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経営を取り巻く環境の不確実性はかつてないほどに高まっており、企業経営の舵取りの一翼を担うCFO(最高財務責任者)の役割は、「攻め」にも「守り」にも重要性が増しています。
PwC Japanグループは、急速に経営の前提が変化する環境下で、「持続可能な未来に向けてCFOにはどのような変革や役割が求められているのか」を解き明かすことを目的に、本年度もCFO意識調査を実施しました。本レポートでは、CFOが認識している期待役割や課題などを取り上げ、CEOの認識とも比較しながら多角的に分析・考察します。
本調査結果から、CEOがイノベーションや生成AIの可能性に目を向け、企業が長期的に至るべき「目指す場所」を描く一方、CFOは「目指す場所にどのように至るか」を設計する役割を重視していることがわかりました。
また、CFOが期待役割を果たす過程では、企業価値の「創り手」としての役割を強く認識する一方で、依然として重いオペレーション負荷と統制責任を抱えているという現実、管掌範囲と経験のギャップが存在するという課題など、変革と継続、長期と短期、管掌範囲と経験といった異なる要素のバランスがCFOにとっての最大の関心事であることが明らかになりました。
企業を取り巻く環境は、多様な不確実性に晒されています。そのなかで、CFOが最も懸念しているのは「大胆な変革とコア事業のバランス」でした。既存の収益源や事業の安定性を損なわずに変革を進めることを、CFOは最大の課題と捉えています。
同時に、「効率的な運営と予期せぬ事態への耐性の両立」や「不確実な未来に向けたイノベーション力の確保」への関心も高く、CFOが単なる財務管理者ではなく、レジリエンスと持続的成長を両立させる“経営の要”を志向していることがわかります。
これらは、CEOの意識と大きく異なります。CEOは自社の変革能力や生成AIを含むテクノロジーの台頭に対する危機意識が高く、長期の成長ストーリーや大胆な変革に目を向けています。CFOが変革に賛同しつつも、財務健全性や適切なバランスにより強い関心を寄せていることは、安定性と成長力を両立させて「目指す場所にどのように至るか」に対する強い意識を裏付けている、といえます。
図表1:CFOとCEOの懸念事項
CFO意識調査:Q. 最近、CFOとして最も懸念していることは何ですか(1つだけ)
CEO意識調査:Q. 最近、CEOとして最も懸念していることは何ですか(3つまで)
また、CFOは、日本企業がこれまであまり経験してこなかった「インフレ」への対応も重要なテーマとして認識しています。資本コストや原材料価格の上昇を受け、多くの企業が「資本コスト上昇に見合った資本効率の向上」と「迅速な価格転嫁」に力を入れています。高付加価値事業へのポートフォリオ見直しや、徹底した業務効率化による収益構造の強化を含めて、CFOはインフレ環境下での企業価値維持・向上に向けた舵取りに注力しているといえます。
図表2:インフレ時代において重視する対応内容
Q. インフレ時代において、貴社ではどのような対応を特に重視していますか(3つまで)
CFOの役割は、不確実性への対応を通じてより戦略的かつ機動的なものへと変化しています。一方で、現在の管掌範囲とこれまでの経験の間にはギャップも見られます。
管掌範囲に含まれているにもかかわらず経験が不足している領域には「税務」があげられます。税務を管掌しているCFOは多い半面、税務業務の実務経験を持つCFOは限定的であり、移転価格など国際税務の実務の経験者はさらに少数にとどまります。ビジネス環境を踏まえると、戦略的に活用すれば「キャッシュ創出機能」となり得る「税務」領域を活用しきるケイパビリティがCFOには不足している、と読み取れます。
このギャップは、CFOに求められる役割や管掌範囲に合わせて、CFOのキャリアパスが十分に設計されているとは言い難い状況を示しています。
役割の変化に合わせて組織や業務体制を変化させるだけでなく、CFOになるまでに求められる経験・スキルの在り方の再検討が必要な状態にあるといえます。
図表3:CFOの税務の経験
Q. ご自身の税務のご経験についてお聞かせください(いくつでも)
今後CFOに求められる役割として、最も多く挙げられたのは「価値創造」であり、8割のCFOがこれを最重要と位置付けています。CFOは投資評価、資本コストを意識した資本配分、事業ポートフォリオの見直しなどを通じて、企業価値を高める「創り手」としての役割を強く意識しています。
一方で、CEOが価値創造に次いでCFOに求める役割として「インサイト・予測」ではなく、「統制・コンプライアンス」をあげていることに追随して、依然として多くのCFOは「守り」の機能に相当する「統制・コンプライアンス」や「トランザクション処理」を重要な役割として挙げています。価値創造を1位に挙げたCFOの中でも、2位に「統制・コンプライアンス」や「トランザクション処理」を選ぶケースは半数を超えており、CFOは引き続き、これら「守り」の役割を重要と捉えています。これは、近年の度重なる法規制改正や透明性の高い情報開示への要請が強まる中で、正確性や説明責任を担保する機能への高い意識が影響していると思われます。また、CEOと異なり、CFOは経営の司令塔としてビジネス状況に合わせて注力領域を柔軟にシフトさせる必要があり、この点も「守り」の役割を重視する背景にあると考えられます。
図表4:CFOに求められる役割(CEOの認識とCFOの認識)
CFO意識調査:Q. 今後CFOに求められる役割にはどのようなものがあるとお考えですか(重要度の高い順に、順位付け)
CEO意識調査:Q. CEOとして、今後CFOに求められる役割にはどのようなものがあるとお考えですか(重要度の高い順に、順位付け)
図表5:CFOに求められる役割(1位に「価値創造」を選んだ人の2位の選択向)
Q. 今後CFOに求められる役割にはどのようなものがあるとお考えですか(重要度の高い順に、順位付け)
本調査の結果からは、主に以下の3点が明らかになりました。
長らく続いたデフレ時代からインフレ時代に転換したことにより、企業経営には従来とは異なる新たな対応が求められています。また、PwCが2025年9月から11月にかけて実施した第29回世界CEO意識調査では、日本のCEOの42%が「過去5年間で、それ以前に競合していなかった新たなセクターや業界の企業と競合するようになった」と回答しました。こうした企業を取り巻く競合関係の複雑化が、CFOの「バランス意識」を加速させていると考えられます。
これらの状況をふまえて、詳細版では具体的なトピックごとに対応の方向性を示唆していますが、ダイジェストとしてCFOが推進すべき変革をPwC Japanグループでは3つの視点から提言します。
これまでの競争環境においてCFOは、計画や予測に基づく因果に着眼していたといえます。これはCFOの役割が、予測合理性を重視し、「業績管理の番人」として常に最適な手段を選択することを求められてきたからであり、不確実性を伴う行動や選択自体が、番人として守るべき「業績」に対して、許容不可能な損失を生むリスクとして認識されてきたともいえます。
反面、現在の競争環境は、不確実性が一層高まり、計画や予測どおりには進まないことが多くなっており、これが、既存の収益源や事業の安定性を損なわずに変革を進めるための「大胆な変革とコア事業のバランス」に着眼するCFOの視座に繋がっていると考えられます。
また、東京証券取引所が2023年3月31日に全上場企業に要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」や金融担当大臣が2024年2月19日に金融審議会に対して発出した「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関する検討」、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)などの開示制度のいずれもが「中長期的な企業価値向上」を求めるものです。一見するとCFO組織には「攻め」の役割に特化することが求められるように思われます。しかし、不確実性が高い環境下では、「攻め」の役割一辺倒や「攻め」の役割の強化だけがCFOの変革ポイントではなく、財務的な安定性と将来への成長力の両立をいかに実現するかが要諦であり、企業経営の司令塔としての変革ポイントであるといえます。
これは、価値創造やインサイト、FP&A(Financial Planning and Analysis)など昨今CFO組織で謳われる「攻め」の役割の改革テーマの前提には、「守り」の役割が実現する信頼性(Trust)の担保が必要不可欠であること、生成AIやテクノロジーの進化によって信頼性(Trust)の重要性が高まっていることを示唆しているといえるでしょう。
このような環境では、CFO組織の変革は、CEOが描く「目指す場所」を構成する要素の全体像を意識しつつ進めることが求められます。一方で、複雑な状況下では因果関係が複雑に絡み合い、多重に連鎖する制約事項が成果創出を拒みます。また、テクノロジーの進化と外部環境は継続的に変化し、当初の計画を揺るがします。変革の推進過程で変わりゆく前提事項や制約事項に対して、その因果関係を完全に解き明かして着手するのではなく、多少の損失や手戻り、重複が生じることを許容し、「Start anywhere(先ず隗より始めよ)」の視点で変革を推進すべきではないでしょうか。「前提が変わることが前提」の環境では、理想的な順序を求めて変革に着手できないまま現状にとどまるより、手が届くところから変革に着手して変化を波及させるべきです。
これは、個別案件ごとの費用対効果で変革の是非を判断するのではなく、許容可能な損失を織り込んだ上で、手戻りや失敗を含めて変革推進の過程で得られた経験や蓄積されたケーパビリティを、変革を推進するアセット(アイデア・スキル・ノウハウ・ツール)として取り込むことの重要性を示しているともいえます。
AIの活用については、社内の定型・準定型業務への適用やパターン認識、定型文書の要約・生成、時系列予測などのAIの得意分野では先行している一方、対外的な業務や非定型業務では活用が十分に進んでいないことが本調査では明らかになりました。これは、CFO組織が未だAIを「効率化のツール」として捉える傾向が強く、「変革のテコ」として捉えきれていない証左ともいえます。
また、AIの進化や浸透は経済や産業に大きな影響を与えるファクターであり、PwCでは、AIが今後10年間で世界経済の生産量を大きく押し上げる可能性があると指摘していますが、第29回世界CEO意識調査では、AIの効果を実感するCEOは現状ではまだ一部にとどまっており、AIの活用で先行する企業と後れを取る企業の差が広がりつつある様子が見て取れます。
AIは、従来型のDX推進と異なり、局所的なプロセス標準化やデータ標準化を要請しつつも、分散されたデータやプロセスも統合・処理が可能です。そのため「必要な箇所だけ整備して、あとはAIと現場で対処する」という試行錯誤型のアジャイル運営を通じて「集中と分散」の両立が可能なテクノロジーといえます。人材不足を「課題ではなく与件」と捉えるべきわが国の人口動態において、CFO組織では、「統制・コンプライアンス」や「トランザクション処理」への活用など、効率化ツールとして「守り」領域に対するAI活用にとどまらず、「洞察・インサイト」などの「攻め」領域への積極的な活用を推進すべきです。その過程では、CFO組織自らがAI活用を主導し、課題認識を踏まえて、活用可能なユースケースを選定し、「成功体験」を積み上げることが活用範囲の拡大に繋がると考えています。
経済環境の変化に伴い、税務機能が企業価値向上に貢献する戦略的な位置付けになり得る可能性が高まっているにも関わらず、本調査では、税務領域の付加価値を高める機能配置および人材配置に至っていないことが明らかになりました。また、CFOの管掌範囲として、「財務」「経理」「税務」といった伝統的な領域が中心であり、「経営戦略」「サステナビリティ」などの戦略・非財務領域を管掌するCFOが半数に満たない状況であることもわかっています。
今後、CFO組織が変革を遂げる過程では、価値貢献の視点から、機能配置の再考が求められます。開示制度の変更に伴い、経営企画・広報・経理財務に加えて、人事・研究開発など複数の部門が関与し得るサステナビリティ領域などが生じていることを踏まえると、CFO組織が従来の「カネ担当」ではなく、「価値創出の指揮者・プロデューサー」として機能を発揮できるような機能配置や組織設計が要諦になるといえます。
CFO組織に期待される機能・役割が変化することはCFO組織の人材育成にも影響を与えます。従来、CFO組織の人材育成は、財務・経理の知識を育成することに注力してきました。しかし組織の機能役割を踏まえると、経理財務領域の専門知見にとどまらず、戦略や法務、哲学や歴史、資本市場や他部門・事業の動向の理解、変革を推進するためのプロジェクト管理やチェンジマネジメントのスキルが重要になります。その上で他部門を巻き込んだクロスオーバー・価値創造を実現すべく、指揮者として企業経営やビジネス全体を「多角的に捉えること」「連鎖的に捉えること」を意識して人材育成すべきだと考えています。ファイナンス領域の専門家ではなく、ファイナンスの専門性を用いて企業変革を実現する変革の指揮者となることがバランス型CFOを実現する上で求められる「CFOジャーニー」と言えるのではないでしょうか。
本調査は、CFOが企業価値の「創り手」としての役割を強く認識する一方で、依然として重いオペレーション負荷と統制責任を抱えているという現実、そして管掌範囲と経験のギャップが存在するという課題を浮き彫りにしました。3つの提言からもわかるように、CFOはこれからも、データとテクノロジーを活用しながら、企業の持続的な成長とレジリエンスを支える中核的な存在であり続けることが期待されています。
PwC Japanグループは、2023年7月から価値創造経営支援を重点サービスと位置づけ、これまでに企業価値インパクト分析や価値構造分析、AIを活用した経営改革・業務改革、税務組織を筆頭とした組織変革による価値向上など多くの知見と支援実績を有しています。加えて今後は本調査の結果を最大限に活用し、価値創造と企業価値向上について日々悩んでおられるCFOをはじめとするCxOや、それらの方々をサポートする部門の皆さまの課題解決を支援することで、日本企業の国際的な競争力の強化に貢献してまいります。
なお、本ダイジェスト版で言及している全体概要に加えて、調査回答企業・CFOには調査結果の詳細版を提供しています。詳細版では、企業価値向上に向けた具体的な「攻め」に関する取り組み、企業価値を「守る」ための組織力向上に関する取り組みについて、具体的なトピックごとに深堀した考察をまとめています。
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