LIBOR公表停止にかかるFCA/IBAの発表の6つのポイント

2021年3月5日、金融行為規制機構(FCA)は、LIBORの恒久的公表停止および代表性喪失に関する発表を正式に行いました。今回の発表は、LIBORの運営機関であるICE Benchmark Administration(IBA)の市中協議の結果が公表され、IBAの公表停止に向けたプランが確定したことを受けて行われたものです。FCAの発表には、以下の表に示すとおり、全35のLIBORのテナーの将来の恒久的公表停止または代表性喪失に関する宣言が含まれています。

LIBOR

テナー

パネル銀行呈示義務終了日

シンセティックLIBOR公表開始・終了日¹(予定)

期日

恒久的停止/代表性喪失 開始 終了²

CHF

全て 2021年12月31日 恒久的停止 該当なし  

EUR

全て

2021年12月31日

恒久的停止 該当なし  

GBP

翌日物、1週間、2カ月、12カ月

2021年12月31日

恒久的停止 該当なし  

1カ月、3カ月、6カ月

2021年12月31日

代表性喪失

2022年1月1日

2031年12月31日3

JPY

翌日物、1週間、2カ月、12カ月

2021年12月31日

恒久的停止

該当なし

 

1カ月、3カ月、6カ月

2021年12月31日

代表性喪失

2022年1月1日

2022年12月31日

USD

1週間、2カ月

2021年12月31日

恒久的停止4

該当なし

 

翌日物、12カ月

2023年6月30日

恒久的停止

該当なし

 

1カ月、3カ月、6カ月

2023年6月30日

代表性喪失

2023年7月1日5

2033年6月30日3,5

1. 今後のFCAの協議が前提
2. 各LIBORテナーは、シンセティックLIBORの公表終了後、恒久的に公表停止
3. FCAは、年1回の見直しを条件に、10年を上限としてシンセティックLIBORの公表を強制する権限を認められている
4. ISDAフォールバックでは、2021年末から2023年6月30日までの間、計算代理人が線形補間を用いて1週間および2カ月の米ドルLIBORテナー値を算出し、(ターム)調整後RFRにスプレッド調整を加えた値にフォールバックする
5. FCAは、英国のベンチマーク規制(BMR)で提案されている権限を行使し、2023年6月30日以降も、シンセティックベースの1カ月、3カ月、6カ月の米ドルLIBORテナーの公表継続を要求するか「検討する」と述べている


一部の LIBOR テナーの代表性喪失が公表されたことで、当該テナーに関し「シンセティック(合成)」ベースの LIBOR、つまりパネル銀行の呈示に依存しない計算ベースのLIBORによる公表継続の道が開かれました。FCAはシンセティックLIBORについて、フォワードルッキングなターム物リスク・フリー・レート(RFR)をベースに、LIBORとターム物RFRの経済的差異を反映したスプレッド調整値を加算した計算ベースの手法を基礎とする意向を示しています。併せてFCAは、2021年12月31日以降、英ポンドおよび日本円LIBORの1カ月、3カ月、6カ月のテナーの公表を(IBAに)要求するかについて、2021年中に協議を行うと発表しました。なお、シンセティックベースの1カ月物、3カ月物、6カ月物米ドルLIBORの公表可能性については未定ですが、今後FCAにて検討されることになります。

1. LIBORの公表停止日がついに決定

2017年7月、当時のFCA長官Andrew Bailey氏が初めて、金利指標としての適格性を疑問視されていたLIBORの今後について指針となるスピーチを行ってから、約4年が経過しました。Bailey氏が2021年末以降LIBORが公表される保証はないと警告したことを受けて、世界中の市場参加者、業界団体、監督当局はLIBORの公表停止に向けて準備を進めてきました。そして今、その可能性がついに現実となりました。

市場参加者はこれまで一貫して、公表停止期限や公表停止のスケジュールが明確になっていないことをLIBOR移行の大きな障害として挙げてきました。しかし、今回の発表により、LIBOR 公表停止の全体スケジュールと主要なメカニズムが確認されたことで、これまで意思決定を先延ばしにしてきた企業は、必要な行動を起こすことができるはずです。

重要な留意点:

LIBORの終焉に関する報道は決して大げさではない。

  • IBAとFCAが、LIBORの公表停止を発表。
  • 公表停止と代表性喪失の時期が明確化されたことで、これまで準備を躊躇していた市場参加者も行動を起こすようになるだろう。

2. 2021年末以降に公表される米ドルLIBORテナーの使用は厳しく制限される

FCAが行ったLIBORの恒久的公表停止と代表性喪失に関する複雑な声明に混乱しないようにしましょう。2021年末以降、新規契約において5通貨のLIBOR テナーが利用できなくなります。これには、2023年6月まで代表性を維持する形で公表を継続する米ドルLIBORのテナーも含まれます。

もちろん、2023年まで代表性を維持しながらいくつかの米ドルLIBORテナーの公表が継続することで、既存のLIBOR参照エクスポージャーを修正する時間的猶予が生まれます。また、2023年6月以前に期限が到来する契約は、オリジナルの契約条件で満期を迎えられるため、契約満了前に修正を必要とするレガシー契約の数を減らすことができます。しかしながら、米ドルLIBORの利用は、既存のエクスポージャーに限定されると考えられています。米国の銀行監督当局は、公表した省庁間ガイダンスおいて、2021年末以降は米ドルLIBOR の新規契約が締結されないことを明確に期待しています。ただし、2022年1月1日より前に発行されたLIBORを対象とした限定的な例外取引(例:マーケットメイキング活動、 ノベーションおよびリスク管理、メンバーのデフォルト後のCCPオークションプロセスの支援)については、新規発行が認められています。 安全性・健全性への懸念(safety and soundness concerns)がはっきりと示されたことから、監督当局が米国に拠点を置く金融機関に対して、いかにLIBORの利用制限を遵守させることができるかが見て取れます。FCAは、米国監督当局のアプローチと同様に、米ドルLIBORの使用を抑制する意向を示しています。その他の国の監督当局も、監督下にある金融機関に対して同様の期待を設定する可能性がありますが、2021年末以降、世界中の全ての金融機関が新規商品発行において米ドルLIBORの使用を正式に制限されるかどうかはまだ分かりません。

米ドルLIBORの公表停止期限が延長されたことで、2021年末までに既存の米ドルLIBOR契約を修正する緊急性は低下するかもしれませんが、2021年末以降もLIBORエクスポージャーを維持することは、リスク管理、プライシング、バリュエーション、流動性管理上の問題を引き起こす可能性が高いと言えます。2021年末以降、ヘッジ手段の流動性が悪影響を受け、現在の数分の1にまで低下しかねないことから、米ドルLIBORエクスポージャーのヘッジとリスク管理には相当なコストがかかるでしょう。

2021年末以降、米ドルLIBORは新規契約に使用できなくなります。

重要な留意点:

  • 翌日物、1カ月、3カ月、6カ月、12カ月の米ドルLIBORは2023年6月30日まで公表が継続される。しかし、監督当局のガイダンスは、2021年12月31日以降の新規契約で米ドルLIBORを使用すべきではないと明確に示している。
  • 恒久的公表停止と代表性喪失に関するさまざまな発表に混乱してはならない。2021年末以降、新規契約においてLIBORは使用できない。

3. シンセティックLIBORテナーの使用は、狭い範囲に限定されると予想

現在、英国議会で審議中の英国金融サービス法案は、FCAに、a) 重要な金利指標の計算方法の変更、および、b) その金利指標を代表性が喪失したあとも引き続き公表し続けることを運営機関に強制する権限を付与すると考えられています。今後のFCAにおける協議が待たれる中、今回の発表で、英ポンドLIBORおよび円LIBORの1カ月、3カ月、6カ月のテナーについて、恒久的な公表停止ではなく、将来的な代表性喪失が宣言されたことは、2021年12月31日以降、シンセティックLIBOR公表への道を開くものです。EUと英国のベンチマーク規制(BMR)のもとでは、これらのテナーが代表性を喪失した時点で、LIBORを新規契約に利用できなくなります。既存のエクスポージャーに関しても、その利用は、LIBOR公表停止前に修正できない契約を中心とした、ごく一部の契約に限定されると考えられます。FCAは、2021年第2四半期に、新たな権限の行使と、どのような既存契約でシンセティックLIBOR の参照を認めるかについて協議するとしています。

企業は引き続きレガシーLIBORエクスポージャーの積極的な移行を進めるだけでなく、可能な限りその取り組みを加速させるべきです。最も重要なポイントは、2021年末までに合理的に修正可能な既存契約のソリューションとして、シンセティックLIBORに依存するメリットはあまりないということです。経済的観点からすれば、シンセティックLIBORは名ばかりのIBORです。シンセティックLIBORは、特定の LIBORからRFRへの切り替えと、推奨されるスプレッド調整がベースになると考えられています。言い換えれば、シンセティックLIBORと推奨されているハードワイヤードフォールバックとの間には、経済的に重要な差異は生じないと考えられます。一方、ハードワイヤードフォールバックを導入すること、または代替金利指標を直接参照するよう契約を修正することで、銀行はシンセティックLIBORへの依存により発生する不確実性や不測の事態を回避できるでしょう。

今後公表される可能性のあるシンセティック米ドルLIBORについても同様のことが言えます。FCAは、2023年6月末以降のシンセティック米ドルLIBORの公表を検討する予定ですが、米国当局やその他のステークホルダーの意見、とりわけ根拠(エビデンス)の必要性を指摘しています。英ポンドと日本円のシンセティックLIBORについては協議の予定がしっかりと立てられていますが、米ドルのシンセティックLIBORについては協議されない可能性もあります。米ドルLIBOR継続の可能性を受けて、一部の市場参加者は既存エクスポージャーの積極的な移行を後ろ倒しにする衝動に駆られるかもしれません。しかしこのような誘惑に屈することは、代償を伴うことがほぼ確実であり、さらなる移行リスクを生むでしょう。

シンセティック米ドルLIBORへの依存をリスクの高い選択とする要因は他にもあります。先日、Jerome Powell 連邦準備制度理事会議長は、下院金融サービス委員会での証言において、米国市場における現実的なソリューションとしてのシンセティック米ドルLIBORについて繰り返し疑問を呈しました。以前パウエル議長は、訴訟への懸念が障害となる可能性に言及していました。実際、英国の財務省(HMT)は、シンセティックLIBORに関連した訴訟リスクを抑制するための法的なセーフハーバーの必要性を現在協議中です。米国の監督当局も、FCAと同様に、このようなシンセティックLIBORの参照を認める契約の種類を厳格に制限する可能性が高いといえます。

重要な留意点:

新規契約における英ポンドと日本円LIBORの使用は、シンセティックLIBORが公表されたとしても、2021年末で終了。

  • FCAは、1カ月、3カ月、6カ月の英ポンドと日本円LIBORについて、2021年12月31日以降、シンセティックLIBORの形で公表を継続する可能性があると発表した。しかし、シンセティックLIBORの使用は、タフレガシー契約の中でも、狭い範囲に制限されることになるだろう。
  • FCAは、2023年6月30日以降も、1カ月、3カ月、6カ月の米ドルLIBORの公表の検討を継続すると示唆している。しかし、このようなシンセティック米ドルLIBORの参照を計画している企業は、多くの障害や課題に直面する可能性が高い。

4. スプレッド調整値の確定は、移行のための経済的なベースラインとなる

今回の発表により、2023年6月まで公表継続が予想される米ドルLIBORテナーを含む全てのLIBORテナーについて、国際スワップデリバティブ協会(ISDA)のスプレッド調整値が確定しました。スプレッド調整値は、ISDAのIBORフォールバック条項の構成要素として、2020年1月に新規取引用のデリバティブマスター契約に組み込まれました。市場参加者は、取引の各カウンターパーティがこのプロトコルを遵守していることを条件に、自身もプロトコルに署名することで、フォールバックを利用した既存契約の修正が可能です。

LIBORの公表停止後、ISDAフォールバックの対象となるデリバティブ契約において参照されるLIBOR は、さまざまなLIBOR テナーとその代替金利指標間の信用ベーシスを反映するスプレッド調整を含む、RFRに置き換えられることになります。スプレッド調整は、さまざまなLIBORテナーとそれらに対応する代替金利指標のスプレッドの過去5年間の中央値に基づいて算出されます。ISDAフォールバックプロトコルおよび代替レートの公表ベンダーとして指定されているBloombergのIBORフォールバック調整ルールブックでは、スプレッド調整値は、実際に契約がLIBORから代替レートに移行する日ではなく、LIBORの公表停止日(恒久的停止または代表性喪失)の発表日に確定するとされており、結果、今回の発表をもってスプレッド調整値が確定しました。

既存の清算デリバティブについては、主要な中央清算機関(CCP)は、ルールブックに記載された権限により、全ての既存の清算デリバティブ取引において、ISDAのIBOR フォールバックに幅広く整合させると表明しています。

スプレッド調整値の確定は、デリバティブ取引以外にも影響があります。米国では、代替基準金利委員会(ARRC)が、現物商品のフォールバック条項としてISDAのスプレッド調整を推奨するとしています。同様に、英ポンドリスク・フリーレートワーキンググループは、スプレッド調整済みポンド翌日物平均金利(SONIA)へのフォールバックを含む英ポンドLIBOR契約におけるスプレッド調整値の計算方法について、ISDAの手法を推奨しています。スプレッド調整値の確定により、市場参加者には、LIBORが公表停止した際に契約上のフォールバックに従うことで発生する経済的な影響が明らかとなりました。転換価格または経済的なベースラインが明確になったことで、今後数週間から数カ月の間に、既存の現物商品の積極的な移行が加速すると考えられます。

同様に、スプレッド調整値について、そのフレームワークだけでなく、値そのものが確定し、移行時のフォールバックの経済的影響がより確実に把握できるようになったことで、LIBORベースの現物商品の新規契約におけるハードワイヤードフォールバック条項はより一般的になっていくと考えられます。

しかし、確定したスプレッド調整値は、既存のLIBOR契約の再交渉のためのベースラインを提供するものであり、新規のRFRベースの現物商品を発行する際のプライシングにおいて使用したり依拠したりすべきではありません。銀行は、RFRベースの取引のプライシングを行う際には独自の分析を行い、RFRの信用感応度の欠如と現在の市場環境を考慮したマージンやハードルレートを検討する必要があるでしょう。ISDAのスプレッド調整は、過去5年間のスプレッドから算出された固定的な値であり、今後、将来の経済状況に対する期待値からは遠のき、明らかに代表的なものではなくなっていくと考えられます。その結果、RFRを参照する新規発行のプライシングと、LIBORを参照する既存エクスポージャーに対処するための相対交渉は、若干異なる結果をもたらす可能性があります。

重要な留意点:

今回の発表をトリガーとして、LIBORとその代替となるRFRの経済的差異を考慮したスプレッド調整値が確定。

  • 2023年6月末まで継続公表される米ドルLIBORテナーを含む全LIBORテナーのスプレッド調整値が確定。
  • 確定したスプレッド調整値は、既存のLIBORベースの契約の再交渉の基礎となり得るが、新規のRFR参照契約のプライシングを決定するものではない。

5. 今回の発表により即時対応が求められること

相対ローンやシンジケートローンにかかるARRCの推奨フォールバック条項、およびさまざまなローンや債務契約に含まれるその他の条項下において、今回のIBAとFCAの発表は、貸手やシンジケートローンの管理エージェントが他の取引当事者に対しLIBOR 公表停止の発表を通知するトリガーとなった可能性が高いと考えられます。また、修正アプローチに依存する契約については、今回の発表により、LIBORが公表停止した場合の代替金利指標の取り決めに関して、貸手および借手が協議を開始することが可能となりました。

ローン市場では、個別の非標準的な契約条項が数多く存在しています。契約書の文言はさまざまであり、また曖昧なものもあるため、管理エージェントや貸手が具体的にどのような義務を負うのか特定するのは必ずしも容易ではないかもしれません。しかし現在までに契約書に含まれる条項の詳細な分析が完了している企業は、有利な立場にあると言えるでしょう。

契約上の義務の有無にかかわらず、全ての取引先に通知を行う方が運用上容易であると考える企業が多いと思われます。ビジネスや顧客関係の観点から見ると、契約内容により顧客ごとに異なる対応をするのではなく、全ての顧客に対して同時に通知する方が有効かもしれません。一方で、そのような通知は、契約上の義務に対処するためだけに行われるべきと考える関係者もいるでしょう。しかし、管理エージェントや貸手がどのようなアプローチを選択したとしても、LIBORの停止に関する今回の発表を引き金に、多くの通知、発表、報道がされるのは確実です。

借手が貸手の1社からでも通知を受領すれば、問い合わせの電話が鳴り始めることは間違いありません。企業は、顧客に応対する担当者が、既存の取引の修正への対応や、そのプロセス、戦略、およびタイミングについて明確に回答できるか確認しておく必要があります。

重要な留意点:

今回の発表は既存契約におけるLIBORを置き換えるものではないが、顧客への通知対応などは必要となる。

  • LIBORの恒久的公表停止に関する条項が含まれている契約(フォールバック条項)では、実際の公表停止日までLIBORの参照は置き換えられることはない。
  • しかし、通常当事者が代替レートについて相対で合意することを求める多くの契約書には、通知義務が含まれている。一部の管理エージェントや貸手は、今すぐにでも通知を行う必要があるかもしれない。
  • 今回の発表は、契約条項にかかわらず、LIBORの公表停止に対する一般的な認識を高めることになるだろう。顧客からの問い合わせの数は、ほぼ確実に増加する。

6. RFR参照の新規商品発行を加速させるための圧力は益々大きくなる

今回、スプレッド調整値の確定を含めLIBORの公表停止(恒久的公表停止および代表制喪失)に関する不確実性が解消されたことで、LIBOR移行を阻害する障壁はほぼなくなりました。監督当局はすでに、企業がLIBORベースの新規商品の発行を停止することに対する期待を明確に示しています。LIBORの終焉が具体的に見え始めた今、様子見の姿勢を続けるのは難しいでしょう。LIBOR移行の圧力は、他の商品に比べて対応が遅れている貸出市場において最も強くなると考えられます。

LIBOR公表停止に関する発表により、貸手の代替金利指標への移行は容易になったと言えます。第一に、スプレッド調整値の確定により、RFRをベースとしたローン発行やハードワイヤードフォールバックを含むLIBOR参照ローンの発行に伴う経済的な不確実性が減ると考えられます。第二に、LIBOR移行に対する一般的な認識が高まることで、これまで移行作業に消極的な姿勢をとっていた法人顧客の関心が高まり、コミュニケーションが進む可能性があります。

また、LIBOR移行が加速するとなると、銀行が貸出金利としてRFRの採用を受け入れる必要が出てくることにもなります。市場参加者は、ターム物RFRや信用感応度の高い金利指標が利用可能になることを期待していましたが、もはやそれを待っている余裕はなくなります。ターム物RFRや信用感応度の高い金利指標が将来のローン市場の一部にならないというわけではありませんが、今はその時ではないと言えます。デリバティブ市場において担保付翌日物調達金利(SOFR)の採用が進んでいないことを踏まえると、ARRCがターム物SOFRを公表する目標期日としている2021年第2四半期に間に合う可能性は低いと考えられます。また、複数の信用感応度の高い金利指標が公表され始めていますが、これらのレートが広く採用され、代替指標として受け入れられるようになるまでには、監督当局による精査、証券監督者国際機構(IOSCO)原則への準拠、その他のレビュープロセスを通過しなければならず、時間を要するでしょう。

一方で、監督当局が銀行に対しLIBORからの可能な限り早急な移行を期待しているのは明らかです。多くの銀行が、LIBOR移行に向けて、他行が先に動くのを待ちながら様子見の姿勢をとってきましたが、今回の発表により、このような監督当局からの圧力はさらに強まることが予想されます。中には、先行企業に追随する意向を示している企業もあります。今回の発表をもって、いよいよ「LIBOR移行」への火ぶたが切られました。貴社の移行作業はどの程度進んでいるでしょうか。

重要な留意点:

企業は新規取引における代替金利指標の使用を加速させる必要がある。

  • 監督当局は、これまで市場参加者にLIBORからの脱却を繰り返し促してきた。LIBOR公表停止スケジュールの確定により、その圧力は高まるばかりである。
  • ターム物RFRや信用感応度の高い金利指標は進化を続けているが、重要な時期(プライムタイム)には間に合わない。現時点において市場参加者は、貸出金利としてRFRを採用することに順応する必要がある。

どう対応するべきか

企業のLIBOR移行における取り組みの中核となるのは、次の2点です。

1)代替金利指標に基づく新商品の開発・発行

2)LIBOR参照の既存契約の修正

1)代替金利指標に基づく新商品の開発・発行には、代替金利指標、具体的にはRFRを参照する取引を行うシステムとプロセスを確立する必要があります。多くの金融機関は、これに加えてサードパーティが提供する既存のソリューションに必要な変更を理解・管理することも求められます。また、代替金利指標を参照する商品のプライシングや取引をサポートするために必要なモデルの作成、修正、テスト、文書化、検証を管理するガバナンスプロセスを整備しなければなりません。

2)既存契約の修正には、既存契約や条項に関する正確な目録に加え、顧客やカウンターパーティへのアウトリーチやコミュニケーションを管理するフレームワークが必要です。多くの貸手が、複雑な契約を含む多数の契約の修正を、顧客関係を管理するリレーションシップマネージャーに委ねることを計画していますが、これはリソース上の大きな負担となるでしょう。このような場合、特に大規模な企業においてはテクノロジーの活用が有効です。契約管理、文書作成、ワークフローツールは、契約交渉や修正を容易にします。さらに、優れたナレッジサポート用のインフラは、リレーションシップマネージャーが自社の修正戦略をしっかりと理解した上で適用するのに役立ちます。シナリオベースの計算エンジンは、ローンやポートフォリオレベルでの金利シナリオと、関連する価値移転の影響に対する理解を促進します。契約を修正する際には、企業は下流工程の会計および税務上の影響を認識し、適用される可能性のある救済措置に注意を払う必要があります。

積極的な修正であれ、フォールバック条項への依存であれ、企業は移行作業を運用・管理する準備もしておかなければなりません。そのためには、LIBOR公表停止に先立ち増加する契約変更や借り換え、それに伴う業務、契約、会計、税務報告への影響を管理することが求められます。また、フォールバック条項に依存する場合には、大量の契約変更をプログラムで処理するよう検討したり、そのようなポジションのフォールバック条項の全ての組み合わせを網羅したり、多くの企業がシステムへの大幅な変更を回避しようとする時期である年末にかけてこうした変更対応を実施したりといった、多大な努力が必要となるでしょう。

※本コンテンツは、PwCが2021年3月に公開した「Six key takeaways from FCA and IBA’s announcement on LIBOR cessation」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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