【開催報告】

日本のモビリティ産業の発展とスマートモビリティ総合研究所が果たす役割

  • 2026-02-06

スマートモビリティ総合研究所は2025年10月20日、Community hub設立イベントを開催しました。

スマートモビリティ総合研究所は、モビリティ社会に関わるステークホルダーの企業内・企業間での連携や、各企業や産業全体の発展に資する情報発信を加速させることを目的として2025年2月にPwCコンサルティングの下設立された組織です。本研究所は同年9月、モビリティ産業内外の関係者が集まり、新たな価値創造やビジネス連携を対面で行える場としてCommunity hubを開設しました。

Community hubのオープニングに際して行われた本イベントでは、多様な知見を持つ産官学の関係者が集いました。イベントの前半では、スマートモビリティ総合研究所所長の矢澤嘉治と副所長の川原英司がモビリティ産業の現状や変化、そしてスマートモビリティ総合研究所の役割について説明しました。

後半は「モビリティ産業における企業間連携の在り方」をテーマに、有識者3名によるパネルディスカッションが行われ、活発な議論が展開されました。

モビリティ産業の現状と変化、スマートモビリティ総合研究所の役割

スマートモビリティ総合研究所の所長 矢澤 嘉治と副所長 川原 英司が、モビリティ産業を取り巻く現状と変化について、また、それを受けて設立したスマートモビリティ総合研究所が果たす機能について説明しました。

スマートモビリティの市場動向

モビリティ産業は、SDV(Software Defined Vehicle)や自動運転といった技術革新が継続するとともに、DXやグリーントランスフォーメーション(GX)といった社会的なトレンドにも強く影響を受けています。スマートモビリティ総合研究所の推計によると、2023年のスマートモビリティ市場は約130兆円規模で、2030年には約3倍の390兆円の規模へと成長することが見込まれます。このような状況の中で、モビリティ産業外の人や消費者も広く巻き込みながら、ハードウェアとソフトウェア、製品、サービスが高度化していく社会のことを、PwCコンサルティングはスマートモビリティ社会と定義しています。

図表1:スマートモビリティ市場規模

モビリティ産業に貢献する4つの機能

スマートモビリティ総合研究所は、「モビリティ産業の変革と発展を通して社会を豊かにする」ことをパーパスに掲げ、PwCコンサルティング/PwC Japanグループが日々のクライアント支援を通して得た知見やノウハウを提供することにより、日本のモビリティ産業の発展に貢献したいと考えています。また、その活動内容はPwCグローバルネットワークでも共有し、米国、欧州、中国などとも情報を共有しながら取り組んでいます。

スマートモビリティ総合研究所には4つの機能があります。

1つ目は、産業特有の課題や社会のニーズを明らかにし、変化の時代を勝ち抜いていく産業アーキテクチャをデザインする機能、2つ目は、産業内外の関係者がリアルに集う「場」を提供するCommunity hubの機能、3つ目は、Communityなどを通じて得た有益な情報を発信する機能、4つ目は、これら活動を通じて獲得したマクロの動向や幅広いデータをシンクタンク的に統合して分析するインテリジェンス機能です。これらの機能を果たすことにより産業内外の共創を促し、信頼されるhubとなることを目指しています。

図表2:スマートモビリティ総合研究所の4つの機能

産業アーキテクチャを描く重要性

スマートモビリティ総合研究所の機能のうち、企業の戦略策定に大きく関わるのが産業アーキテクチャです。

変化と成長を続けるスマートモビリティ市場で継続的に価値を提供し、適正な利益を生み出すためには、産業の全体像を表すアーキテクチャを踏まえ、自社が勝負するドメインを選定する必要があります。

サービスを例にすると、産業内のプレーヤーとそれぞれの特徴を把握することで、自社のサービスの強みを発揮し、スケールしやすいオペレーティングモデルの設計に注力できるようになります。また、プラットフォーム、インフラ、クラウド基盤、アプリケーションなどの提供者と連携することによって、サービス開発の負担を抑えることもできます。またモビリティ産業全体では、モビリティの内と外、In-carとOut-carの両面でユーザーに多様な価値を提供できるようになり、似たサービスが乱立したり、レガシーが生まれたりするのを防ぐことができます。

より戦略的な観点では、これからのモビリティ産業で戦っていくためには、既存領域のトランスフォーメーションと、技術革新から生まれる新しい領域での戦い方を同時に考え、マネジメントしていくことが求められます。過去を振り返ると、半導体やリチウムイオン電池といった新たに伸びた領域での日本のモビリティ産業のシェア獲得や、事業のスケール化に課題が見られる傾向がありました。今後の変化を成長機会にしていくために、産業アーキテクチャが示す将来像を念頭に置きながら戦い方を見極めていくことが重要です。

パネルディスカッション「モビリティ産業における企業間連携の在り方」

後半のパネルディスカッションでは、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科研究科委員長/教授の白坂 成功氏、環境省環境再生・資源循環局総務課資源循環ビジネス推進室 室長の河田 陽平氏、一般社団法人モビリティサービス協会代表理事の中島 徳至氏の3名がパネリストとして登壇しました。ファシリテーターはスマートモビリティ総合研究所副所長の川原 英司が務めました。

このディスカッションでは、「モビリティ産業における企業間連携の在り方」をテーマに各パネリストがそれぞれの専門分野の視点から意見を発表し、モビリティ産業の未来とアーキテクチャについて議論を深めました。

パネリスト

慶應義塾大学大学院
システムデザイン・マネジメント研究科
研究科委員長/教授
白坂 成功氏

環境省 環境再生・資源循環局総務課
資源循環ビジネス推進室 室長
河田 陽平氏

一般社団法人モビリティサービス協会
代表理事
中島 徳至氏

ファシリテーター

PwCコンサルティング合同会社
スマートモビリティ総合研究所 副所長
川原 英司

白坂氏は、産業アーキテクチャの重要性と描き方について、専門である宇宙開発分野を例に説明しました。人工衛星の打ち上げサービスでは、事業者はサービス内容を考えるだけでなく、ロケット本体や打ち上げ場所を確保する必要があり、それらを垂直統合することから事業が始まります。しかし、産業が成長していくと、アーキテクチャ内のプレーヤーが増えて事業構造が水平統合に向かいます。航空産業がその一例です。過去を振り返ると、かつては大手の航空機メーカーがあらゆる業務を自社で行っていましたが、今は旅客サービス、航空機の管理、空港運営といった分業体制で産業が成立しています。また、役割の分離と分担が進み、それぞれが専門性を高めることによって産業全体が成長しています。

このような成長をアーキテクチャ側から見ると、スマートモビリティの産業アーキテクチャが広く認識されることによって多様な事業者が集まります。それら事業者を整理したアーキテクチャを参照しながら、各事業者が強みを発揮できるサービスを生み出すこと、また、サービス同士の連携が進むことにより、日本のモビリティ産業が世界で戦える産業として成長していきます。

環境省で資源循環ビジネスを推進している河田氏は、欧州で始まっている自動車向けの再生プラスチック利用の規制を例に、日本のモビリティ産業が取り組む資源循環ビジネスとELV(End of Life Vehicle)活用について説明しました。

環境負荷軽減につながる資源循環の推進を目的として、欧州では新車生産の際に一定量のELV由来のプラスチックを使うことを義務化する動きが進み、今後は鉄やアルミなどの再生材利用にも広がっていくと予想されています。これは日本のモビリティ産業にも影響します。というのも、日本の自動車生産台数の約半分が欧州を含む輸出向けで、欧州向けのみに再生材を使ったパーツを作るのは非効率であるからです。

このトレンドに対応するためには、新車生産で資源を使う動脈側と、ELVの処理などで再生資源を生み出す静脈側をつなぐ必要があります。国内のモビリティ産業は、動脈と静脈の連携実績が少なく、共通言語を持たないまま成長してきた経緯があるため、縦割り構造に横串を刺し、対話を成り立たせる仕掛けを早急に作らなければなりません。その課題を共有し、スマートモビリティ総合研究所を含むあらゆる場を活用しながら連携を強化していくことが求められています。

モビリティサービス協会の代表理事を務める中島氏は、ユーザーに近い立場で各種サービスや製品を作る重要性について説明しました。モビリティサービス協会は、ユーザー視点に立った多様なモビリティサービスを世に送り出すことをミッションとしています。また、そのために世の中が何を求めているのかをつぶさに観察し、ペインポイントの解消に向けて活動しています。

例えば、協会内には遠隔起動制御サービス部会がありますが、会員企業は遠隔起動制御の分野で、世界17カ国で約350の特許を取得しています。遠隔起動制御技術は、車両の起動可否を遠隔から管理することで車両盗難防止や飲酒運転防止に貢献しており、さらにフィンテックサービスと組み合わせてクルマを使った就業や生活の安全性向上にも活用されています。アーキテクチャデザインでは、このような新しい視点と技術を反映させるとともに、地方の交通空白、物流の効率化、保険とファイナンスといったテーマで産業横断の連携を可能にしていくことが重要です。

今回のイベントは、業界や組織の枠を超えたコミュニケーションを通じ、スマートモビリティの理解を深める機会になりました。スマートモビリティ総合研究所はCommunity hubの機能をさらに拡張し、クライアントと日本のモビリティ産業の発展を支援していきます。

主要メンバー

矢澤 嘉治

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

Email

川原 英司

スペシャルアドバイザー, PwCコンサルティング合同会社

Email

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