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社会や産業の構造が急速に変化するなか、新しいビジネスを生み出すためには、こうした変化を正しくとらえ、全体を俯瞰する視点が欠かせない。その鍵となるのが「システム・オブ・システムズ(SoS)」という考え方である。
SoSとは、もともと独立して運用されている複数のシステムが、情報通信ネットワークを介して連携し、単なる機能の足し算ではなく、新たな価値を生み出す仕組みのことを指す。システム同士がつながることで、これまでにない新しい基盤が生まれ、その上で新たな競争領域やビジネスチャンスが広がる。
その代表例が、電力業界で進む「スマートグリッド」である。従来は業界内部で完結していた発電・送配電システムが、通信技術を通じてさまざまなリソースと連携することで、より柔軟で効率的な電力運用を実現している。
近年、同様の変化が「電力」と「モビリティ」の統合にも広がっている。欧米では「Vehicle Grid Integration(VGI)」と呼ばれ、電気自動車(EV)を電力ネットワークの一部として活用する取り組みが進展している。EVが持つ蓄電機能を上手に使えば、電力の安定供給や再生可能エネルギーの有効利用を後押しできる。
この統合を実現するためには、これまで別々に発展してきた電力業界と自動車業界の間で、データや仕組みをどう連携させるかが重要な鍵となる。SoSの考え方をもとに、複数のシステムを全体として新しいアーキテクチャとして捉え直し、アクター(関係者)間の関係性を整理しながら、実現すべきユースケースを検討し、その実現に必要な機能や要件を明らかにしていくことが求められる。
これまで自動車業界と電力業界は、それぞれ独立したシステムの中に閉じており、両者が統合する機会はほとんどなかった。しかし、電気自動車(EV)の普及がこの産業構造の転換点となっている。電力系統の立場から見れば、適切なタイミングでEVの充電を行う「スマート充電」の実現が望ましい。また、EVの蓄電機能を需給調整や混雑緩和に活用できれば、設備投資の抑制にもつながる。
一方で、EVユーザーにとっても、スマート充電や調整力の提供によって報酬を受けられることで、高価になりがちなEV車両の負担軽減が期待できる。これにより、EV普及促進の好循環が生まれる。
このような電力と自動車の連携による新たなビジネスチャンスについては、欧米では議論が進む一方で、EVの普及が遅れていた日本では動きが限定的であった。しかし、2024年2月に経済産業省が「EVグリッドワーキンググループ」の報告をまとめ、これを受けて自動車メーカーや一般送配電事業者などが参加する検討の場が一般社団法人スマートレジリエンスネットワーク(SRN)内に設置され、同年9月から本格的な議論が始まっている。
PwCコンサルティングは、このSRNでの議論に参画し、日本のエネルギー・モビリティ産業の競争力強化を支援している。SoSのアプローチを活用し、複数業界にまたがるシステムを俯瞰的に新たな産業アーキテクチャで整理しながら、ユースケース定義、機能要件の明確化、データ連携の枠組み設計などを進めている。
電力とモビリティの融合は、単なる業界横断の取り組みにとどまらず、社会全体のエネルギー活用の在り方を変える可能性を秘めている。PwCは、異なる産業をつなぐハブとして、新しい価値創出に向けた変革を今後も支援していく。
※本稿は、日刊自動車新聞2025年12月1日付掲載のコラムを転載したものです。
※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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