【登壇報告】

自動車技術会 持続可能な自動車社会検討部門委員会 第11回委員会

  • 2026-04-08

2025年12月17日、公益社団法人 自動車技術会主催の持続可能な自動車社会検討部門委員会 第11回委員会において、PwCコンサルティング合同会社 スマートモビリティ総合研究所でモビリティGX & Ecosystemプログラムディレクターを務める細井 裕介とZEV & Energy テーマリーダーである志村 雄一郎が、大型車のカーボンニュートラル化および自動車産業におけるサーキュラーエコノミー実現に関する講演を行いました。
本委員会は、自動車産業の脱炭素化・資源循環といった中長期的なテーマについて、産官学の有識者が集い、技術・ビジネス・政策の観点から多角的に検討を行う場として継続的に開催されています。第11回委員会にも産官学の多様な関係者が参加し、講演後には委員との間で活発な意見交換がなされました。本稿ではその講演の概要をご紹介します。

(1)大型車のカーボンニュートラル化に向けた課題と方向性

欧州では、2050年までに運輸部門のCO₂排出量を大幅に削減する目標のもと、大型車を含むZEV(ゼロエミッション車)化比率や充電インフラ整備の数値目標が掲げられています。こうした政策的後押しを背景にバス・トラック分野でも電動化も進展しつつあります。一方で、中・大型BEV(バッテリー式電気自動車)のシェアは現状ではまだ低く、普及は緒に就いた段階にあります。

今後、中・大型トラックのBEV化が進むためには、商用車用途に耐えうる急速充電ネットワークの整備(メガワット充電網)や、新たな導入促進のインセンティブ設計が鍵になります。実際、直近のEVS 38(Electric Vehicle Symposium)ではMGS(Megawatt Charging System)を採用した充電器が多く展示され、利便性の向上のためのインフラ整備に対する期待の高さが表れていました。また、業界一丸で欧州幹線のメガワット級充電網構築に取り組むなどさまざまな動きが見られます。

加えて、インセンティブ設計の面でも欧州各国で政府による支援が進められています。特に中・大型BEVの普及が進むスイスでは、大型車に課される距離課金制度をBEVに対しては免除することでBEVへの転換を促し、実際の導入に成功しています。

また、大型車のカーボンニュートラル化の選択肢としてはBEV・FCV(燃料電池自動車)に限られず、HVO(水素化処理植物油)やバイオメタン、e-fuel(合成燃料)などの代替燃料も想定されています。現時点では合成燃料・バイオ燃料は既存燃料に対して製造コストは高いものの、将来的にはバイオメタンやHVOを中心にCO₂削減効果を織り込むと一定のコスト競争力を持つ可能性も指摘されています。そのため、技術動向等を踏まえた今後のコスト推移を注視する必要があります。

図表1:2035年における次世代燃料のコスト試算例

代替燃料の実現に向けては、地域の特性に即した燃料の在り方を検討することも重要です。例えばバイオメタンの原料には、家畜糞尿など畜産業が盛んな地域で発生するものがある一方、下水汚泥・食品廃棄物など都市部を中心に発生するものもあります。そのため、原料の発生特性を踏まえた地域別の燃料サプライチェーン網の構築が欠かせません。

さらに今後こうした新たな燃料が普及するには、政府主導でのトップダウンの政策のみならず、荷主・物流事業者・自治体など需要側からのボトムアップでのコミットメントも重要な鍵となります。

(2)自動車産業のサーキュラーエコノミー

主要国は気候変動目標とBEV化目標を掲げ、補助金やCO₂規制・開示規制などインセンティブと規制の両輪で政策を進めていますが、現在米国での環境政策方針の転換や欧州での規制の見直しなど、政策面での揺り戻しが起こっており、日本でもBEV導入は停滞しています。
日系OEMのモノづくり・ハードウェアに対する強みを生かしつつ気候変動への対応を進めるには、従来のようなアプローチだけではなく、自動車バリューチェーン全体を捉えたサーキュラーエコノミーについても検討する必要があります。
自動車サーキュラー実現に向けた「5つの要所」として、A:技術産業化、B:他産業との連携(X to Car / Car to X)、C:機能の統合化・集約化、D:グローバル競争、E:データリソースサーキュレーションが挙げられます(図表2)。

図表2:自動車サーキュラー実現における5つの要所

A:まず、サーキュラーエコノミーを経済合理性をもって成立させるためには、徹底的な技術産業化が必要です。中古車流通における査定・解体・選別など従来は人手と経験に依存してきたプロセスを、AIプライシング、ロボティクス、光学・比重選別などにより高度化し、循環ビジネスを「産業」として成立させることが考えられます。
B:また、自動車産業と他産業における品位要求の違いから、他産業と連携することでサーキュラーを促進できる可能性があります。包装・建設分野で利用が進む再生プラスチックを自動車に取り込む「X to Car」の視点や、自動車と電力産業が連携し、車載バッテリーをV2G(Vehicle to Grid)や二次利用(リパーパス)で活用する「Car to X」の事例が挙げられます。
C:このようなサーキュラーエコノミー実現に必要な機能は複数のユースケースで共通するものであり、機能を統合化・集約化することで、効率的なサーキュラーバリューチェーンを構築できます。
D:さらに、グローバル競争の観点では、日本の自動車は輸出比率が高く国内ELV(End of Life Vehicle)が限られるため、海外での都市鉱山開発やサーキュラー機能への参画を通じた再生資源の調達力強化も求められます。
E:これらを支えるデータの観点では、トレーサビリティデータにより資源循環をサポートすることでカーボンフットプリント(CFP)算出や品質保証などの付加価値が生まれます。

気候変動目標とBEV化目標の達成に向けては、このような自動車サーキュラー実現の要所を押さえながら、各社のサーキュラービジネス戦略、社会としてのエコシステム形成を検討することが求められます。

主要メンバー

細井 裕介

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

志村 雄一郎

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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