度が高く、若手でも裁量権を持って取り組める環境は、自分自身の成長にも大きくつながっていると感じています。

PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 川俣 友

PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 川俣 友

塩野:
私もチームにおける社外向けマーケティングの活動を主担当として裁量高く取り組んでいます。チームの社内・社外向けウェブサイトの刷新活動や外部イベントに出展する際の現場メンバーのリードを務めるなど、挑戦することへの受容度は高いと感じます。

川俣:
活動する上での心理的安全性が高いところも魅力の一つです。現在参画しているプロジェクトでは、参画時にワーキングアグリーメントを設定したり、日々の活動に対する定期的な振り返り活動を実施したりしています。これによって、自分が働きやすい環境を主体的に選択することや、日々感じていることをチームメンバーに共有する機会が与えられており、心地よく働くための仕組みが整っていると感じています。

塩野:
私もその点は強く感じています。心理的安全性が高いことで、チームとして高いパフォーマンスを発揮し続けることができていると思います。

Digital Process and Platform CoEが目指す今後の展望

川俣:
今後取り組みたいことや、チャレンジについて教えてください。

左から髙澤 良輔、塩野 正浩、岡田 裕、川俣 友

左から髙澤 良輔、塩野 正浩、岡田 裕、川俣 友

塩野:
ユーザーに選ばれ続けるプロダクトやサービスを生み出すためのプロダクトマネジメントに、より力を入れていきたいです。プロダクトやサービスを提供する際にはどうしても提供者視点が前面に出がちですが、徹底的にユーザー視点に立ち、単に機能を作るだけでなく、継続的に価値を届け続けることを大切にしていきたいです。クライアントだけでなく、開発者や従業員も含めたサービス利用者のニーズを捉えて継続的に改善していく、その知見を積み重ねてソリューション開発にも還元していきたいです。

髙澤:
アジャイルと言うと、ウェブの小規模開発向けで、基幹系システムのような大規模には向かないと思われています。まずはその認識を変えていきたいですね。さまざまなプロジェクトが進んでいく中で、アジャイルでやる理由を説明するのではなく、アジャイルでやるのが当たり前となり、アジャイルでやらない理由を探す世界を作りたいです。これは、システム開発だけでなく、組織のあらゆるオペレーションにも通ずると考えています。そのため、ソリューション開発やメンバー育成を推進するだけでなく、世の中への情報発信も積極的に行っていきたいと考えています。

岡田:
そうですね。私たちチームは、アジャイルとクラウドの知見を軸に、企業の俊敏性と弾力性を向上させていくことを目的としています。今後は、IX内のインダストリーの専門家と連携しながら、ソフトウェアプロダクトやサービスの開発プロセスの変革を支援し、企業のイノベーション創出を図っていきたいです。

また、私たちはクライアントのDXを支援していく立場でありながら、自分たちをDXの実験室として捉えています。そのため、先進的なソリューション開発や組織運営に積極的にチャレンジし続けていきたいです。その挑戦が、クライアントにより良い価値を提供する原動力になると信じています。

川俣:
実は私がこの部署を希望した理由の一つが、Digital Process and Platform CoEが掲げるミッションと、そのミッションを実現するために自らが実験台となって取り組む姿勢に強く引かれたからでした。本日は大きなモチベーションになりました。ありがとうございました。

※1 2024年DX意識調査 - ITモダナイゼーション編 -
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/it-modernization-survey2024.html

登壇者

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター 岡田 裕
外資系パッケージベンダー、日系コンサルティング会社を経て、PwCコンサルティングに入社。一貫してITを軸としたコンサルティングに携わり、戦略から実行に至るまでのプロジェクトデリバリーを数多く実施。現在は、UXデザイン、アジャイル、クラウドを活用したデジタルトランスフォーメーションを推進するコンサルティングに従事。

PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 髙澤 良輔
新卒でPwCコンサルティングに入社。DX戦略策定、IT/デジタルに関する組織変革、デジタル人材育成、デザイン思考/仮説検証型の新規サービス創出支援など、デジタルトランスフォーメーションを推進するコンサルティングに従事。

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト 塩野 正浩
新卒でPwCコンサルティングに入社。クラウドインフラ共通基盤の構想策定から設計・構築・運用設計まで一貫したコンサルティングに従事。直近では、サービス開発ガイドラインの作成やアジャイルな働き方の実現支援、生成AIプロダクトの内製開発支援などのアジャイルやUI/UXに係るコンサルティングに携わる。

PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 川俣 友
新卒でPwCコンサルティングに入社。クラウドサービスを活用したシステム移行や、UI/UXデザイン関連のコンサルティングに従事。直近では、公共系のクライアントに対する主要クラウドサービスを活用したシステム標準化支援や、組織活動のアジャイル化およびコミュニケーション基盤改革の支援に携わる。

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