―メタバース×地方創生の挑戦―

「つながり」が生んだ、新たな観光体験

  • 2026-01-08

PwC Japan有限責任監査法人(以下「PwC Japan監査法人」)は、東日本大震災および原子力災害により大きな被害を受けた福島県12市町村での交流人口・関係人口拡大と域内消費拡大を通じた新たな需要・事業創出を目指し、国や自治体の事業を通じて支援を行っています。

今回、PwC Japan監査法人の有志メンバーの野田圭佑さん、原田莉奈さん、今井貴彬さんは、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というPwCのPurpose(存在意義)の下、テクノロジーと地域ニーズをつなぎ、誰もが地域の魅力に触れられる社会的価値の創出のため、福島県田村市の国指定天然記念物「入水鍾乳洞」をメタバース(仮想空間)に再現し、地域の特産品と融合した体験型コンテンツとして入水鍾乳洞公式ホームページに公開しました。

(左)鍾乳洞を3Dスキャンしている今井さん​(右)メタバース化した鍾乳洞の一部​

はじまり

今回の取り組みは、地域社会の課題解決と新たな価値創出に向けた共創の一環として、観光施設の認知度向上や実際の来訪促進(交流人口拡大)を目指すとともに、身体的な理由で現地訪問が難しい方や観光に関心のなかった層にも地域資源の魅力を届けるために始まりました。

原田:
福島県で観光振興の支援をしていた際に、一般財団法人田村市滝根観光振興公社さんとご縁ができ、「入水鍾乳洞という観光資源を、もっと多くの人に届け、実際の来訪につなげたい」というお話を伺いました。自分に何かできることはないかと考え、模索していたところ、メタバースに関心のある社内メンバーのことを思い出しました。

野田:
PwC Japanグループには、「Collective Impact Base」というプラットフォームがあります。個人が関心を持つ社会課題を持ち寄り、多様な専門性を持つ仲間とともに学び、体験し、解決策を模索する場です。最初は「メタバースで遊んでみよう」という軽い気持ちでコミュニティがスタートしましたが、原田さんが声をかけてくれたことをきっかけに、「新技術の専門性を身に付け、社会実装まで実現するレベルに到達する」という目標を持ちました。

今井:
私も最初は純粋な好奇心でした。しかし、技術を深めていく中で、地域の課題とつながる可能性を感じて、自然とプロジェクトにのめり込んでいきました。

メタバースで現実空間を再現する

今井:
入水鍾乳洞は「冒険心をくすぐる地底空間」といううたい文句のとおり、特別な体験ができる空間がいくつも存在しています。今回はその中から、特におすすめのスポットをメタバースで再現しました。

左から、「深水洞」、「胎内くぐり」、「かぼちゃ岩」(「入水鍾乳洞公式ホームページ※1」)

・深水洞:水深のある神秘的な空間
・胎内くぐり:狭い岩の間を通り抜ける冒険的なルート
・かぼちゃ岩:ユニークな形状が特徴の鍾乳

※1 https://www.irimizu.com

今井:
メタバースで再現された鍾乳洞の各所には、田村市に関連する特産品のキーワードが散りばめられており、ユーザーが探索しながらキーワードを発見していく、ゲーム性のある体験型コンテンツになっています。

原田:
楽しみながら地域の魅力に触れられる仕掛けです。福島県田村市の観光についてよく知らない方々にも、自然と興味を持っていただけるように工夫しました。ぜひ、このメタバース観光を体験し、ゲームの答えを見つけてみてください。

今井さんによる入水鍾乳洞メタバース空間制作風景

困難を乗り越えた先には

今井:
苦労はめちゃくちゃありました(笑)。地道な作業の積み重ねでしたね。メタバース開発プラットフォームで仮想空間環境の構築方法や3Dモデリングを一から学び、参考のために首里城のメタバース空間の探索もしました。また、この施策の狙いを理解してもらうために現地に足を運び、鍾乳洞を管理する田村市滝根観光振興公社の西山政義さんにも、実際にメタバースを体験していただきました。VRゴーグルでメタバースを体験した時の西山さんの驚いた表情は今でも忘れられません。「こういう技術が若い世代に刺さるんですね」と言っていただけたことも嬉しかったです。

原田:
観光施設側の理想と、技術的な実現性のすり合わせが大変でした。洞内の水の音やアバターのサイズ感など、メタバースチームとコミュニケーションを重ね、細部までこだわってブラッシュアップを行いました。こまめな進捗共有と現地訪問を通じて、信頼関係を築けたと思います。西山さんが「楽しみにしています」と声をかけてくださったことが、私たちの励みになりました。

野田:
ステークホルダーの理解と共感がなければ、ここまで来られなかったと思います。「ともに創る」という姿勢を持ち続けることが、信頼を築く鍵でした。

(左)完成したメタバースを見る西山さんと原田さん(右)膝下まで水につかり、鍾乳洞内部を撮影するメンバー

原田:
また、メタバース空間を実現するには、実際に洞窟内に潜って撮影しなければなりません。今回メタバース化したBコースでは、水位が最も深いところで成人の膝上ほどになり、加えてその水温は10度以下とかなり冷たく、撮影時は修行のような気分でした。

今井:
さらに空間自体も狭いため、撮影に必要な装備を持って洞内を移動するのも一苦労でした。

野田:
チームメンバーは本来の業務の合間を縫って活動しましたが、私はチームリーダーとして、技術と地域ニーズの融合を目指しながら、プロジェクト全体の方向性を整えることに注力しました。今回の経験を通じて、抽象度の高い業務要件を整理・具体化しシステムに落とし込む力がチームに浸透したと思います。また、お互いの領域に踏み込んで、状況や課題を理解し合うことで、プロジェクトが前に進んでいったと感じています。何より、信頼し合える仲間ができたことが、一番の成果ですね。

田村市滝根観光振興公社 西山政義さんからのメッセージ

入水鍾乳洞の出入り口に立つ西山さん

入水鍾乳洞は、A・B・Cコースのエリアに分けてお客様にお楽しみいただいております。Aコースは一般的な観光洞ですが、Bコースからはとても狭く足場の悪い洞内を約1,200メートル、1時間ほどをかけて進んでいただきます。進行には体力を要するため、体力に自信がないお客様、持病などをお持ちのお客様には不向きな観光地と言えます。

PwC Japan有限責任監査法人さんから洞内のメタバース化により、体験が難しいお客様への周知、サービス向上を旨としたご提案をいただき、製作から公開まで多くのお力添えをいただきました。今回の取り組みは、局所的ではありますが、このコンテンツを通じ、現地での体験が困難なお客様にも当入水鍾乳洞内の疑似体験をお楽しみいただけると幸いです。

メタバース体験者の皆さんの感想

同行者のお戻りを待つ方:
入水鍾乳洞の体験はできなかったけれどメタバースで疑似体験できたことは記念になって良かったです。

沖縄県に住む高齢者の方:
現地に行くのはすごく大変だけど、メタバースの体験や皆さんの経験談を通して入水鍾乳洞の雰囲気を感じることができました。時代の進化をとても感じます。

展示イベントで体験した方:
メタバース上でこんなにリアルに再現することができるんですね。鍾乳洞のイメージがつかめます。

VRゴーグルを装着した参加者の様子

これがゴールではない

今回の取り組みは、PwC Japan監査法人の有志メンバーが、福島県田村市の「入水鍾乳洞」をメタバース空間に再現し、地域の特産品と融合させた体験型コンテンツを通じて、「誰もが地域の魅力に触れられる世界」を目指した挑戦でした。

実際には、メタバースを公開してから3カ月ほどで累計閲覧数1,500超を達成、その中でも20名近くの方が実際の来訪につながっているとのことで、当初目指していた観光施設の認知度向上や実際の来訪促進(交流人口拡大)に寄与していると言えるのではないでしょうか。

プロジェクトを通じて、私たちはテクノロジーの可能性だけでなく、人と人とのつながりが生み出す力を改めて実感しました。現地の方々との信頼関係、社内メンバーの情熱、そして「やってみたい」という小さな好奇心が、2年という時間をかけて一つの形になったのです。このプロジェクトはゴールではなく、あくまでスタートです。今後も私たちは、地域とともに歩みながら、テクノロジーを通じて社会に価値を届ける取り組みを続けていきます。

平岩 久人(PwC Japan監査法人 パートナー):
本プロジェクトは通常の業務の中で、依頼されている業務以外のクライアントの課題にもアンテナを張って、課題を自分たちの内発的な取り組みと結び付けて実施した活動でした。若い職員が現場に落ちている課題を拾い上げ、自分たちの力で解決したことで、成長してくれたことを嬉しく思っています。

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