金融サービス業における世界のM&A動向:2022年上半期アップデート

金融サービス(FS)セクターでは、ディール活動の低迷が予想されるものの、合併・買収(M&A)は引き続き変革の推進力であり続けるでしょう。

業界全体が必要とするデジタル機能の導入に加え、規制当局からの持続的な圧力や、プラットフォームやフィンテックがもたらす破壊(ディスラプション)と相まって、FSセクターは変革の時期を迎えています。

このため2022年下半期には、戦略的パートナーシップの構築、経営統合、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に資する案件を中心に、M&Aが活発に行われることが予想されます。

M&Aの実施に向けた意欲は依然として強いものの、現在のマクロ経済やインフレの逆風、ロシア・ウクライナ紛争の影響から生じる不確実性によって、ディールメーカーは以下の課題に直面しています。

  • 資金調達:金利の上昇と貸し手の融資方針の厳格化に伴い、一部の案件では資金調達が一段と難しくなっています。
  • バリュー:投資家は目下、バリュエーションを正当化し、価値を引き出すために、さらなるシナジー効果やイノベーション、効率向上を追求する必要があります。
  • バリュエーション:多くの買い手は、2021年に実現された高値のマルチプルに進んで支払うことを避けており、バリュエーションは2022年内にさらに下がると予想されます。

ディールメーカーは、さまざまな価値創造の手段に重点を置くようになり、契約前のデューデリジェンスや、ディール締結後のトランスフォーメーション作業をより徹底するようになっています。デューデリジェンスは、財務パフォーマンス、税務、IT、オペレーションといった従来の重点分野から、戦略的適合性、労働力、ESG(環境・社会・ガバナンス)といった分野へと拡大しています。

買い手側は、ターゲット企業が買い手独自のESG戦略や、目的に合致した持続可能なビジネスモデルを有しているか確認するため、ディールの投資テーマの一環としてESG要素を評価するようになってきています。

インフレやロシア・ウクライナ紛争が新たな課題をもたらしているにもかかわらず、金融サービス業におけるM&Aは引き続き活発です。こうした動きから、取引の複雑性が増しており、ディールメーカーにはさまざまなシナリオを検討することや、しっかりした価値創造計画を策定することが求められます」

Christopher SurPwCドイツ、パートナー、グローバル金融サービス関連ディールリーダー

金融サービス業のM&A見通し:2022年上半期アップデート

金融サービスセクターにおいては、2022年下半期もM&A市場の活況が続くと予想されます。アセット/ウェルスマネジャーは、新しい資産クラスへの拡大を目指しており、銀行は新しいデジタルソリューションによる近代化と資本基盤の最適化を迫られています。保険会社はランオフブロックを含む非中核資産を売却し、コアコンピタンスに再集中する機会を模索しています。

テクノロジーには引き続き高い需要があるものの、マクロ経済の逆風によって、ディールのマルチプルは最近の高水準から下がると思われます。全体として、金融サービスセクターにおけるM&A活動は、現在の状況下でより価値のある機会が創出され、高水準で推移する可能性が高いでしょう。

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※本コンテンツは、PwC米国が2022年6月に公開した「Global M&A Trends in Financial Services:2022 Mid-Year Update」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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