Worldwide Tax Summary 2026年6月号

  • 2026-07-21

PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問
岡田 至康 監修

Worldwide Tax Summary 2026年6月号トピックス

  1. 2027会計年度予算、トランプ政権優先事項(米国)
  2. 2025年度 APA報告書(米国(2))
  3. 電子的送信に対する関税モラトリアムの失効(WTO)
  4. 法改正に伴うクロスボーダー取引に係る出国税(ドイツ)

2027会計年度予算、トランプ政権優先事項

2026年4月3日、行政管理予算局(OMB)は、トランプ大統領の2027会計年度(FY 2027)予算を公表した。一連の予算ファクトシートには、連邦非国防支出の730億米ドル削減、国防支出の5,000億米ドル増額、およびグローバリスト気候アジェンダ(globalist climate agenda)への資金拠出の廃止を含む議会への提案が記載されている。本大統領予算には、議会が今年審議すべき新たな税制立法提案は含まれていないが、IRS(内国歳入庁)の予算を、今年初めに議会が承認したFY 2026の歳出レベル112億米ドルから14億米ドル削減し、98億米ドルとすることが提案されている。トランプ大統領は、提案された国防支出増額のうち3,500億米ドルを義務的支出として計上するFY 2027予算調整法案を2026年6月1日までに承認するよう議会に求めており、残りの1,500億米ドルの増額提案については、通常のFY 2027歳出プロセスの一環として審議されることとなっている。また、トランプ大統領は、国土安全保障省(DHS)の移民・関税執行局(ICE)および税関・国境警備局(CBP)の資金手当てについても、予算調整手続きを利用することを提案している。FY 2026のDHS暫定資金手当ては2026年2月14日に期限切れとなり、米国史上最長の部分的政府閉鎖が発生した。トランプ大統領は、2025年に共和党のみの賛成票により予算調整手続きを用いて成立した「One Big Beautiful Bill Act」で同省のために設けられた複数年度義務的支出勘定からDHS人件費の給与を賄うよう指示した。マイク・ジョンソン下院議長(共和党)とジョン・スーン上院多数党院内総務(共和党)は2026年4月1日の共同声明において、ICEおよびCBPを除くDHSに資金を充てる上院可決済みの歳出法案(H.R. 7147)を議会が承認し、ICEおよびCBPの資金については予算調整手続きを利用する方針を公表した。ICEおよびCBPへの資金がH.R. 7147から除外されたのは、これらの機関の権限に関する法改正を求める上院民主党の反対によるものである。なお、年次歳出法案の上院通過には60票の賛成が必要である。議会は2026年4月13日まで休会中であったが、上院は2026年4月1日のプロフォーマセッション(形式的会議)においてDHSの部分的歳出措置を承認している(注)。

議会は2026年4月13日に通常の立法スケジュールを再開後、下院および上院の予算委員会においてトランプ大統領の予算要求の審議を開始した。予算調整法案は単純過半数で承認可能であるが、上院規則は予算調整の利用にいくつかの制約を課しており、これを覆すには60票の賛成が必要となる。これらの制約には、予算調整条項が連邦予算に直接的な財政的影響を及ぼすものでなければならないという要件や、当該法案が予算決議の対象期間(通常10年間)外において連邦財政赤字を増大させてはならないという要件が含まれる。歳入委員会のジェイソン・スミス委員長(共和党)は、下院が審議するいかなる予算調整法案にも税制措置が含まれるとしており、議会の他の共和党議員も、医療や歳出削減等の幅広い課題に予算調整を活用することを求めている。予算調整立法の審議には、下院および上院が、特定の委員会に対し審議対象となる法案を報告するよう指示する同一の予算合同決議を承認することが求められる。

(注)本措置は、4月30日、下院も承認し、大統領の署名も得て成立している。

Source:PwC, Tax Insights

2025年度 APA報告書

2026年3月30日、IRS(内国歳入庁)のAdvance Pricing and Mutual Agreement Program(APMA)は、APA(事前確認制度)に関する第27回年次法定報告書を公表した。2025年に締結されたAPAは110件で、2024年の142件および過去最高を記録した2023年の156件から減少した。一方、APA申請件数は178件に増加(2024年は169件)しており、本プログラムに対する納税者の需要が引続き高いことを示している。また、APA未処理案件数は622件に増加しており、増加傾向が継続している。なお、LB&I(大企業・国際部門)は2023年にAPA申請の審査・受理に関する暫定ガイダンスを発出しており(2025年4月にLB&I-04-0425-0005として再発出され、その後IRM(Internal Revenue Manual)4.60.3に組み込まれた)、APAが確実性を得るための最も効果的な手段であるか、あるいは国際的コンプライアンス確認プログラム(ICAP:International Compliance Assurance Programme)(注1)や共同調査等の代替的な手段がより適切であるかを評価するための正式な審査プロセスを確立している。

APA締結件数の減少、処理期間の延長

2025年に締結された110件のAPAのうち、90件が二国間APAである(うち、50%が更新で、2024年の58%から減少)。インドと日本が最も多い相手国であり、それぞれ35%と25%を占めた。APA処理期間(中央値)は41.6カ月(2024年は33.5カ月)に伸びた。一方、APAの取下げ件数は10件(2024年は17件)に減少した。

APA申請件数の微増、未処理案件数の継続的増加

2025年にIRSは178件の正式なAPA申請(ほか31件のユーザーフィー案件の申請)があり、2024年の169件から増加した。2025年末時点の未処理APAは622件で、2024年末の560件から増加した。例年同様、未処理の二国間APAは少数の国・地域に集中しており、日本(27%)、インド(21%)、カナダ(11%)で大半を占めている。

インドが二国間APAで最多、日本は未処理案件数が最多

締結された二国間APAにおける相手国に引続き変化が見られ、インドが35%で最大のシェアを占め、日本の25%を上回った。カナダが11%を占め、ドイツと韓国がそれぞれ5%を占めた。その他の国(アイルランド、スイス、英国等を含む)が、締結された二国間APAの残りを占めた。2025年に申請された二国間APAのうち、インド(26%)が僅差で日本(24%)を上回り、イタリア(8%)、カナダ(7%)が続いた。未処理の二国間APAにおいては、日本が27%、インドが21%、カナダが11%を占めており、残りは、メキシコ、韓国、イタリア、ドイツ、英国等の国に分散している。

二国間APAが申請・締結において引続き主流

2025年に申請された178件のAPAのうち、153件(86%)が二国間、23件(13%)がユニラテラル、2件(1%)が多国間となっている。2025年に締結された110件のAPAのうち、90件(82%)が二国間であった。なお、2025は、55件(二国間39件、ユニラテラル13件、多国間3件)の更新が締結された。

APAの対象取引

2025年は役務提供が対象取引の最大カテゴリーとなり、締結されたAPAの53%(米国外事業体関連30%、米国事業体関連23%)を占めた。有形資産取引は28%(輸入取引20%、輸出取引8%)を占め、17%が無形資産に関するものであった。なお、OECDの利益Bに関する最終報告書では、その実施前に合意されたAPAが対象取引について優先されることを確認している。米国は利益Bを選択的セーフハーバーとして組み込むガイダンスを発出しているが、より広範な採用は未だ限定的であり、各国・地域の実施状況によることになろう。

APAの対象業種

2025年に締結されたAPAに係る業種区分は、卸売・小売業(29%)、サービス業(25%)、製造業(20%)、経営管理(15%)、金融・保険・不動産(7%)、その他の業種(4%)となっている。2024年と比較して、卸売・小売業が最大のセグメントとなり、製造業のシェアは縮小し、サービス業と経営管理の相対的な重要性が増した。

TPMとPLI:CPMとOMが引続き主流

2025年に締結されたAPAにおいて利益比準法(CPM)/取引単位営業利益法(TNMM)が、引続き最も広く使用された移転価格算定方法(TPM)であった。CPM/TNMMは、有形資産および無形資産の移転に関するAPAの86%、役務提供取引に関するAPAの83%に適用された。営業利益率(OM)は、有形資産および無形資産の移転に関するCPM/TNMMの適用において、引続き最も頻繁に使用される利益水準指標(PLI)であり、これらの案件の57%で使用された。役務提供取引におけるCPM/TNMMの使用では、OMおよび営業利益対営業費用の比率が主要なPLIとして、案件の66%に適用された(残余利益分割法(RPSM)等の代替的手法を使用するAPAの件数についての明示的な内訳は引続き示されていない)。

レンジと調整メカニズム

2025年に締結されたAPAの対象取引の大半は、米国移転価格規則で定義される四分位範囲内の結果を目標としていた。無形資産の使用料については、特定の料率とレンジの双方が使用されたとしている。外部比較対象取引のみに基づく使用料支払を伴う場合、その使用料支払後の営業利益率やコストプラスマークアップの検証等、副次的または確認的な手法も使用されている。

APA期間

2025年に締結されたAPAの40%弱が5年間の対象期間であり、Rev. Proc. 2015-41に基づく標準的な期間を維持している。最長のAPA期間は15年間であり、13件のAPAは5年未満の期間であった。全APAの平均期間は6年間であり、過年度と同様である(2025年に締結されたAPAの23%がロールバック年度を含んでいる(2024年の28%から減少))。(注2)

(注1)ICAPは、税務当局と多国籍企業(MNE)グループが連携して税務リスク評価を実施することで、主要な税務問題に関する確実性を高めることを目的としている。これは、自主的なプログラムであり、国別報告書などの情報を活用し、MNEグループと参加税務当局間のオープンで協力的な多国間協議を促進する(法的拘束力はない)。2026年3月時点で24カ国(日本を含む)が参加している(2026年4月にスロバキアの参加により25カ国になった)。なお、従前の申請期限(3月末・9月末の半期ごとの申請期限)は撤廃され、現在では随時申請が可能となっている。

(注2)グローバル税源浸食防止(GloBE)モデルルールの第4.6条(申告後の調整および税率の変更)において、過去会計年度の対象租税に関する負債の増額調整が生じた場合は、その調整が行われた会計年度に対象租税の調整が行われたものとして取り扱われることとされている一方、当該増額調整に対応する個別計算所得等の金額について、本モデルルール上どの対象会計年度で調整すべきか明確ではないこと等を踏まえて、本則計算において、当該各過去対象会計年度の個別計算所得等の金額に対する調整とする考え方もあり得ることから、慎重な対応が求められるケースもあろう。

Source:PwC, Tax Insights

電子的送信に対する関税モラトリアムの失効

2026年3月26日から30日にかけてカメルーンで開催された世界貿易機関(WTO)第14回閣僚会議(MC14)において広範な交渉が行われたにもかかわらず、加盟国・地域は電子的送信に対する関税モラトリアムの延長について合意に至ることができなかった。同モラトリアムは2026年3月30日をもって失効した。このモラトリアムは1998年から実施されており、WTO加盟国・地域がソフトウェア、視聴覚コンテンツ、その他の電子的送信といったデジタル配信製品に対して関税を課すことを防いできた。これと並行して、世界貿易の約70%を占める66のWTO加盟国・地域がMC14において、複数国間における電子商取引に関する協定(Agreement on Electronic Commerce)の暫定的実施に向けて前進することに合意した。これには、参加国・地域間で電子的送信に対する関税を課さないというコミットメントに加え、デジタル貿易円滑化、オンライン消費者保護、電子決済、データ保護、サイバーセキュリティーに関するルールが含まれる(本誌2024年11月号参照)。同モラトリアムは、技術的には関税に限定された措置であるが、クロスボーダーの電子的送信に対して安定的かつ予測可能な(無関税の)貿易環境を提供することにより、デジタル貿易の実現において重要な役割を果たしてきた。複数のWTO加盟国・地域は、電子的送信に対する関税賦課の全面的な影響は未知であり、まだ検証されていないと指摘した。将来的に関税が課されれば、貿易のさらなる分断、ビジネスおよびコンプライアンスコストの増加、そして競争力の潜在的な低下につながるであろう。なお、MC14後、米国の立場は2026年3月30日付の米国通商代表部(USTR)のプレスリリースで示され、米国は数十カ国から米国のデジタル送信に関税を課さないとのコミットメントを確保したとし、すべての貿易相手国に対して複数国間のモラトリアム協定へのコミットメントを呼びかけた。MC14に先立ち、事実上すべての加盟国・地域が、各閣僚会議でモラトリアムを延長しつつその影響に関するさらなる分析作業を継続するという現行慣行の継続、もしくは無期限のモラトリアムのいずれかを支持していた。

税収との関係も踏まえ、一部のWTO加盟国・地域は、デジタル課税が非差別的であり市場アクセス障壁を生じさせないことを確保するため、デジタル課税のより広範な見直しを求めている。これは、租税政策上の重要な視点を補強するものである。すなわち、議論の焦点はデジタル貿易に課税すべきか否かというよりは、どのように、そしてどの手段が適切かという点にある。多くの国や地域は、すでに自由貿易協定において電子的送信に対して関税を課さないという条項を設けている。開発途上国にとっては、新たなまたは最終的な立場が確定するまで関税措置の賦課は遅れることになるが、この遅れはデジタルサービス輸入に対するコスト増加を回避することにもなる。複数国間における電子商取引に関する協定の暫定的実施に向けて前進するという合意については、デジタル貿易に関する共通の規制枠組みを確立し、コスト削減、新たな機会の創出、電子商取引への信頼向上に寄与するものであり、前向きな進展といえよう。1998年のモラトリアムは失効しており、WTOの次回一般理事会(2026年5月)において優先事項としてさらなる議論が必要な状況となっている。本電子商取引協定に関しては、45カ国・地域が国内受諾手続きを完了した時点で参加WTO加盟国・地域に対して発効する予定であり、同時にWTOの法的枠組みへの組み込みに向けた取り組みが継続されることになろう。

Source:PwC, Global Tax Policy Alert

法改正に伴うクロスボーダー取引に係る出国税

連邦財政裁判所(BFH)が最近公表した判決において、出国税(Exit Tax)(資産の含み益(未実現利益)をドイツが課税権を喪失する前に把握・課税する手続き)は、原則として単なる法改正によっても生じうる(いわゆる「受動的」出国税)との判断が示された。

背景および判決内容

ドイツは、資産または事業が他の国・地域に移転される場合、ドイツが課税権を喪失するおそれがあるため、含み益(未実現利益)に対して課税をする(いわゆる出国税)。このような事態が生じるのは、例えば、納税者が国内の恒久的施設(PE)から国外の恒久的施設に資産を移転する場合である。納税者の能動的な関与がなくとも出国課税が行われうるか否かについては、当初より争いがあった。この問題は特に、新たな租税条約(DTA)に基づきドイツの課税権が放棄または制限される場合、すなわち当該条約によって当該資産の含み益に対する課税権がドイツではなく相手国に帰属することとなる場合、あるいはドイツが相手国の課す税額を自国の税額から控除(外国税額控除)する場合に生じる。

本件(I R 41/22)(注)は、スペインに不動産を所有するスペイン法人の株主であるドイツのGmbH(有限会社)に関するものである。2012年1月1日に発効した新たな独西租税条約において、ドイツは、ドイツ居住者が「不動産比率」50%以上(総資産に対するスペイン不動産の価値の割合)の法人の株式を売却した場合、スペインがキャピタルゲインに対して課す源泉税をドイツの税額から控除することを認めた。税務当局は、当該GmbHが将来株式を売却した場合にスペインの源泉税をドイツの税額から控除しなければならないリスクを、所得税法Section 4(1)のSentence 3におけるドイツの課税権の制限と捉え、2012年の課税年度において当該GmbHの含み益に対し法人税を課した。第一審の下級財政裁判所は、法改正のみを根拠とする出国税の可能性を原則として否定し、当該GmbHの不服申立てを認容した。連邦財政裁判所は下級審の論理を採用せず、法改正の場合であっても含み益に対する課税は原則として可能であるとの立場を維持したが、最終的には税務当局の上訴も棄却された。その理由は、税務当局が出国課税の法的効果を「誤った」課税年度に適用していたということである。当該法的効果は、課税権の排除または制限が有効となる直前に発生する。本件では、それは2011課税年度に該当していたはずであった。

もう一つの判決(I R 6/23)(注)では、連邦財政裁判所は出国税に関する類似の事案について判断を示した。税務当局は、ドイツ法人がオーストラリアに所有する不動産について、2017年1月1日に発効した新たな独豪租税条約によりオーストラリア不動産の将来のキャピタルゲインに対するドイツの課税権が消滅したとして、含み益に対する課税を行った。納税者はこの決定を争い、下級財政裁判所において勝訴した。連邦財政裁判所は下級審の判断を支持した。その根拠は、2016年12月31日まで有効であった「旧」DTAの下でも、当該不動産の売却益に対するドイツの課税権はそもそも存在しなかったというものである。しかしながら、仮に税務当局の見解に従い、2015年独豪DTAが2017年1月1日から適用されることにより課税権の制限があったと仮定したとしても、以下の理由により上訴は棄却されたであろう。すなわち、CTA(法人税法)Section 12(1)のSentence 1の法的効果が生じる時点は、課税権の「排除」または「制限」をもたらす事象が発生する直前である。したがって、法的効果は2017年ではなく、2016年中に認識されるべきであった(2015年独豪DTAは2017年1月1日から適用されているためであり、これは2018年10月26日付け税務当局通達の見解とは異なる)。

結論として、連邦財政裁判所は実務上の留意点として、クロスボーダー事案におけるDTAの改正やその他の法改正が、場合によっては関連資産の含み益(未実現利益)の前倒し課税につながりうることに注意しなければならないと指摘している。ただし、各法改正がドイツの課税権の排除または制限をもたらしたか否かは、個々の事案ごとに慎重に検討する必要がある。DTAの改正や新規締結は、通常、長期にわたる手続きを経て行われるため、納税者が適時に対応することが可能となろう。

(注)連邦財政裁判所 2025年11月19日判決(I R 41/22 および I R 6/23、2026年3月26日および4月9日公表)。

Source:PwC Germany

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