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2026年3月12日、PwCコンサルティング合同会社は、地域ビジネスのプロジェクト事例紹介に加え、地域ステークホルダー連携や社内推進体制づくりの課題について意見交換し、解決策のヒントを得るためのセミナーを開催しました。その様子を紹介します。
少子高齢化や人口流出、医療・介護、防災、デジタルデバイド――地域が直面する課題はどれか1つを切り取って解けるものではなく、複数の論点が絡み合いながら同時進行で深刻化しています。単一の企業やソリューションだけで解決することは難しく、複数プレーヤーを前提にした設計が不可欠です。
一方で地域課題に向き合う取り組みは、しばしば「良い活動」で終わってしまいがちであり、そのようなもどかしさもまた、現場の本音です。社会的価値の創出と、事業としての継続性(経済的価値)をどう両立するか。そこに悩む企業・団体が多いからこそ、PwCコンサルティング 地域共創推進室は知見の共有にとどまらず、参加者同士が「生々しい課題」を持ち寄って議論することができるセミナーを企画しました。
本セミナーは「地域ビジネスの最新動向と成功の要諦」と題した講演、地域ビジネスの事例紹介、そして参加者による意見交換/グループディスカッションという構成で行われました。講演を「聞いて終わり」にせず、明日からの打ち手につながる気づきを得る場として、参加者同士が率直に語り合うことが意図されています。
地域ビジネスの調査・分析を踏まえると、地域ビジネスを成功させるには5つのポイント、つまり長期視点での取り組み/明確な目的意識/コミットした組織体制/効果的な外部連携/中長期視点でのマネタイズモデル、を押さえることが肝要です。特に、地域ビジネスは立ち上げから事業として形になるまでに時間を要するケースが多く、短期の評価軸だけで判断すると継続性が損なわれやすくなります。
調査結果※からも明らかになっているのは、地域ビジネスが「単発の施策」や「短期的な実証」にとどまっていると、想定したような収益や社会的成果にはつながりにくい、という現実です。一方で成功企業に共通するのは、まず地域との関係構築を前提に長期視点で向き合う覚悟を持ち、何のために地域で事業を行うのかという目的・期待成果を明確に定義している点です。
また、地域ビジネスを本業として育てるには、兼務や個人任せではなく、専任組織を設けて経営としてコミットする体制が不可欠です。加えて、地域課題は一社完結で解けないからこそ、自治体、地場企業、大学、NPOなどと役割分担を整理した効果的な外部連携が成否を分けます。
さらに重要なのが、補助金や一時的な委託に依存しない、中長期で成立するマネタイズモデルの設計です。受益者は誰か、どこで価値が発生し、誰がコストを負担するのかを構造的に描くことで、社会的価値と経済的価値を両立する「続く地域ビジネス」へと進化していくのです。
セミナー当日の様子
テーブルディスカッションでは、参加者が自社・自組織の現場感を持ち寄り行われ、「地域で収益創出できるビジネスは生まれるのか」という根源的な問いから、合意形成の泥臭い現実まで、率直な言葉が飛び交いました。
以下、議論を通じて浮かび上がった論点を紹介します。
最も多く語られたのは、やはり収益性です。地域は「市場規模が小さく、単体では収益が見えにくい」ことが多く、人口減少が進み、予算規模も限られる地方都市では、短期で一定規模の売上や利益を求めることが成立しづらい、という意見が挙がりました。
一方で議論を深める中で見えてきたのは、「地方=儲からない」と一括りにするのは早計だ、という視点です。重要なのは単体の自治体での収益規模ではなく、周辺自治体が追随する影響力を持つ「キーとなる自治体」を起点に据え、横展開を前提としたモデルを構築できるかという捉え方でした。例えば、「人口5万~15万人規模の自治体で、縦割りを越えて意思決定できるキーパーソンが存在するケースでは、横展開可能なモデルを作りやすい」というように、大規模都市ではなく、むしろ中小規模自治体こそが、実装と展開の「起点」になり得るという見立てです。
こうした自治体間での成功事例を一つ作れれば、その設計や運営ノウハウを他地域に展開することで、「面」としての収益機会が生まれるでしょう。この発想に立てば、地方都市は単体完結の収益源ではなく、横展開を前提としたビジネスモデルの検証フィールドとして、十分なポテンシャルを持つと整理できます。
そして、その最初の成功パターンを生み出すために欠かせないのが、民間・公共の双方で推進力のあるキーパーソンを押さえることです。自治体内で縦割りを崩し、行政として旗を振れる人物、そして企業側で中長期視点の判断ができる人物。この両者が噛み合った時、小さな成功が再現性のある「型」へと進化していく、そのようなリアルな示唆が浮かび上がりました。
また、収益化は「住民から直接お金を取る」以外にもある、という視点が明確になっていきました。
例えば、公共性の高いプレーヤーは、法制度上の制約から、住民への追加課金やサービス単体での直接マネタイズが難しい場合があります。その際に現実的なのが、ポイント連携やPR価値(ブランド価値)、アンケートなどのデータ活用といった「間接価値」の設計です。
加えて重要なのは、間接価値を「副次的な効果」と捉えるのではなく、最初から事業設計の中に組み込むという発想です。例えば、住民接点を通じて得られる行動データや意向データをサービス改善や他地域展開に生かすこと、自治体と一体で取り組むことで企業ブランドや信頼性を高め、中長期の受注や他事業への波及効果を生み出すことなどが挙げられます。直接的な売上が立ちづらい領域だからこそ「誰にとって、どの価値が将来のビジネスに効いてくるのか」を整理し、間接価値を積み上げていく設計力が問われていると言えます。
収益化の方法以外にも、「地域共創に関わるお金には色がある」という表現が出ました。
収益性を強く求める資金(内部収益率<IRR>重視)と寄付・NPO型の資金の間には「公益性が高く、儲からないが“あるべきだから”継続される資金」が存在し、この中間領域こそ今後重要になるという指摘です。
ただし、この中間領域は繊細です。人によっては「結局寄付でしょ」と一蹴され、予算や担当が変わると簡単に取り組みが止まります。一方で少し儲かりはじめると、今度は社会的意義が置き去りになり、取り組みの趣旨がずれていきます。その綱渡りこそが継続性を左右する、という本音も語られました。
連携の難しさも、各テーブル共通のテーマでした。特に民間企業同士の連携では、実証フェーズでは合意できても、いざ事業化・横展開を見据えた段階で「誰がどこで稼ぐのか」が曖昧になり、議論が止まるケースが多いという声が上がりました。オープンイノベーションでは参画企業が増えるほど、全体戦略や出口設計が不在になりやすく、共同出資や収益分配の整理が大きな壁になります。
そこで現実解として示されたのが、官(自治体・公的機関)をハブに据える座組みです。住宅や公共施設、地域そのものといった官のアセットを軸にすることで、民間各社はバリューチェーン上の役割を明確にしやすく、直接的な競合も避けやすくなります。加えて、「公共性」という共通言語があることで、複数企業を束ねやすいという実務的なメリットも共有されました。
一方で、官主導には当然制約も伴います。制度・法令順守や説明責任が前提となり、スピード感や柔軟な収益設計が行いにくい場面も少なくありません。だからこそ、官を軸にしつつも、出口(ポイント事業との接続など)や推進責任者を明確に設計できている案件だけが、結果的に継続しているという指摘が印象的でした。
地域ビジネスのボトルネックとして、合意形成の難しさが繰り返し話題に上がりました。行政の縦割り、施設単位で閉じた開発、データ連携の壁――技術や構想が正しくても、現場が動かなければ進まない、という現実です。
象徴的だったのは、「動かない自治体を動かす」ために、地元のキーパーソン(地域の小売店経営者が漁協会長も兼ね、政治的ネットワークも持つなど)が起点となり、関係性を動かしていったという事例です。事業を推進する上で、行政内部が動きにくい状況を打開するため、地域の意思決定に影響力を持つ有力者を巻き込み、地域側の納得感・後押しを形成。民間からの提案だけでは動きづらい行政に対して、「地域としても必要だ」という空気と政治・地域ネットワーク上の後押しを重ねる形で、自治体を外堀から動かした事例です。
このように、地域の力学(関係者ネットワーク)を動かせる地元のキーパーソンを押さえることで、膠着していた意思決定が前に進み、結果として「動かない行政を動かす」突破口になることもあります。
理屈よりも地域の力学を理解し、味方を増やし、最後は腹落ちを作る。合意形成は綺麗ごとだけでは片付かない、という温度感がにじみました。
成功要因として最も強調されたのは「人(の熱量)」でした。推進力あるキーパーソンの存在が、地域ビジネスを前に進める。ここは、多くの参加者が体感として一致していたポイントです。
しかし同時に、そのキーパーソンは異動や担当交代でいなくなります。官側は異動が避けられず、民間も人事異動で熱量が落ちやすい。だからこそ、個人の情熱だけに依存しない仕組み(体制、ガバナンス、関係者ネットワークの引き継ぎ)をどう作るかが、継続性の鍵として語られました。
技術実装の話題では、ドローンなどの先端技術は「便利さ」が理解されていても、「自分の頭上を飛ぶのは怖い」といった住民の感情で止まることがある、というリアルが共有されました。実証実験のたびに説明会を開き、そこで理解が得られない場合は実施することができません。社会受容は、制度や技術以上に手強い壁になることがあります。
ディスカッションを通じて改めて浮かび上がったのは、地域ビジネスが「正しい解」だけでは進まないということです。
収益化の設計、社内の意思決定、官民連携の座組、地域の力学、住民理解、そして継続性を担保する体制――さまざまな論点が絡み合うからこそ、全体を俯瞰し、関係者の「腹落ち」を作りながら前に進める伴走者が必要になります。
PwCコンサルティング 地域共創推進室は、地域課題に向き合う企業・自治体・公的機関等の多様なステークホルダーをつなぎ、構想策定から実装までを支援してきました。本セミナーのような「議論の場」の提供に加え、個別テーマに応じて、事業性と公共性を両立させる設計、合意形成プロセス、推進体制づくりなどを含めた支援が可能です。
地域ビジネスの構想を「次のフェーズ」に進めたい、そのような課題意識をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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