3. 実態の可視化
上述の顧客基盤価値ツリーを可視化した後は、それをもとに構築された戦略・計画の進捗を把握する仕組みが求められます。
ここでのキーは顧客別ROI、顧客セグメント別ROIの把握です。実際にこれらを分析するとバラツキが大きいことが多く、赤字の顧客も存在します。どの顧客・顧客セグメントにどの程度の投資(ヒト・モノ・カネ・時間)をするのかを具体的データをもって議論することで「より良い顧客に経営資源をあてる(一層の成長を実現する)」「活動の質を高めリターンを大きくする(改善する)」といったことを目指します。
可視化にあたっては、「顧客別利益の把握・分析ツール」の構築・活用を行います。同ツールのダッシュボードでは、以下のような取り組みが可能です。
(1)貢献利益がどこからどれくらい作られているかの把握(HVC・戦略の検討)
現時点において、どの顧客、どのようなタイプの顧客から全社の貢献利益の何パーセントが作られているのかを把握する。また、それをHVCの定義・選定(顧客ターゲティング)やリソースアロケーションに活用する(図表4❶、❹、❺)
(2)顧客ポートフォリオの変化の確認と改善の検討
HVC(特にコア・候補)の顧客数および顧客あたりの貢献利益が計画通りに増加・向上しているかを確認し、適宜、必要な手を打つ(図表4❶、❷、❸、❼)
- 顧客タイプ・エリア・営業所等のカットでの分析も有用である
(3)リソースアロケーションの改善の検討
営業やマーケティングのリソース(ヒト・カネ)がHVC(特にコア・候補)に重点的に配分されているかを確認し、適宜、必要な手を打つ(図表4❶、❸)
- 投下資源が不足の顧客(機会損失)、過多な顧客(低利益率)が存在する
- 顧客化やアップセルの実現可能性が高い顧客へのフォーカスも有用である
(4)営業・マーケティングの戦略強化の検討
うまく貢献利益を伸ばせている顧客、伸ばせていない顧客を把握し、それらへの取り組みの差分等を分析することで後者の改善を図る(図表4❹、❺)
現在のペースでビジネスを成長させた場合の着地予測と計画値を比較し、ギャップが大きい場合は必要な取り組みを検討する(図表4❻、❼)
- 顧客ターゲティング戦略・ナーチャリング戦略等への取り組みも想定される
- 特に中期目標達成に向けた取り組みの検討の必要性に迫られることも多い
- ナレッジマネジメントの仕組みの構築も求められる