生成AIの進歩と普及は急激に広がっており、企業にとって生成AI活用は経営上の重要なテーマとなっています。社内向けの代表的なユースケースとして挙げられるのが、社内問い合わせチャットボットや社内検索ポータルです。こうしたツールを企業で導入する際には、社内の文書・ナレッジを参照して回答するRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)の活用が重要な役割を果たします。
しかし、RAGを「汎用サービス(クラウドサービスプロバイダーやパッケージベンダーなどが提供する生成AIアプリケーション)の標準機能の範囲」で設定するだけでは、自社の複雑な業務ルールや社内用語、独自のデータ構造を十分に反映することは難しく、精度向上や現場への定着に限界が生じやすくなります。文書を登録して検索できるようにするだけでは、個々のサービスの中での権限に基づいたアクセス制御や検索は行えるものの、「どの文書がどのように検索・利用され、それがどの回答文にどの程度影響したのか」といった一連のプロセスがブラックボックスになりやすく、具体的な改善策を打ちにくくなります。その結果、「概念実証(PoC)ではそれなりに動くが、本番では現場に浸透しない」という状況に陥りがちです。
このため多くの企業では、汎用サービスに頼るだけでなく、自社や部門の要件に合わせてRAG環境を個別開発するケースが増えています。個別開発を行えば、企業固有の業務フローやデータ構造に沿ったRAGを構築できるからです。その一方で、開発・運用コストが膨らむことや、システムが乱立してしまい、セキュリティや監査ログ、権限管理、全社横断でのルール整備や品質管理など、全社的なガバナンスが効きづらくなることがあります。
図表:汎用サービスを利用したRAGと個別に開発するRAGの比較
このジレンマを解消するアプローチが、「マルチテナント型RAG基盤」を中核とした共通プラットフォームです。
図表:マルチテナント型RAG基盤を中核とした共通プラットフォーム
1つの共通RAG基盤にベクトル検索、ドキュメント取り込み、権限管理、監査ログ、セキュリティ設定などのコア機能をまとめ、その上に部門別・プロジェクト別のテナントとしてRAG環境を切り出します。足元の基盤を全社共通のルールで管理しながらも、各部門が自身専用のRAG環境を基盤上に短期間で立ち上げることで、自部門のナレッジや業務ルールを組み込んだチャットボットや検索アプリが展開できるようになります。
システム管理者(情報システム部門・セキュリティ部門)にとっては、全てのRAG環境が1つのプラットフォーム上に載ることで、全テナントの利用状況・アクセス権限・監査ログを一元的にモニタリングでき、共通のセキュリティポリシーやガードレールを全テナントに一括適用できるというメリットがあります。
新たなユースケースが増えたとしても、同じ基盤の上にテナントを追加していくだけで済むため、個別案件ごとにインフラやセキュリティ設計をやり直す必要がなくなり、運用負荷とリスクを大幅に抑えることが可能です。
ユーザー部門や現場の利用者にとっては、一から基盤構築やセキュリティ設計を検討しなくとも、簡単な申請や設定で自分たち専用のRAG環境を持てることが大きな利点です。
自部門の文書・FAQ・業務フローなどを登録するだけで、各部門固有のチャットボットや検索アプリを早期に開発することができます。また全社共通の基盤上で動いているため、セキュリティや情報管理といった不安を抑えた上で日々の業務に組み込めます。
マルチテナント型RAG基盤は、汎用サービスの「スピードと手軽さ」と、個別開発の「業務適合性と柔軟性」を、プラットフォームとして両立させるアプローチです。一度共通基盤を構築すれば、2つ目、3つ目のRAG環境も同じ土台とルールの下で迅速に展開でき、全社的なナレッジの蓄積だけでなく、継続的な改善サイクルも回しやすくなります。
PwCコンサルティングは企業のニーズやあるべき姿を緻密にくみ取り、マルチテナント型RAG基盤の構想・設計・構築を支援します。
社内規程や業務プロセス、自社の用語体系に対応した共通基盤を整備することで、セキュリティリスクを抑えながらも、AIを全社的かつスピーディーに利用できる環境の実現を目指します。
また、RAGプラットフォームが継続的に活用されるためには、ユーザー視点での機能開発が不可欠です。多くの企業では提供者視点の機能開発に偏り、「導入したが使われない」という課題が発生しています。そこで私たちは、ユーザー調査を通じた利用者中心の開発を起点に、技術的な構想・設計・構築にとどまらない、実際の現場に定着した「使われ続けるシステムづくり」を支援します。
図表:マルチテナント型RAG基盤を活用したプラットフォーム構築のアプローチ
PwCコンサルティングでは人材育成プログラムも提供しており、リリース後も自社でシステムの開発・運用が継続できるよう、体制構築をサポートしています。これにより、「RAGの回答精度が上がらない」「現場の新たなニーズに対応しきれない」といった課題が発生した場合でも、社内で継続的に改善できる仕組みの下、企業の長期的な価値創出を支援します。
図表:PwCによる研修の概要
DXをテクノロジーの導入で終わらせない。アジャイルとクラウド活用によって、組織構造やビジネスプロセスの抜本的な"変革"を支援します。
不確実性が高まる経営環境においては「仮説検証を繰り返すアジャイルアプローチ」が求められています。PwCのアジャイル化推進支援は、伴走型でのトライアル&エラーで成功体験を積み重ねながら、クライアント企業独自のアジャイル文化の醸成と、ビジネスへの早期の貢献をサポートします。
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