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(左から)Natasha Santos氏、市來 南海子、太田 史生氏、Bambi Semroc氏、Daniel O'Brien
Bambi Semroc氏
コンサベーション・インターナショナル
Senior Vice-President, Sustainable Lands + Waters
太田 史生氏
味の素株式会社
コーポレート本部 サステナビリティ推進部 環境グループ シニアマネージャー
Natasha Santos氏
Bayer AG
Crop Science Division Vice President, Head of Sustainability & Strategic Engagement
Daniel O'Brien
PwCカナダ
パートナー、Sustainability and Climate Change
市來 南海子
PwCサステナビリティ合同会社
シニアマネージャー
2024年、コロンビアで開催された生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)は、世界各国の政府、企業、市民社会が一堂に会し、生物多様性の保全と持続可能な利用に向けた議論を深める場となりました。2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)」の実施に向けた取り組みが加速するなか、企業や産業界においてもネイチャーポジティブの考え方をいかに事業戦略へ組み込むかが問われています。
その一環として、私たちはCOP16のサイドイベントとして「アグリ・フードシステムの未来:ネイチャーポジティブ実現に向けた再生農業の実践」をテーマにネットワーキングイベントを開催しました。近年、再生農業は、気候変動対策や土壌の健全化にとどまらず、生物多様性の回復にも貢献する手法として注目を集めています。従来の持続可能な農業が「環境への悪影響を最小限に抑える」ことを目的としていたのに対し、再生農業は「生態系を積極的に回復・再生する」ことを重視するアプローチです。
本イベントでは、国際NGO コンサベーション・インターナショナル、日本の食品会社 味の素、ドイツの化学・製薬企業Bayer AGからゲストスピーカーをお迎えし、アグリ・フードセクターの直面する課題を踏まえて、再生農業の必要性、課題、成功のための要諦について、事例を交えて議論しました。ゲストスピーカーのパネルディスカッションを受け、農業資材・食品・飲料メーカー、金融機関、NGO、スタートアップなどさまざまなセクターから参加した約140名が再生農業とネイチャーポジティブの実現に向けた対話を行う機会となりました。本稿では、登壇者の発言の要旨をまとめ、議論の主な内容をご報告します。
再生農業は、人々に持続可能な未来をもたらすための鍵です。2050年までに世界の人口が90億人に達すると予測されており、これらの人々の食料を確保しなければなりません。しかし、現在、地球の約40%の土地と70%の淡水が食料生産に利用されています※1。さらに、世界の食物生産の42%(カロリーベース)は、3つの主要穀物によって賄われています。既に進行している土壌劣化がこのまま進めば世界の農地は60年以内に使えなくなる可能性があり、現在の食料生産は温室効果ガス(GHG)排出の30%を占めています※2。全体として、これらは脆弱なシステムです。PwCのリサーチによると、干ばつと熱波が小麦やトウモロコシに与える影響が明らかになり、最も温暖化が進んだシナリオでは、コメの90%、トウモロコシの30%、小麦の50%が熱波や干ばつなどの深刻なリスクにさらされることが分かっています。このため、さらにレジリエントになる必要があり、そのためには価値システムそのものの変革が求められます。食品会社や農業関係者、金融機関がアイデアを共有し、農家だけでなく全てのステークホルダーが協力して実現可能なアクションで課題に取り組むことが必要です。
続いて、再生農業に関する先進的な取り組みを進めてきている3つの企業/組織より、各社が進めてきた事例紹介と今後の再生農業のさらなる推進に向けた要所をお話しいただきました。
Bambi Semroc氏
コンサベーション・インターナショナル
Senior Vice-President, Sustainable Lands + Waters
コンサベーション・インターナショナルでは従前より再生農業に自然な農法として注目してきました。再生農業が重要である理由は、土地を再生産可能で持続的に利用することができるためです。さらに、この農法は周囲の自然環境を再生し、コミュニティと人々に持続可能な生活を提供します。しかし、スケールアップのためには壁があります。再生農業への変革のために人々(前の世代の人々を含む)を説得することは容易ではなく、次のことが必要です。再生農業がどのように実施されるべきかの規範、全員がアクセスできるインセンティブ、人々が確実に変革できるように説明責任を負うことです。コンサベーション・インターナショナルでは再生農業という言葉ができる前から、35年間、再生農業と関わってきました。現在も農業を通じて環境やコミュニティを守る方法を模索しており、農場にある一本の木をどのようにケアするか、マーケットが再生農業の価値をどう感じてくれるかを考え続けています。
太田 史生氏
味の素株式会社
コーポレート本部 サステナビリティ推進部 環境グループ シニアマネージャー
味の素株式会社はサトウキビやコーヒーなど、さまざまな原材料を東南アジアや南米から調達し、バリューチェーンを通じて自然と多くの接点を持っています。MSG(注:グルタミン酸ナトリウム、「味の素®」の主な原材料)だけでなく、最近はバイオスティミュラント農業肥料のビジネスも始め、持続可能な農業の実践を目指しています。味の素は原料調達の持続可能性の向上を目指していますが、再生農業の実践にはまだ多くのパートナーが必要だと考えています。
Natasha Santos氏
Bayer AG
Crop Science Division Vice President, Head of Sustainability & Strategic Engagement
Bayer AGのクロップサイエンス部門では、デジタルソリューションなどを提供する農家向けサービスを展開しています。3年前、再生農業に関してスケールアップし、新しいポートフォリオとビジネスモデルを展開するという発表を市場に向けて行いました。再生農業には6つの成果があります。それはGHG削減、社会的な側面での農家への貢献、コミュニティ、生物多様性の保護、水質の向上、土壌の質の向上です。バイエルが再生農業を推進する理由は2つあります。1つ目は、気候変動により農家が大きなプレッシャーを受け、収量が不安定になっていることです。2つ目は、競争力のアドバンテージです。Bayer AGは研究により農家のレジリエンスを高めるイノベーションやソリューションを提供できます。以上の理由で、今こそ再生農業をバリューチェーン全体でスケーリングする時期と考え、Bayer AGも再生農業にフォーカスし始めました。現行の施策としては、米国やブラジルなどで農家に再生農業を導入してもらうための、カバークロップなどの具体的なソリューションサポートを提供しています。ひとシーズンで完成するものではないので、ソリューションだけでなく保険などの短期インセンティブも与え、農業アドバイスも行い、数年単位で再生農業導入とスケーリングを達成しようとしています。トウモロコシやコメなど他の穀物でも取り組んでいます。他の穀物の再生農業ソリューションを開発している方がいれば、ぜひ声をかけてください。
アグリ・フードシステム全体の変革には、システミックレベルでの変革が必要ですが、1社では実現できません。パートナーシップが必要です。
生物多様性条約COP16という場で行われた今回のネットワーキングイベントは、参加者間で再生型農業の未来に向けた多様な視点を提供し合い、今後の取り組みのヒントとなる重要な機会となりました。PwCは今後も、変革を促すことに貢献していきます。
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