日本企業のサステナビリティ開示とSASBスタンダード

ISSB/SSBJ基準への対応

-製品関連の指標について開示が進むも課題あり-

SASB基準の活用

63社(基準を活用)、38社(対照表を作成)

TOPIX100構成銘柄の企業(TOPIX100企業)のうちSASB基準を活用している企業は、63社となり、うち約6割に当たる38社がSASB対照表を合わせて作成していました。

マテリアリティ分析

76%→80%

SASB基準のインダストリー別開示トピックが、TOPIX100企業のマテリアリティ分析で重要と特定される割合は80%となり、昨年度の調査結果76%から4ポイント増加しました。

指標(メトリクス)の開示

50%→55%

TOPIX100企業が全面的もしくは部分的に開示しているSASB基準の指標は合計で55%となり、昨年度の調査結果50%から5ポイント増加しました。

サステナビリティ情報開示の進展

2022年7月以降、日本ではサステナビリティ基準委員会(Sustainability Standards Board of Japan:SSBJ)が設立され、IFRSサステナビリティ開示基準の内容と整合性のある国内基準の開発が進んできました。

2024年3月にSSBJが公表したサステナビリティ開示基準の公開草案では、IFRSサステナビリティ開示基準と同様に、SASB基準は「参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」情報源とされています。

本調査の目的は、TOPIX100企業の開示情報がSASB基準にどの程度適合しているかを調査することで、日本企業のサステナビリティ情報開示の現状と課題を明らかにすることです。

調査結果を通じて、現時点でSASB基準の観点から日本企業がうまく対応できている領域と、さらなる改善の余地がある領域を明らかにし、日本企業や投資家の、今後のサステナビリティ開示基準の進展への適応の一助となる情報を提供します。

主な調査結果

TOPIX100企業の63%がSASB基準に言及もしくは使用しており、そのうち約6割がSASB対照表を作成していた(詳細 第1章)。

今年度の調査結果では、SASB基準を活用している企業数は63社でした。SASB基準の活用方法について、 SASB対照表を開示している企業の数は38社となりました。調査を開始した一昨年度以来、いずれの数字も継続して増加しています。

図表1 SASB基準を活用する企業数の推多

TOPIX100企業のサステナビリティ情報開示において、 SASB基準の重要な指標に関する情報が増加した(詳細 第2章)。

今年度の調査結果から、SASB基準で定められているインダストリー別開示トピックの80%が、TOPIX100企業のマテリアリティ分析において重要課題と特定されていることが分かりました。また、全面的に開示されている、もしくは部分的に開示されている指標は合計で55%となりました。いずれも一昨年度の調査より一貫して増加しています。

一方、全く開示されていない指標の割合の高さから、「製品設計とライフサイクル管理」や「製品の品質と安全性」のカテゴリーに属する、製品関連の指標の活用に最も改善の余地があることも分かりました。

図表2 SASB基準で示された重要なサステナビリティ課題に関する情報開示状況

TOPIX100企業に十分活用されていない指標において、改善の取り組みの参考となるような、先進的企業の開示事例を把握、整理した(詳細 第3章)。

「製品設計とライフサイクル管理」や「製品の品質と安全性」をはじめとした特定のカテゴリーに属する指標には、特に活用の余地のあることが分かりました。

これら指標におけるSASB基準活用の先進的企業の開示事例を紹介します。事例には、指標の開示方法だけでなく、その背景にある指標を用いた実績管理や、実績管理の背景にある戦略・アクションプラン策定などに関する情報も含まれています。

インサイト/ニュース

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日本企業のサステナビリティ開示とSASBスタンダード ISSB/SSBJ基準への対応

-製品関連の指標について開示が進むも課題あり-

執筆者

田原 英俊

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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鈴木 邦宜

ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人

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吉田 憲司

マネージャー, PwC Japan有限責任監査法人

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船越 美紀

シニアアソシエイト, PwC Japan有限責任監査法人

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