【開催報告】「2023年地政学リスクの日本企業への影響と取るべき対応」

2023-02-03

PwC Japanグループは2021年10月、「非連続」な時代において複雑に入り組む企業のさまざまな課題を支援するため、グループ横断で経済安全保障・地政学リスク対策支援チームを立ち上げました。2023年1月19日に開催した講演会では、チームリーダーでPwCコンサルティングパートナーの齋藤篤史、PwCの戦略コンサルティング部門であるStrategy&シニアマネージャーの松山裕幸、地政学リスクアドバイザリーリードのピヴェット久美子が、最新の地政学リスクの現状と企業が直面する課題、取るべき対応について紹介しました。

【ポイント】

  • 地政学リスクの判断に際し、従来の経済合理性に基づく分析では情勢を見誤る可能性
  • 「目的」により、地政学リスク対応を誰がリードすべきかは異なる
    全社戦略ならCSO(経営企画)、有事への備えならCRO(リスク管理)、個別事業へのシナリオ分析なら事業の担当役員がそれぞれ主導する体制が望ましい
  • 経営トップの会議体レベルで、テーマに沿った社内体制のあり方を方向付ける必要
    経営会議やERM委員会など既存の会議体のほか、地政学専門の新会議体の創設も有効になる
  • 外部知見の活用も含め、インテリジェンス確保をいかに継続するかが鍵
    外部環境の情報収集だけでなく、経営のリスクや機会につながる要因を把握する。インテリジェンスと成功事例を経営層で共有し、「組織知」として積み重ねる

経済・社会情勢が目まぐるしく変わる中、企業経営の先行きはますます見通しにくくなっています。今や地政学リスクは経営判断の重要な1つのものさしになっています。一方、適切に判断するには従来の経営課題とは異なる3点を理解し、考慮しなければなりません。

木村 浩一郎
PwC Japanグループ代表

齋藤 篤史
PwCコンサルティング合同会社 パートナー

1つはステークホルダーの行動ロジックの違いです。経済合理性に基づく従来型の経営判断だけでは、予見可能性を見誤ってしまう懸念があります。当該国・地域が抱える歴史的背景、行動原理などをきちんと見定めるインテリジェンスがより重要になります。

2つ目はリスクへの対応単位の違いです。不確実な時代だからこそ、スピード感を高め、横断的な権限を明確にしてさまざまなリスクに備えることが重要になってきます。

3つ目はリスクに対応する組織階層の違いです。各組織で情報連携を密にし、さまざまなリスクを経営判断の遡上に乗せるには、グループのコミュニケーション力がますます必要になります。

先行する企業の事例を紹介します。グローバル展開するコングロマリット企業は、経営企画とインテリジェンスの2部門が共同で地政学リスクに関するプロジェクトを立ち上げました。情報を集約して複数のリスクシナリオを定義し、それぞれがどの事業にどんな影響を及ぼし、どう対策を取ればいいかを分析しました。その中で個別のリスクについて蓋然性の高い未来を予想するのはやはり難しいと判断し、まずはリスクテークへの基本的な考え方を共通認識として固め、そのうえで経営戦略に落とし込むという検討を進めました。

ピヴェット 久美子
PwC Japan合同会社 シニアマネージャー

松山 裕幸
PwCコンサルティング合同会社 Strategy&
シニアマネージャー

製造業でも同じような動きがあります。全社的なリスクマネジメント(ERM)を一段高め、最大の懸念に挙がる「台湾有事」を念頭にヒト・モノ・カネのシナリオ分析をERM事務局を担う経営企画とともに進めました。デジタル化やルール変更といった地政学リスク以外の外部環境の変化にも目を配り、事業部もしっかり巻き込み、グループとしてリスクへのしなやかさ(レジリエンス)をどこまで高められるか、という取り組みを進めています。

中国市場への依存度が比較的高い企業では、実際に台湾有事が発生したとしてもいかに事業を継続するかを議論しています。インパクトの大きい事業、起きる可能性が高いリスクなどを洗い出し、グループ経営に照らし合わせて実行する優先順位を付け、今から実行に移せる対策をグループで共有しました。その過程でサプライチェーンの「見える化」に取り組み、どこに中国企業が関与しているかをまず把握できるようにすることも多くの日本企業にとって課題となります。こうした取り組みもリスクへの対応のヒントになるかもしれません。 

網の目のように広がるリスクと機会の芽を、いつ、どのように把握して経営戦略に生かすか。土台となるのは外部環境へのインテリジェンス機能を高度化しながら持ち続けることです。必要なインテリジェンスの中身は企業ごとに異なります。単に情報を外部から得るだけでは効果的とは言えません。グループの各事業や既存の経営戦略と紐づけ、どんな情報がどれだけ経営に影響を与えるのかをきちんと見極めることが、日本企業の半歩先の未来を明るく照らす一助になると考えています。

※法人名、役職、内容などは掲載当時のものです。

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主要メンバー

齋藤 篤史

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

ピヴェット 久美子

ディレクター, PwC Japan合同会社

Email

松山 裕幸

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

Email

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