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2025-07-31
※2025年6月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーションニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。
※本記事は2025年6月下旬時点の情報に基づき作成しています。「大きく美しい法案」は7月に可決済みですが、税控除対象のタイムラインなどは執筆時点から若干修正されています。
第二次トランプ政権の発足により、米国内ではクリーンエネルギーへの逆風が強まっていると言われています。その結果、米国では再生可能エネルギーへの投資に対して躊躇する動きが見られ、実際に2025年1~3月の3カ月間で、米国内の大型クリーンエネルギー関連プロジェクト16件が撤回され、投資撤回総額は約80億ドル規模となりました※1。しかしながら、クリーンエネルギーを電源別などで細かく見ていくと、状況には違いが出てきています。本稿では、米国において逆風下でも継続的な投資が見込まれるクリーンエネルギー分野について考察します。
2025年5月に米国議会下院で可決された「大きく美しい法案(One Big Beautiful Act)」には、ほとんどのクリーンエネルギー向け税控除の廃止が盛り込まれており、バイデン政権下で導入されたIRA(インフレ抑制法)などの気候変動対策計画を覆す内容となっています。この法案が上院でも可決された場合、特に風力・太陽光の発電プロジェクトは、期限切れの前に税控除を受けるために、「法案可決後60日以内の建設開始」または「2年以内の稼働開始」が必要とされています。このタイムラインが設定されると、着工準備が整っている一部のプロジェクトを除き、多くが税控除の対象外となる可能性があります。この法案が可決された場合、クリーンエネルギーの成長は止まってしまうのでしょうか?
風力発電に関しては、当面の見通しは厳しいと言わざるを得ないでしょう。トランプ氏は大統領選挙期間中から、「洋上風力発電を就任初日に終わらせる」と発言し、実際に就任初日から「風力発電プロジェクト許可の見直し」などを含む大統領令を発しました。現時点でトランプ氏から最も批判されているクリーンエネルギーが風力発電であり、政権交代による悪影響が注目されていますが、実は(洋上)風力発電は、トランプ政権以前から、立地や送電インフラの制約、部材費の高騰といった課題に直面し、発電原価が高止まりしているという問題を抱えていました。
一方太陽光発電に関しては、風力と並列で語られることが多いものの、今回の危機を乗り越えるだけの力を持っています。太陽光発電の米国内でのLCOE(Levelized Cost of Electricity:均等化発電原価)※2は、IRAなどの税控除支援がない場合でも、天然ガスよりも低くなるという報告が米国エネルギー情報局から発表されています(2025年4月発表※3)。したがって、太陽光発電に関しては、IRAによる税控除がなくなったとしても、ガスなどの他火力発電と比較して、経済的な競争力を維持できる可能性が高いと考えられます(図表1)。
図表1:米国内各種電源のLCOE比較
※U.S Energy Information Administration発表Annual Energy Outlook 2025から作成
税控除削減(廃止)の逆風がある反面、AIの隆盛による電力需要の急増という追い風もあります。米国では、より大規模な発電所が必要になっており、資産運用会社が商業規模で米国最大の太陽光発電所の所有会社を買収するという動きも出てきています。現在、発電資産の価値は上昇傾向にあり、経済的にも競争力を持つと考えられる太陽光発電は、発電資産への投資先としても注目されています。
「大きく美しい法案」では上に述べた風力・太陽光発電を含む幅広いクリーンエネルギーに対する税控除の段階的廃止が盛り込まれました。一方で、SAF(持続可能な航空燃料)などのクリーン燃料の生産に対する税控除は、2031年まで延長されることになりました。下院での法案可決に先駆けて、バイオ燃料業界を今まで競合と見なしてきた石油燃料業界が、電気自動車への対抗策として、液体燃料の普及に向けてバイオ燃料業界と団結したという声明を発表するという出来事がありました(両団体は2025年2月に、団結した旨の声明を発表※4)。SAFに対する税控除支援の延長の背景には、石油業界が関与するバイオ燃料生産への配慮が理由として考えられます。
また、石油・ガス業界が推進するCO2回収・貯留技術(CCS/CCUS)への税制優遇についても、現状維持となっています。これらの方針から、石油・ガスに関連するクリーン燃料や技術は、トランプ政権下でも支援対象となっているということが分かります。
トランプ政権発足直後は、冒頭で述べたクリーンエネルギーからの投資引き上げという反応がありましたが、現在では、電源・燃料別の先行きに徐々に違いが見えてきています。太陽光発電は、既に政策支援がなくとも成長が見込まれる段階に来ており、SAFやCCS/CCUSについては、継続した支援が見込まれます。米国では、全面的な脱炭素からの方針の転換が図られていますが、世界的には気候変動は進行しており、トランプ政権以降も見据えた脱炭素への取り組みは欠かせません。こうした状況を踏まえ、長期的な視点を持ちながら、現時点の米国においても成長状踏長期視持現米長の可能性があるクリーンエネルギー領域を見極め、投資を検討していくことが今求められています。
PwC Japanグループでは、カーボンニュートラルとエネルギー安定供給の両立を目指し、グリーンエネルギーの普及や分散化の促進を通じて、多様な業界/クライアントにおけるビジネスの新たな価値への転換を支援します。
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注釈
※1:米国超党派ビジネス団体E2発表(外部サイト)による。
※2:電源ごとに、建設単価・燃料費等を想定し、発電コストを評価・試算する方法。電源そのものの経済性を評価するために有効。(資源エネルギー庁より)
※3:米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration)発表レポート - Levelized Costs of New Generation Resources in the Annual Energy Outlook 2025(外部サイト)
※4:米国石油協会(American Petroleum Institute)および先進バイオ燃料協会(AdvancedBiofuels Association)両団体から米国環境保護庁(Environmental Protection Agency)向けに出された書簡(外部サイト)
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