
【セミナー】CLOに求められる、持続可能性と競争優位性に貢献するサプライチェーンネットワーク構築
PwCコンサルティング合同会社とCoupa株式会社は2025年6月13日(金)に、表題のセミナーを対面で開催します。
2023-10-12
※2023年8月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーション ニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。
再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電の公募入札第2ラウンドの資料提出が6月末日に行われました。結果が判明するのは最短で12月、秋田2海域の利用港湾重複での再提案となれば来年3月の発表となりますが、本件は第1ラウンドに続く1GW(発電量)以上の整備となります。3月末には4GW以上に及ぶ大規模な太陽光発電の認定が失効となったことをはじめ、景観保全などを理由に地元からの反対が相次ぐ陸上風力発電、燃料費高騰の煽りを受けるバイオマス発電や、大きな漏出事故のあった地熱発電など再エネに逆風が吹く中、日本における洋上風力発電は海に囲まれているという地理的環境を活かせる点において、次世代の主力電源になることが期待されています。
政府は認定分を含めて2030年までに10GWの洋上風力発電の導入を目標として掲げていますが、世界では268GW(うち確実視されているもの128GW※1)が見込まれています。今後、政府の目論見どおり毎年1GWベースで増やせるかは、予定する海域の漁業者を含めた地域住民との合意形成がどれだけ進められるかにかかっていますが、深刻な懸念点が4つあります。
1つ目は、セントラル方式の導入が図られることで、これまでは再エネデベロッパーが担ってきた地域住民の合意形成過程をサポートするアドバンテージが下がるという点です。日本では北に行くほど偏西風の影響で発電効率が高くなるのですが、秋田県などと異なり、地域経済に占める沿岸漁業の比率が大きい北海道では、促進区域指定のための合意形成を図るには相当な時間を要することが懸念されます。また欧州などと異なり、領海内のみでの整備が現行法の規定である日本では、沖合わずか数キロの場所に200m近い巨大構築物が立ち並ぶことになります。日本人にはなじみがない景色であり、現在の陸上風力と同じように景観の問題で地元から反対運動が起きる可能性があります。
2つ目は、今年になってから欧州や台湾の洋上風力事業が採算性の悪化に続々と見舞われており、大手開発業者らが巨額の解消金を払って事業の中止や大幅見直しを行っているという点です。また風車サプライヤーも、中国を除けば世界3大業者が寡占市場を謳歌していたのが、風車の大型化競争と稼働後の性能保証の板挟みにあい巨額の赤字を計上する事態に陥っています。世界シェア1位のメーカーですら本体からの切り離しが噂され、実際に日本の第2ラウンドではサプライヤーとしての活動を聞きません。
3つ目は、リスクを背負い過ぎた過度な価格競争が続いているという点です。日本では社会インフラ整備の手法であるPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)やコンセッションにおいても、導入からしばらくは激しい価格競争入札が続き、その後皆が冷静になって均衡状態に収束するというパターンが慣例ですが、洋上風力もそのパターンを歩みそうです。第1ラウンドの衝撃的な低価格による3海域独占から、第2ラウンドはFIP(フィード・イン・プレミアム)の導入と運転開始の早期化を評価するというルールの見直しが図られたにもかかわらず、最低価格が3円という欧州でも到達できていない価格が設定されました。これにより、勝てる価格水準が読めなくなった事業者は、表の入札価格(FIPの基準価格)とは切り離して、裏の販売価格(事業会社への直接電力販売を前提とした価格)により入札を行うというインセンティブが働いています。
しかし、FIP入札が先行して始まっている太陽光発電と異なり、洋上風力発電は入札から電力供給開始までに8~10年もの時間がかかる上、さらにその時点から20年近くにわたる超長期の電力購入がプロジェクトファイナンス上の条件となります。入札時点で購入契約や購入予約などをしてもらえるわけはなく、当事者同士の合意だけが頼りとなるため、落札後もFID(最終投資決定)やFC(融資契約締結)といったイベントの度に相手の意向を確かめながらの事業展開が待っています。また、洋上風力は風況次第で発電量が大きく変動する上に、メガソーラーなどとは発電量の桁が1つ異なります。これを吸収できるほどのバランシンググループや大規模調整電源を持つアグリゲーターは日本ではまだまだ発展途上であり、こういった課題が解決されるにはまだ市場が未成熟です。
最後の4つ目は、これからの日本社会を覆う、労働人口減に伴う人件費上昇を主因としたインフレが予想される点です。欧州での風車や船舶といった資本費上昇の影響を受けるのはこれからですし、外資プレイヤーの海外事業に対するスタンスの変化も予想されます。さらに、最近観測されている海水温の上昇は過去の風況データの信頼性を損なわせ、欧州と同様に洋上風力事業の採算性予測を著しく難しくするでしょう。
このままリスクが高く、資金化にも時間がかかる状況が続けば、大資本という裏打ちのある企業や、再エネに事業転換していくしかない企業しかこの市場に残らなくなるでしょう。第2ラウンドの結果で判明するのは、CPPA前提で大量に再エネを売り裁く販売力と、洋上の出力変化に対応可能な大きなバランシンググループを持っている企業しか低価格を提示できず、勝てないという事実です。これでは本来の整備・運営の効率性や迅速性を競うというあるべき競争になっておらず、それらを持つ者と持たざる者との間で、再び審査方法の見直しについての議論が巻き起こるでしょう。
では、これらの課題を解決し得る制度設計として、何が考えられるでしょうか。例えば「EEZを含めた大規模な海域占有の入札」と「入札から運転開始までを極めて短くしたFIPベースの施設整備入札」の2段階方式にすることは1つの方法です。供用開始までの期間が短ければ、本来のFIP制度の良いところを活かした価格入札が行われるでしょうし、海域が確保できた事業者は焦ることなく最適なタイミングを計らって入札する、「待つ」という戦略を採ることも可能となります。EEZであれば景観や漁業者との協議も、ずっと短時間のうちに合意することも期待できそうです。PwCでは「EEZにおける大規模浮体式での洋上風力整備が最終的には主流となる」と予想する事業者の方々に向けて「洋上風力浮体式参入戦略」サービスを提供しています。「着眼大局、着手小局」ということで、今のうちに打っておくべき「先手」について一度検討されてみてはいかがでしょうか。
※1:英国の調査会社4C Offshoreの見解に基づく
PwCコンサルティング合同会社とCoupa株式会社は2025年6月13日(金)に、表題のセミナーを対面で開催します。
PwC Japanグループは2025年6月4日(水)に、表題のセミナーをシンガポールで開催します。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所とPwCリスクアドバイザリー合同会社は2025年5月28日(水)に、表題のセミナーを対面で開催します。
化学産業の脱化石化は、世界的なネットゼロを実現する上で最も重要な要素の1つといえます。本レポートでは、基礎化学物質の脱化石化に向けた具体的な道筋を示し、予想されるCO2排出削減効果や必要な投資について説明します。