
【セミナー】対話型アプローチで組織・人のトピックスを探求する
PwCコンサルティング合同会社は2025年5月13日(火)より、表題のセミナーをに5回にわたり対面で開催します。
PwCコンサルティング合同会社は、ジョブ型先進企業を含む63社に対して「ジョブ型人材マネジメント」に関する独自調査を行いました。
昨今では、ジョブ型人事制度の普及によって、「ジョブ型」という言葉も市民権を得るようになっています。企業の中には人事制度のみならず、ジョブ型の考え方を人材マネジメント全般に適用し、事業成長を加速させるような成功事例と言える企業も出てきています。
そうした先進企業の実例を踏まえつつ、本調査結果をもとにジョブ型の現在や潮流を把握し、今後日本におけるジョブ型の展望を「ジョブ型3.0」への進化として紹介します。
PwCでは、ジョブ型の進化を以下の図のように3段階にて定義しています(図表1)。
「ジョブ型1.0」は処遇の公平性を目指し、職務機軸で報酬マネジメントのみを行うことを指します。
「ジョブ型2.0」は報酬の枠を越え、採用・代謝、配置・育成も含めて職務機軸で人材マネジメントを行うことです。適所適材により会社としてのパフォーマンスを高めることを狙いとし、近年多くの企業が取り入れ始めています。
「ジョブ型3.0」はそこからさらなる進化をしたものとして、事業戦略との連動(中長期的な視野+リアルタイム性)、職務情報と人材情報の高度な連携(職務単位に職務・人材適合度を定量的に把握)、それらを運用するための柔軟かつ体系的な推進基盤を具備したジョブ型人材マネジメントを指します。
「ジョブ型3.0」と「ジョブ型2.0」の最大の違いは、事業戦略との連動性です(図表2)。
「ジョブ型3.0」における職務情報・人材情報とは、中長期的な視野により作られた事業戦略の実現に必要な「組織構造」と「求める人材像」をそれぞれ具現化したものになります。また、その事業戦略に紐づく職務情報・人材情報の組み合わせを示すものが「人材ポートフォリオ」であり、事業戦略と人材マネジメントをつなぐ重要な役割を果たしています。
加えて、「ジョブ型3.0」における職務情報・人材情報は、高度なシステム(職務情報データベース・人材情報データベース等)の活用と事業部門・人事部門の連携により、リアルタイムに近い状態で管理されている点で「ジョブ型2.0」よりも進化しています。このように管理された職務情報・人材情報をマッチングすることにより、事業戦略と連動した人材マネジメントが可能となります。
このように、人材ポートフォリオを起点に作成した要員計画と、それをもとにした人材マネジメントサイクルを回し、事業戦略を加速させる仕組みを「ジョブ型3.0」と定義しています。
本調査結果では、ジョブ型を人材マネジメント全体(採用・配置・育成等)に適用していきたいと考える企業が約8割を占めており、報酬マネジメント中心の「ジョブ型1.0」から、人材マネジメント全体を職務基軸で行う「ジョブ型2.0」へと、考え方がシフトしてきていることが見てとれます(図表3)。
ジョブ型の導入目的の回答では、人材調達手段(採用・配置・育成等)の高度化が上位となっており、この結果からも「ジョブ型1.0」から「ジョブ型2.0」へとシフトしてきていることが分かります(図表4)。
「ジョブ型3.0」に進化するためには、Input、Output、Driverの3つが機能しなければなりません。Inputとは前提となる戦略や情報、OutputとはInputを活用した制度や施策、DriverとはOutputをより効果的・効率的にするための推進基盤を指します。Inputである職務情報・人材情報を適切に把握(①・②)し、その組み合わせにより、Outputとして要員計画(③)を策定し、採用・育成・配置・処遇・代謝(④~⑧)により具体化していく必要があります。また、それらを効果的に実行するためのDriver、つまり意識・システム・体制など推進基盤(⑨)を整備・高度化することが重要であり、PwCではこれらの9つをジョブ型3.0のKSFとして定義しています(図表5)。
本調査では、対象企業における9つの領域(図表4の①~⑨)のジョブ型実施現状について調査しています(図表6)。
要員計画・採用・配置等の領域にジョブ型を適用する企業が5割を超えていますが、育成・代謝といった部分についてはジョブ型が適用されているケースがまだ少なく、領域別に濃淡があるのが現状です。
また、上記のKSFに記載されているような「ジョブ型3.0」の取り組みが、各領域で少数ながら登場し始めています。しかし、先進企業においても9つ全てのKSFをカバーするのではなく、一部の領域に留まっているのが現状です。事業戦略に連動した人材ポートフォリオをタイムリーに充足していくためには、Input・Output・Driverの全領域において「ジョブ型3.0」の取り組みを適用することが重要と言えるでしょう。
「ジョブ型3.0」では、個々の職務と人材との適合度・ギャップを定量的に把握し、採用・配置・育成などの人材マネジメントを行います。そのため、Input領域のKSFとして、職務と人材のマッチングを前提とした職務情報・人材情報の収集・集約を行うことがポイントです。
「ジョブ型3.0」における職務情報は、各職務の基本的な情報に加え、各職務の遂行に必要なマインド・スキル・職務経験等の人材要件を記載することが重要です。調査結果では、職務記述書(以下、JD)導入企業のうち、「ジョブ型3.0」の条件である人材要件が記載されている企業は5割程度であることが分かりました(図表7)。
「ジョブ型3.0」における人材情報は、職務情報とマッチングするために多様な情報を充実化することが重要です。調査結果では、基本的な人材情報を収集・集約できている企業が多いものの、タフアサインメント経験や適性検査を収集・集約している企業は半分以下でした。
これらの結果から、「ジョブ型3.0」への進化に向けて、Input領域においては、JDへの人材要件の記載、および、人材情報の充実化の両面から取り組んでいくことが、今後の課題であると考えられます。
「ジョブ型3.0」において、事業戦略実現に向けてより大きなインパクトを出していくためには、JDの導入・開示範囲を、ボリュームゾーンである非管理職層まで広げていくことも選択肢として考えられます。
JDの導入範囲については、これまで日本企業におけるジョブ型は管理職・高度専門職を中心に適用されることが一般的でした。一方、本調査において、JD導入企業を対象に、JDの導入範囲を調査したところ、管理職・高度専門職層だけでなく、非管理職層にも広がりつつあることが分かりました(図表8)。
JDの開示範囲については、本人の職務以外のJDを見せることで、育成やキャリア形成促進といった効果が期待できます。また、社内公募制度等の社員起点の配置施策の活性化にもつながります。本調査では、全社員にJDを開示している企業と、限定的に開示(上司・部下間のみ等)している企業が二分される結果でした。今後、JD導入範囲が広がることで、JD開示範囲も広がることが想定されます。
JDの導入・開示範囲が共に全社員にまで拡大している企業はJD導入企業の2割にとどまる結果でしたが、将来的にはいずれも拡大していきたいと考える企業が多数見られました。
Output領域の「ジョブ型3.0」のKSFは、事業戦略と連動して人材ポートフォリオをアップデートし、その充足のために、各職務の要件と人材の適合度を踏まえて要員計画・採用・配置・育成・処遇・代謝をタイムリーに実施することです。
本調査では、領域別のジョブ型人材マネジメントの取り組み状況、特に「ジョブ型3.0」の実施状況を可視化するために、「ジョブ・人材の適合度の分析単位」と「ジョブ・人材の適合度分析レベル」という2つの軸に基づいて、回答企業を4つにグルーピングしました(図表9)。
「適合度分析単位」はどれだけ細かいメッシュで適合度を判断しているかを指します。
「適合度分析レベル」はどれだけ定量的に適合度を判断しているかを指します。
この両軸で高いレベルであることは、個々の職務に対して、明確な判断基準で適合判断をしていることを示しています。職務要件に照らし、最適な人材を採用し、適材を配置し、適切な育成を行う。それこそが、「ジョブ型3.0」の人材マネジメントの根幹であると言えるでしょう。
調査の結果、領域別の人材マネジメントにおける「ジョブ型3.0(=個々の職務単位で定量的に判断)」の実施状況として、現時点では、採用・配置領域において少数の先進企業が実施しており、一方、人材育成の領域ではほとんど見られず発展途上の領域であることが分かりました。
ただし、「ジョブ・人材の適合度の分析単位」が「個々の職務単位」の企業が、採用・配置で約7割まで増えていることは「ジョブ型2.0」の増加を意味しており、今後も各領域におけるジョブ型進化の流れは続いていくことが想定されます。
Driver領域の「ジョブ型3.0」のKSFは、人事システム・推進体制・意識の3つの推進基盤を整備することです。
1つ目の人事システムは、職務・人材情報を管理する手段として有効なことは言うまでもありませんが、さらに、職務・人材の適合度・ギャップをリアルタイムで定量的に把握する手段として高度化させていくことが「ジョブ型3.0」への進化のポイントです。
2つ目の推進体制は、人材マネジメントの部門への権限委譲と、HRビジネスパートナー(以下、HRBP)によるサポート体制の構築が重要です。事業戦略をドライブするためには、各事業の特性・状況に応じた人材マネジメントが必要であり、それは事業の最前線に立つ部門が主導することによって可能となります。また、部門主導での人材マネジメントを実現するためには、ただ権限移譲するだけではなく、HRBPが部門をサポートする体制を整備していくことが重要です。
調査結果では、人材マネジメントを部門に権限委譲し、かつHRBPによるサポート体制を整備した「ジョブ型3.0」の取り組みができている企業は2割に留まるという結果となりました(図表10)。部門への権限移譲を進めている企業自体は5割強を占めていることから、HRBPによるサポート体制もセットで整備していくことが今後の課題と想定されます。
3つ目の意識については、ジョブ型人材マネジメントの対象となる社員や運用主体となる経営者の意識を、ヒト基軸から職務基軸に変えていくことが重要です。どんなに緻密に制度や施策を練ったとしても、経営者・社員の意識が変わらなければ、効果を十分に得ることができません。それを踏まえて、ハード面(組織・制度、システム等)と並行してソフト面からのアプローチ(チェンジマネジメント)も考えていく必要があります。
将来的にジョブ型人材マネジメントを実現したい領域を確認したところ、約7割の企業が、育成・要員計画・配置といった人材マネジメントの中核領域を挙げています(図表11)。これは、事業環境の急速な変化に合わせて、人材ポートフォリオをアップデートし続ける必要性が高まっていることが背景として考えられます。
また、ジョブ型人材マネジメントを推進する体制構築で実践したいこととして「システムによる効率化・高度化」を挙げる企業が8割を占めており、多くの企業が課題感を抱えている実態が明らかになりました。
ジョブ型3.0への進化に向けて、Input、Output、Driverのそれぞれについて現状と必要な点については各章で述べてきました。本調査報告の締めくくりとして、InputとOutput、DriverとOutputのそれぞれを結ぶ結節点となる要素の重要性について述べていきます。
まず、InputとOutputの結節点ですが、Inputをより効果的・効率的に活用するためには結節点として人材ポートフォリオの高度化、その中でも「職務記述書(JD)の進化」が必要です。具体的には人材情報との連携を強化するために、JDにおける人材要件の項目を、人材情報の項目を共通化することでマッチングをしやすくすることが重要です。欧米を中心に行われているJDの人材要件と人材情報との共通フレーム化(「スキルタクソノミー」)もその流れの1つです。組織別や個人別にスキルを各々が記述するのではなく、横断的で共通の項目に基づいて定義することで職務情報と人材情報が共通の軸で管理され、デジタルなマッチングを実現できます。逆にそれができていない場合は、スキルデータを充実させたとしても、結局アナログなマッチングになってしまうことに留意が必要です。
次にDriverとOutputの結節点ですが、ジョブ型推進において障壁となる要素、重要な要素に関しての調査結果をご覧ください(図表12)。
本調査結果からも分かるとおり、重要な要素としては体制面等のハード面に注目が集まる一方、重要かつ障壁となりうる要素としてはソフト面(経営陣・従業員の理解)が挙げられているのが興味深いポイントです。Driver領域のKSFとして「意識」を挙げましたが、あらためて、この「意識」の部分が、DriverとOutputの結節点として重要な役割を持っていることが分かります。
具体的なソフト面のアプローチとして、ステークホルダーである経営者・従業員の意識変革、具体的にはジョブ型3.0への進化の必要性について理解することとその効果を実感できるようにすることが重要です。
そのために、経営者はなぜ事業戦略にとってジョブ型が不可欠なのかを説明する必要がありますし、それを具現化した人事方針や理念等を従業員に対して周知・徹底しなければなりません。そのうえで、Outputの制度・施策の実施においても、その目的・効果が明確化され、関係者全員が実感できることが改革を進めるうえで不可欠です。各施策においていわゆるQuick-win(小さな成功)を積み上げ、効果を実感させるなどチェンジマネジメントをいかに行うかを検討することが重要です。
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