
企業変革を実現する 人材ポートフォリオ・マネジメント戦略
本書は、経営戦略・事業戦略を実現するための最適な人材の構成を目指す「動的な人材ポートフォリオ」の解説書として、人材ポートフォリオ・マネジメントが求められる背景と全体像、方法論を体系的に詳説、実践企業事例も紹介します。(労務行政/2025年6月)
営業職員は不要になる。AIで最適な提案を出し、Web完結で保険契約を完了させる――。
生命保険の営業の在り方に関して、安易にそんな未来像が語られがちです。しかし、生命保険という商材を通じて長年お客さまと向き合ってきた業界関係者の方々からすれば、そう簡単に定説通りいかない難しさも感じているのではないでしょうか。だからと言って、既存の営業スタイルのままでよいわけでもありません。本レポートでは、生保業界の営業をどのように変えていくべきかについて示唆を示します。
長年の積み重ねで確立されてきた既存のスタイルを変えていくには、大変な労力と時間を要します。長い道中を迷わず進むためには、まず「なぜ」変わらなければいけないかを明らかにすることが第一歩でしょう。
Withコロナ時代に突入し、今後も職域への立ち入りや面談機会の確保は従前の水準ほどまでは回復しない難局が続くことが想定されます。とはいえ、シンプルに加入経路のオンライン化が進むかといえば、そう単純な話でもなさそうです。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、インターネットを通じての加入を「希望する」と回答した層は増加傾向にあり、2021年には17.4%に達しました。一方、「加入経路実績」に目を向けると、インターネットを通じて加入した割合は2021年で4.0%に留まっており、その割合は近年あまり増加していません。このギャップは、「加入検討初期段階ではオンラインで情報収集するものの、具体的に契約まで考え出す段階で面談を視野に入れる顧客層」が拡大してきていると言えそうです。これは、生命保険という難解で高額な商品において、人間による高度な説明と信頼関係の価値が今なお求められているためであると言えるでしょう(図表1)。
逆に言えば、将来AIなどのデジタルのみを活用した手法で、これまで人間が担ってきた高度な説明と信頼関係の価値を上回るクオリティが実現すれば、話は変わってきます。昨今話題になっている進化した言語生成AIの精度や、保険業界にも登場したアバター相談サービスなどを見ると、そう遠くない未来にデジタルだけで人間を超えるハイタッチエンゲージメントを体現できる姿も現実味を帯びてきています。そのシナリオで進んだ場合、「インターネットを通じて加入を希望する」と回答した層は、一気に購買行動のオンライン化が進む可能性も大いにあるでしょう。
そもそも「生命保険の必要性を感じない」と考える消費者が増加しています(図表2)。さらに、消費者の保険に対する財布の紐は堅くなっており、「支払ってもよいと考える金額」は年々下がっています(図表3)。
保険に対する財布の紐が堅い中、そもそも消費者のKBF(Key Buying Factor)は、「商品要因」(自分に合った商品だったからなど)が最大になっており、その割合は年を追うごとに高くなっています(図表4)。これは、「真に自分に必要なリスクに最低限だけ加入したい」という意向が強くなっていると解釈できそうです。逆に、社名ブランドや営業職員の提案力による強みで選ぶ消費者は減少傾向にあります。
これらを踏まえると、これからの保険募集においては商品戦略も切り離して考えることはできません。これからの消費者を加入に導くためには、多様化するライフスタイルに対応し、「これがあなたにとって真に必要な保障であり、最低限の保険料負担で提案しています」という納得感を引き出せる商品力を保持する必要がありそうです。
経済リスク対処の私的準備として、消費者が自発的に想起する手段が「保険」ではないケースが多くなっています。例として、近年ニーズが高まっている介護保障への準備として、消費者が想起する手段は保険ではなく「預貯金」が最上位であり、「有価証券」と回答する層も相応の割合になっています(図表5)。
同様に、消費者が保険会社に対して求めることも、「保険」の枠を越え始めているようです。生命保険だけではなく「生活設計全般に対する相談にも対応してくれる会社を評価する」と答える層が着実に増えてきています(図表6)。旧来の面談中心による募集スタイルにおいては、ニーズが潜在的なお客さまに対して「保険」のニーズを丁寧に喚起して加入に導くことが可能でしたが、Webで情報収集する消費者にとってはリスクヘッジ手段に業界の垣根はありません。多様なニーズに「保険だけ」で応えるのは無理が出てきそうです。
前章までの内容を鑑みれば、少なくとも当面は従来型のヒトがニーズ喚起から成約までを一気通貫で対応する営業スタイルは残り続けるでしょう。ただ、そのスタイルでは満足を得られない、以下の特徴を持つ顧客層が存在し、かつ今後も増えていくと想定できます。
この新しい顧客層に向き合うために、従来の営業スタイルとのギャップを埋めていくための変革のコンセプトはそれぞれの特徴に応じて3つの方向性が考えられます。
これまでの内容を図表7に整理します。
まずは、現在および将来のターゲット顧客層に対してより深く理解し、現状の自社のチャネルアーキテクチャを適切に評価する必要があります。Webからのリード獲得比率はどの程度か、商品開発~投入のリードタイムは長すぎないか、保険以外のタッチポイントからリード獲得ができているかなど、3つのコンセプトごとの打ち手の網羅性や成熟度を確認し、それらが今後の消費者の満足を得られる水準に達しているか直視することが第一歩となります。既に取り組んでいる領域においても、その成果が十分ではない場合は、何が不足しているのかを特定し、対策を検討する必要があります。
その上で、各社の事業特性を踏まえて、取り得る打ち手の優先順位や必要な取り組み深度を定め、ユニークな競争優位性の構築手段を模索しなければなりません。将来の最適なプロダクト/チャネル/カスタマーミックスを定義し、ギャップ評価、移行計画策定、実行へと移していきます。また、各方策を実行していくにあたっての課題を整理し、必要なリソース・ケイパビリティを十分に保持できているかを整理すべきでしょう。
これまで生命保険業界が長年の努力で作り上げてきた対面販売モデルは非常に強固であり、大変優れたものであるがゆえに、今なお業界の中心であり続けています。しかし、強固だからこそ作り替えていくには相応に長い時間を要することになるでしょう。今はまだ販売実績に深刻な影響が出ていなかったとしても、消費者や環境の変化を直視して早期に変革に着手していくべきだと考えます。PwCコンサルティング合同会社としても保険募集の変革を全力で支えていくべく、必要なケイパビリティを高めて支援に取り組んでいきます。
本書は、経営戦略・事業戦略を実現するための最適な人材の構成を目指す「動的な人材ポートフォリオ」の解説書として、人材ポートフォリオ・マネジメントが求められる背景と全体像、方法論を体系的に詳説、実践企業事例も紹介します。(労務行政/2025年6月)
新しいリーダーシップのあり方として注目される「場のリーダーシップ」について、その理論と実践に詳しい武蔵野大学の中村一浩准教授とPwCコンサルティングのメンバーが話し合いました。
トランプ米国大統領の就任以降、DEI(多様性・公平性・包括性)への取り組みの見直しや縮小の動きがみられます。「DEIバックラッシュ」と呼ばれる反DEIの動きに対し、日本企業がどう向き合い、どう対応すべきかについて考察します。(日刊工業新聞 2025年3月27日 寄稿)
「日本企業における今後の生産性改革の在り方」をテーマに、生成AI活用や日本企業における新たな働き方について、日本マイクロソフト株式会社のエグゼクティブアドバイザー小柳津篤氏とPwCコンサルティングのディレクター鈴木貞一郎が語り合いました。
東京大学とPwC Japanグループは未来を創出する経営人材育成を目的に全国の大学の学部生・大学院生を対象にサマープログラムを実施しています。2025年度は受講対象を「全国の大学の学部生・大学院生」へと拡大しました。ビジネスとテクノロジーの双方について理解しながら、ビジネスアイデアを企画・推進し、企業を目指すための力を一緒に学べる講座です。 申込期限:2025年7月31日(木)※2025年7月24日(木)14:00までにID登録が必要です。
PwCコンサルティング合同会社は5月30日(金)より、表題のセミナーをオンデマンド配信します。
PwCコンサルティング合同会社は、2025年3月5日(水)に配信した本セミナーを、3月12日(水)よりオンデマンドで配信開始します。
PwCコンサルティング合同会社は3月10日(月)より、表題のセミナーをオンデマンド配信します。セミナーの最後に無償トライアルのご案内があります。