【エネルギー業界における、 VPPの事業化に向けたPwCの見解】~2050ネットゼロの実現に向けたVPPへの期待~

2022-02-02

※2021年12月に配信したニュースレターのバックナンバーです。エネルギートランスフォーメーションニュースレターの配信をご希望の方は、ニュース配信の登録からご登録ください。

今回は、「2050ネットゼロ(カーボンニュートラル)」の実現に向けて、エネルギー業界において進められているエネルギーリソース・アグリゲーションビジネスの根幹であるVPP(バーチャル・パワー・プラント)についての国内動向とPwCの考察をご紹介します。

エネルギーシステムにおける「3D」の潮流とVPPへの期待

第6次エネルギー基本計画が2021年10月に閣議決定され、国内エネルギー業界においては、エネルギーの供給事業者および消費者(需要家)の双方に「3D」への対応がより一層求められるようになりました。

3DとはDecarbonization(脱炭素化:2050年カーボンニュートラルの実現)、Decentralization(分散化:エネルギーの地産地消)、Digitalization(デジタル化:IoT技術の進展)の頭文字を取ったものであり、この3つの潮流より、火力発電など集中型の発電システムに依存せず、太陽光発電(PV)や蓄電池・電気自動車(EV)など、再生可能エネルギー(再エネ)を含む分散型エネルギーリソース(DER:Distributed Energy Resources)を活用したエネルギーシステムへの転換が求められています。

その中で注目されているのが、複数の拠点に点在する分散型エネルギーリソースを集約し、大規模な供給システムとして活用するエネルギーリソース・アグリゲーションビジネス(ERAB)であり、特に仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)の果たす役割に大きな期待が寄せられています。

VPPに関連する事業環境の整備状況

国内の「2050ネットゼロ」目標の実現と共調する形で、2016年度から6カ年におよぶVPPの実証が始まりました。電力需給バランスを維持するための「需給調整市場」や、再エネの価値を取引する「再エネ価値取引市場」が段階的に開設されるなど、VPP関連の足元の制度設計が進んでいます。

加えて、再エネ電源の主力化を目的として、再エネの価格に市場価格との連動性を持たせたFeed-in Premium(FIP)制度や、分散型エネルギーを集約し、事業者や電力取引市場に融通する「特定卸供給事業者(アグリゲーター)」のライセンス制度が2022年度より施行される予定となっており、VPPの商用利用は着実に近づいていると考えられます。再エネは右肩上がりの成長市場であり、再エネの普及と連動して、VPP関連市場も大きく成長することが見込まれています。

他方、VPPの商用利用への期待は高まっているものの、国内のVPP事業の先行きは不透明な状況であり、多くの事業者がさまざまな課題を認識しながら取り組んでいる状況です。実際に、PwCがVPP関連事業者や制度設計の有識者に対して実施してきたインタビューを通して、以下のような課題が浮き彫りになっています。

まず、需給調整市場などの開設が期待されているVPP関連市場においては、年間の取引ボリュームや単価などの情報の把握が困難となります。そのため市場規模の見通しが立ちにくく、また将来的な分散型エネルギーリソース、特に蓄電池の設置が加速化する目安である「ストレージパリティ」の到来時期が見通せないため、VPP関連のビジネスモデルを具体的に構築することが困難であることが挙げられます。

また、エネルギーリソースをアグリゲートし、需給調整市場などで取引するための業務要件やシステム要件のハードルが高く、関与するステークホルダーのニーズを把握することが困難であることも挙げられます。

さらに、需要家(業務用・家庭用の双方)が保有する需要家側分散型リソース(DSR:Demand Side Resources)をいかに獲得し、安定的に制御可能なリソースとすべきかの手立ても困難となっています。

図表 VPP事業課題

PwCのVPP事業化支援サービス

国内におけるVPP事業の将来的なポテンシャルは大きいものの、前述した事業課題がハードルとなり、本格的なVPPの事業参入を躊躇している事業者が存在すると理解しています。

VPPを事業化するためには、PwCでは企業の外部環境・内部環境の分析などを通じて「自社の課題は何か」「課題解決に向けた変化のドライバーは何か」を検討する必要があると考えます。

特に、VPP以外の事業で形成した技術・顧客リレーションなどの強みをVPP事業と組み合わせ、各社独自のビジネスモデルを立案すること、かつ制度設計の進捗に鑑み、顧客やパートナー企業の反応を見極めながら小さな事業から徐々に拡大していくことが肝要です。

実際にVPPが先行している欧米には、VPPだけでは安定的な収益性を確立できず、大手のエネルギー事業者に買収されたケースも散見されますが、VPP以外の事業とVPPとを組み合わせた多様な企業やビジネスモデルが存在し、国内企業にとって参考となるでしょう。

PwCは、新規事業の立案からデータ分析、ビジネスモデルの具現化まで、一貫したサービスの提供を強みとしており、欧米などのPwCグローバルネットワークに在籍する有識者や国内制度設計および市場対応のプロフェッショナルと連携し、VPPの事業化に向けた取り組みを総合的に支援することが可能です。

図 PwCのVPP事業化支援サービス

さらにご興味のある方は、下記のサイトを是非ご覧ください。

バーチャルパワープラント(VPP)事業化支援
https://www.pwc.com/jp/ja/industries/eu/electricity-system-reform/vpp.html

執筆者

佐野 慎太郎

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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日野 順之

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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