日本初のマイクロファイナンス機関「グラミン日本」とともに貧困のない社会の実現を目指す

2019-04-19

2018年に発足した一般社団法人グラミン日本(以下、グラミン日本)の理念に共感し、コーポレートサポーターとしてその事業運営に参画することになったPwCコンサルティング合同会社(以下、PwC)。グラミン日本の菅 正広 理事長と百野 公裕 理事をお迎えし、日本の社会課題に対する思いや、今後の活動に関するビジョンを語り合いました。

出席者プロフィール

■一般社団法人グラミン日本

理事長/CEO 菅 正広 氏
理事/COO 百野 公裕 氏

■PwCコンサルティング合同会社

テクノロジー/エンタテイメント&メディア/情報通信 統括
パートナー 安井 正樹

ディレクター 原田 雄輔
マネージャー 間世田 豪

収録日:2019年2月27日

社会課題の解決と経済的合理性を同時に実現する仕組みを考える

バングラデシュで誕生したグラミン銀行の日本版であるグラミン日本は、働く意欲があるにもかかわらず、苦しい生活を余儀なくされているシングルマザーやワーキングプアといった人たちに対して、低利・無担保で少額の融資を行っている、日本初のマイクロファイナンス機関です。

「貧困のない、誰もが活き活きと生きられる社会を実現したい」。
グラミン日本はそんな思いを形にすべく、2018年に発足しました。いわゆる「生活資金」ではなく、「起業や就労の準備のためのお金」を融資するのが大きな特徴です。従来のシステムでは融資の対象になり得なかった人たちが、貧困や生活困窮から脱け出すだけでなく、自立し、その生活を持続できるよう支援するのが狙いです。

安井 正樹/PwCコンサルティング合同会社

安井 正樹/PwCコンサルティング合同会社

グラミン日本の理念や事業について初めて耳にした時の印象を、PwCの安井はこう振り返ります。

「最初から、胸にストンと落ちる感覚がありました。それには二つの背景があって、一つは、世界で今起こっているグローバルメガトレンドが関係しています。PwCでは、『急速な都市化の進行』『気候変動と資源不足』『人口構造の変化』『世界の経済力のシフト』『テクノロジーの進歩』の五つを、社会のさまざまな課題の根底にある大きな変化――メガトレンドとして捉えています。この大きな潮流は、多くの企業に成長機会を与える一方で、さまざまな社会課題を顕在化させました。これからは、経済的合理性を追求しながら、同時に社会課題を解決することが日本企業にも求められていて、それはPwCが社会の中で存在価値を示していく上で重要であると、ここ数年来ずっと考えていました。

もう一つの背景は、われわれのクライアントである多くの日本企業が、生き残りをかけてさまざまなイノベーションに挑戦しながらも、非常に苦戦しているという現状があることです。その状況を打破するためには、社会課題という切り口が『よい触媒』になるのではないかと考えていました。つまり、社会課題をイノベーションを促す軸として捉え、その課題解決に本業を通じて取り組むことが、企業にとって活性化の起爆剤になるのではないかということです。

そのタイミングでグラミン日本の百野さんから、『いろいろな企業を巻き込んで、この活動を加速させたい』という話をいただきました。われわれがグラミン日本や他企業とともにこの活動に取り組むことで、社会により大きなインパクトを残すことができるのではと考えました」

日本の貧困課題について企業とともに考える、SDGsコンソーシアムを設立

「形だけの支援にしたくないと思っています。初めてグラミン日本の資料に目を通した時、バングラデシュでのグラミン銀行の活動を知って、思わず涙が流れました。普段、理詰めで左脳をフル回転させて働いている身としては、これは驚くべき体験でした。このことから、多くの企業を巻き込んでいくためには、まずは企業の経営層が、『衝撃』や『感動』を味わう機会を作り出すことが重要だと考えるようになりました」と安井は述べています。

2019年1月、PwCはグラミン日本とともに、貧困の解決に向けてアクションを起こす共同事業体「SDGsコンソーシアム」を設立しました。SDGs(持続可能な開発目標)がまず掲げている目標は、「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」ことで、グラミン日本の理念と一致しています。また貧困は、SDGs内の目標(1.「貧困をなくそう」)だけでなく、他のさまざまな課題とも関連しており、原因の解消と並行して、その影響を低減することが必要です。そこでグラミン日本とPwCは、SDGsの名を冠したコンソーシアムを立ち上げ、企業の持つさまざまな知見を生かし、日本の貧困の構造的課題や、企業が貧困の解決に取り組む意義などについて議論する場を設けることにしました。

菅 正広 氏/一般社団法人グラミン日本

菅 正広 氏/一般社団法人グラミン日本

日本は先進国とされていますが、厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2016年度)によると相対的貧困率は15.7%とされ、国民の6人に1人が貧困ライン以下での生活を余儀なくされているという計算です。グラミン日本の菅 氏は「貧困はなかなか表に現れにくく、人や地域によってその考え方に大きなギャップがありますが、格差は日本でも徐々に拡大しており、明日はわが身の問題と言えます」と語っています。

PwC SDG Reporting Challenge 2017[English][PDF 6,263KB]によれば、17の目標のうち、市民が重要と考える目標と企業が重視する目標には乖離がある、という結果が出ています。そのうちの一つである貧困問題は、行政や企業、市民が一丸となって取り組むべき大きな課題ですが、調査結果を見ると、市民が高い関心を示す一方で、企業の関心は低くなっています。これは、貧困をめぐる大きな課題の一つと言えるでしょう。

貧困問題は市民が高い関心を示す一方で、企業の関心は低くなっています。

菅 氏は「このようなギャップが今回のコンソーシアムの場を通じて埋められていくとともに、これからは貧困の問題に取り組むことが自社のビジネスチャンスにもつながる、という認識を多くの企業に共有していただけることを期待しています」と述べています。

また、グラミン日本で理事を務める百野 氏も、SDGsコンソーシアムの手応えを次のように語っています。

「企業の方に現状を説明し、貧困問題をともに解決していきましょうという話をすると、総論では大抵の方が賛成してくれます。しかし、具体的なアクションを起こす段になると、何をしてよいか分からないという反応がほとんどです。そのためわれわれとしては、まず思いを同じくする人たちが集い、アクションを起こしていくための枠組みを創り、その後に続く人たちが『ここに入れば大丈夫』と思えるものを早急に立ち上げたいと考えていました」

貧困の現状を共有し、ともに解決する体制を創る――。このような思いのもと、グラミン日本とPwCは2019年1月28日、第1回SDGsコンソーシアムを開催しました。

「当日は66名にご参加いただき、貧困の現状と、解決に向けた活動の内容を紹介することができました。これはわれわれにとって大きな成果だと感じています。PwCの皆さまには、コンソーシアムの立ち上げに際してさまざまなバックデータとプロの情報分析力を提供していただきました。それによって実効性が高い枠組みを構築できたことに、大変感謝しています」と百野 氏は語っています。

百野 公裕 氏/一般社団法人グラミン日本

百野 公裕 氏/一般社団法人グラミン日本

グラミン日本とPwCがこれから目指していくもの

「大きく考えて、小さいことから始める」。

これは、グラミン銀行の創始者であるムハマド・ユヌス 氏がよく口にするという言葉です。最初から完璧を求めるのではなく、まずは小さく始めることが大事という教えですが、SDGsコンソーシアムもこの言葉にならい、小さなスタートを切りました。

「目指すゴールを思い描きながら、それを実現するための具体的なアクションを一つ一つ考えていく。これが自分たちの得意とするところだと思っています。グラミン日本が実現しようとしていることをいかに確実に前に進めるか、加速させていくかという部分で、これからも私たちの専門性を生かしていきたいと考えています」

そう話すのは、プロジェクトメンバーであるPwCの間世田です。

間世田 豪/PwCコンサルティング合同会社

間世田 豪/PwCコンサルティング合同会社

「既にいくつかの具体的なアクションプランを走らせていますが、中でも特に重要と考えているのが、少額融資をした後のサポート体制です。これがしっかり準備できていないと、仮に先進国である日本で20万円の融資を受けても、自力で貧困から脱却するのは難しいと思っています。今後は企業とのコラボレーションにもさらに力を入れ、起業ではなく就業を希望する融資対象者に対しても、収入の増加と生活レベルの向上を具体的にイメージできるステップを提案できるようにしたいと考えています」。

また、同じくコンソーシアムの立ち上げに携わったPwCの原田は、「グラミン日本の活動が今後も長く続き、そして大きく広がっていくためには、まず誰にとっても分かりやすい成功事例を作って、それを示すことが必要です。事例が一つでもあると、コンソーシアムのあり方が明確かつ分かりやすくなるはずなので、できるだけ早く、結果を出したいと思います」と決意を述べています。

原田 雄輔/PwCコンサルティング合同会社

原田 雄輔/PwCコンサルティング合同会社

「グラミン日本の目指す社会に共感し、参画する企業を増やしていくためには、これまでとは別のアプローチを取ることが重要です」と安井は述べています。

「企業にかかわりを促すためには、利益をしっかり追求する、マネタイズ戦略を考えることも大事です。すなわち社会貢献と利益のどちらか一方に肩入れするのではなく、両方を同時に実現する仕組みが重要なのです。今後は、周りから批判されたくない、競合に遅れを取りたくないなどの消極的な考えから貧困問題に関心を持とうとする企業についても、われわれならではの方法でアプローチしていければと考えています」。

今回のPwCの支援について、菅 氏は「大量のデータから有益な情報を取り出す洞察力や分析力で大いに貢献してくれたことに、たいへん感謝しています」と述べています。

「どういう視点から訴えかければ企業の協力を仰ぎやすいかといったアドバイスが、実績や経験に基づいているので、非常に参考になりました。こうしたコンサルタントとしての専門スキルをプロボノで提供していただけたことを、本当にありがたく思っています。

今日、特にうれしく感じたのは、安井さんがグラミンの活動内容を聞いて涙を流してくれたというお話です。支援に対するパッションが伝わってきました。PwCが掲げるPurpose(存在意義)にも“Trust”という言葉が入っていますが、グラミン日本のキーワードも『信頼』。信頼を大事にする者同士、この先もパートナーシップを通じてよりよい社会をともに実現していければと思います」。

主要メンバー

安井 正樹

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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原田 雄輔

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

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