
【送配電事業に求められるビジネスモデル転換(第2回)】~レベニューキャップ制度による経営管理への影響~
日本の全需要家に影響する「レベニューキャップ制度」の解説、および経営管理への影響について説明します。
2022-04-28
※2022年3月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーションニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。
2050年カーボンニュートラル宣言をきっかけに、2021年は再エネ目標引き上げを盛り込んだエネルギー基本計画の策定から、再エネ大量導入に資する次世代ネットワークの検討に至るまで、送配電網を中心としたエネルギー産業全体が大きく変革するというターニングポイントとなりました。このような環境変化を受け、2021年にご紹介したレベニューキャップ制度(以下、RC制度)には、デジタル技術を活用した系統運用高度化による分散グリッド化推進や、再エネ導入量の複数シナリオ設定による設備拡充などが盛り込まれ、不確実性への対応に一層の力点を置いた機能が追加された上で、2022年度より事業者申請・規制当局審査が始まります。クライアントからPwCへのご相談内容も、2020年ごろまでは制度概要の解説が中心でしたが、直近では海外事例に基づく事業計画の高度化や、欧州の送電・配電事業者の知見に基づく申請・審査対応へとシフトしています。
日本では従前の総括原価方式からRC制度へのパラダイムシフトを円滑に進めるという激変緩和の観点から、先行する欧州の制度を画一的に適用するのではなく、第1期(2023~2027年度)は、エッセンスの一部を盛り込むという、スモールスタートになります。現在は、当該制度を日本の国情に併せてカスタマイズした導入プロセスおよび設計内容のとりまとめ(2021年11月)や、適正な収入上限算定に向けた指針の公表(2022年2月)がなされており、2022年度からの事業者申請・規制当局審査に向けた準備の最終局面に入っています。
先行する欧州では、導入から10年超が経過した国もあり、事業者の適応ナレッジや当局とのリレーションは相応に積みあがっていることは、実際の制度の運用動向に加え、PwC内で蓄積された海外送電・配電事業者の運用事例からも明らかです。この点、日本と比べて欧州の制度が特に進んでいる点は下記5点に概括できます。
換言すれば、これらの差異は今後の運用を通じ、徐々に解消できると想定されます。現に、CAPEX・OPEX査定における調達などは、実務の巧拙に係る第三者評価、将来的な海外事業者との比較、分散グリッド化推進の文脈で、海外で進展するフレキシビリティ活用においても言及されており、事業者にとっては「守り」の観点から、「規制・制度の変動リスク対応」の重要性が高まると考えられます。加えて、グローバルスタンダードとも言えるRC制度導入を通じて海外事業者の知見を獲得することは、国内の規制・制度への対応に留まらず、世界に誇る日本の高品質な送電・配電事業をグローバルに展開する布石になり得ることから、「規制・制度利活用」は「攻め」の機会と捉えられるのではないでしょうか。現に、海外事業の中には成果や計画の進捗を自主的に開示することで企業価値の向上につながった事例もあります。
以上のとおり、日本の事業者においては将来の環境変動リスクを織り込んだ事業計画策定を行うなどの国内制度への対応に加え、グローバル展開や、海外事業者に対する競争優位を確保する手段としてRC制度を利活用し、新たなビジネスモデルの構築につなげる視座が必要と考えられます。
PwCでは、RC制度導入を本格検討し始めた2018年から、経済産業省審議会での運営支援をはじめ、海外事業者の料金設計や事業計画策定から、事業のパフォーマンス分析や日本の比較優位性検討に至るまで、日本が参照すべき海外RC制度を運用レベルで調査・研究してきました。そして、これらの知見・実績を基に、審査対応を含む日本版RC制度自体の設計・実装から、グローバル展開に資する利活用戦略の策定・実行まで、幅広く支援しています。ご関心がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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