
LIBOR移行対応アップデート―ハイライト(2022年6月1日~7月15日)
今号ではFRBが公表したLIBOR法の施行案、英国FCAによる英ポンドシンセティックLIBORの公表停止時期にかかる市中協議のほか、米ドルシンセティックLIBORを巡る議論について取り上げます。
LIBOR |
テナー | パネル銀行呈示義務終了日 |
シンセティックLIBOR公表開始・終了日¹(予定) |
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期日 |
恒久的停止/代表性喪失 | 開始 | 終了² | ||
CHF |
全て | 2021年12月31日 | 恒久的停止 | 該当なし | |
EUR |
全て | 2021年12月31日 |
恒久的停止 | 該当なし | |
GBP |
翌日物、1週間、2カ月、12カ月 | 2021年12月31日 |
恒久的停止 | 該当なし | |
1カ月、3カ月、6カ月 |
2021年12月31日 |
代表性喪失 |
2022年1月1日 |
2031年12月31日3 |
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JPY |
翌日物、1週間、2カ月、12カ月 |
2021年12月31日 |
恒久的停止 |
該当なし |
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1カ月、3カ月、6カ月 |
2021年12月31日 |
代表性喪失 |
2022年1月1日 |
2022年12月31日 |
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USD |
1週間、2カ月 |
2021年12月31日 |
恒久的停止4 |
該当なし |
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翌日物、12カ月 |
2023年6月30日 |
恒久的停止 |
該当なし |
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1カ月、3カ月、6カ月 |
2023年6月30日 |
代表性喪失 |
2023年7月1日5 |
2033年6月30日3,5 |
1. 今後のFCAの協議が前提
2. 各LIBORテナーは、シンセティックLIBORの公表終了後、恒久的に公表停止
3. FCAは、年1回の見直しを条件に、10年を上限としてシンセティックLIBORの公表を強制する権限を認められている
4. ISDAフォールバックでは、2021年末から2023年6月30日までの間、計算代理人が線形補間を用いて1週間および2カ月の米ドルLIBORテナー値を算出し、(ターム)調整後RFRにスプレッド調整を加えた値にフォールバックする
5. FCAは、英国のベンチマーク規制(BMR)で提案されている権限を行使し、2023年6月30日以降も、シンセティックベースの1カ月、3カ月、6カ月の米ドルLIBORテナーの公表継続を要求するか「検討する」と述べている
一部の LIBOR テナーの代表性喪失が公表されたことで、当該テナーに関し「シンセティック(合成)」ベースの LIBOR、つまりパネル銀行の呈示に依存しない計算ベースのLIBORによる公表継続の道が開かれました。FCAはシンセティックLIBORについて、フォワードルッキングなターム物リスク・フリー・レート(RFR)をベースに、LIBORとターム物RFRの経済的差異を反映したスプレッド調整値を加算した計算ベースの手法を基礎とする意向を示しています。併せてFCAは、2021年12月31日以降、英ポンドおよび日本円LIBORの1カ月、3カ月、6カ月のテナーの公表を(IBAに)要求するかについて、2021年中に協議を行うと発表しました。なお、シンセティックベースの1カ月物、3カ月物、6カ月物米ドルLIBORの公表可能性については未定ですが、今後FCAにて検討されることになります。
2017年7月、当時のFCA長官Andrew Bailey氏が初めて、金利指標としての適格性を疑問視されていたLIBORの今後について指針となるスピーチを行ってから、約4年が経過しました。Bailey氏が2021年末以降LIBORが公表される保証はないと警告したことを受けて、世界中の市場参加者、業界団体、監督当局はLIBORの公表停止に向けて準備を進めてきました。そして今、その可能性がついに現実となりました。
市場参加者はこれまで一貫して、公表停止期限や公表停止のスケジュールが明確になっていないことをLIBOR移行の大きな障害として挙げてきました。しかし、今回の発表により、LIBOR 公表停止の全体スケジュールと主要なメカニズムが確認されたことで、これまで意思決定を先延ばしにしてきた企業は、必要な行動を起こすことができるはずです。
重要な留意点:
LIBORの終焉に関する報道は決して大げさではない。
企業のLIBOR移行における取り組みの中核となるのは、次の2点です。
1)代替金利指標に基づく新商品の開発・発行
2)LIBOR参照の既存契約の修正
1)代替金利指標に基づく新商品の開発・発行には、代替金利指標、具体的にはRFRを参照する取引を行うシステムとプロセスを確立する必要があります。多くの金融機関は、これに加えてサードパーティが提供する既存のソリューションに必要な変更を理解・管理することも求められます。また、代替金利指標を参照する商品のプライシングや取引をサポートするために必要なモデルの作成、修正、テスト、文書化、検証を管理するガバナンスプロセスを整備しなければなりません。
2)既存契約の修正には、既存契約や条項に関する正確な目録に加え、顧客やカウンターパーティへのアウトリーチやコミュニケーションを管理するフレームワークが必要です。多くの貸手が、複雑な契約を含む多数の契約の修正を、顧客関係を管理するリレーションシップマネージャーに委ねることを計画していますが、これはリソース上の大きな負担となるでしょう。このような場合、特に大規模な企業においてはテクノロジーの活用が有効です。契約管理、文書作成、ワークフローツールは、契約交渉や修正を容易にします。さらに、優れたナレッジサポート用のインフラは、リレーションシップマネージャーが自社の修正戦略をしっかりと理解した上で適用するのに役立ちます。シナリオベースの計算エンジンは、ローンやポートフォリオレベルでの金利シナリオと、関連する価値移転の影響に対する理解を促進します。契約を修正する際には、企業は下流工程の会計および税務上の影響を認識し、適用される可能性のある救済措置に注意を払う必要があります。
積極的な修正であれ、フォールバック条項への依存であれ、企業は移行作業を運用・管理する準備もしておかなければなりません。そのためには、LIBOR公表停止に先立ち増加する契約変更や借り換え、それに伴う業務、契約、会計、税務報告への影響を管理することが求められます。また、フォールバック条項に依存する場合には、大量の契約変更をプログラムで処理するよう検討したり、そのようなポジションのフォールバック条項の全ての組み合わせを網羅したり、多くの企業がシステムへの大幅な変更を回避しようとする時期である年末にかけてこうした変更対応を実施したりといった、多大な努力が必要となるでしょう。
※本コンテンツは、PwCが2021年3月に公開した「Six key takeaways from FCA and IBA’s announcement on LIBOR cessation」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
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今号では米国財務会計基準審議会が発表したLIBOR移行ガイダンスの「サンセット日」を2022年12月31日から2024年12月31日に延長し、ヘッジ関係で使用できる金利指標のリストを修正し、SOFRに基づく金利を追加する提案の公開草案について取り上げます。
今号では米国におけるLIBOR法案の可決と、米国フェデラルファンド(FF)金利の引き上げによるSOFRレートの動き、ISDAのイベントにて業界関係者より発信された米ドルLIBORの公表停止に向けた対応などにかかるコメントを取り上げます。