サプライチェーンの経営幹部は地政学的リスク、気候変動、コスト増加やインフレ、そしてESGコンプライアンスに対する政府の要求の高まりなどあらゆる面で深刻な課題に直面しています。また消費者は、企業が環境や社会への取り組みを強化し、同時に高品質・低価格の製品を提供することを望んでいます。このような破壊的なトレンドによって、新たなサプライチェーンモデルや競争力のあるエコシステムが生まれつつあります。世界的な人材不足と急速な技術進歩により、状況はさらに複雑化しています。そこで私たちは、これらの課題を6つのトレンドに整理しました。
サプライチェーンの重要なトレンド
サプライチェーンの経営幹部は積極的な変革の計画を立てていますが、それを完全に実行できているのはチャンピオンに属する一部の企業だけです。これらの業界リーダーは、総合的かつ統合的なアプローチ手法を採用し、利害関係者とともに共通の課題に取り組み、経済成長を促進するために、透明性と生産性の高い取り組みを行っています。チャンピオンは他の企業と比べてエコシステムに参加している割合が3倍も高く、変化する顧客の要求や規制に対応するためにビジネスモデルを適応させています。チャンピオンはすでに重要な機能や技術を導入しており、19%のサプライチェーンコスト削減と、16%の収益増加を予想しています。
成熟度評価
急速なテクノロジーの進化により、サプライチェーンに大きな混乱がもたらされると同時に、新しい機会も生まれています。企業は技術を導入することで、データの可視性向上、業務プロセスや意思決定の自動化、コミュニケーションや連携の強化を行い、バリューチェーンの持続可能性と強靭さを得ることができます。変革をもたらす5つの主要な技術が挙げられています。
度重なるサプライチェーンの断絶は、ニューノーマルとなっています。適応性、持続可能性、そして認知を念頭に置いて、バリューチェーン全体を再構築するための措置を講じる必要があります。競争優位性を保つための近道は存在しません
Stefan SchraufPwCドイツ EMEA Operations LeadPwCは、欧州、中東・アフリカ、北米、中南米、アジア太平洋の28カ国にある企業の上位経営層に対して2023年12月から2024年2月の間に実施した1,000件以上のインタビューからなる定量的調査を行いました。本調査の回答対象者の多くは、各企業のサプライチェーン担当経営層です。対象企業は、小売・消費財、自動車、プロセス産業、医薬品・医療技術、電子機器、工業用製品・装置の6つの業界のいずれかに属しています。
あらゆる企業が、サプライチェーンの変革に対して戦略的かつ包括的なアプローチを取る必要があります。近年、地政学的な対立、貿易紛争、自然災害や人為的災害、持続可能性の課題、技術の急速な進展など、さまざまな要因がサプライチェーンに大きな圧力をかけています。これらの要因に対応するためには、適応性、持続可能性、利害調整能力を備えたサプライチェーンの構築が不可欠です。
調査によれば、サプライチェーンを完全に変革した企業はわずか8%に過ぎませんが、これらの企業は明確なビジョン、ロードマップ、目標を持ち、リソースとスタッフの賛同を得て計画的に取り組んでいます。日本企業も同様に、サプライチェーンの透明性と回復力を高めるために、リスク管理と回復力のフレームワークを導入し、サプライヤーとの協力関係を強化することが求められます。
日本企業の特徴として、品質管理の徹底、綿密な計画性、そして長期的な視野に立った経営が挙げられます。これらの強みを活かしつつ、サプライチェーンのデジタル化とESG(環境・社会・ガバナンス)対応を進めることが重要です。特に、エンド・ツー・エンド全体の可視性と透明性を高めるための技術投資や、サプライヤー、輸送業者、顧客・消費者などとの緊密な連携が求められます。