【2021年】PwCの眼(7)労働力不足に対するマッチングプラットフォームの活用

2021-11-22

昨今、自動車・モビリティ産業では脱炭素や半導体・部品供給不足が世界的な課題として叫ばれているが、日本では労働力不足も深刻さを増している。開発、生産、整備、運送など幅広い領域で、人手不足により通常の事業運営が困難になったり、事故・不正が発生するような事象が増えている。これは産業全体で取り組むべき社会課題だ。

解決の方向性として、デジタル技術を駆使し、自動化や遠隔操作による無人化・省人化を進めることが考えられるが、企業横断的な対応として「労働力のシェアリング」も有効だろう。即ち、「働き手」(供給)と「利用者」(需要)を企業の壁を越えてマッチングさせ、産業全体として適時適材のリソース配置を実現するのである。

労働力を含むシェアリングでは、海外で普及しているライドシェアが有名だが、日本でも、中小の配送業者を組織化してサービス提供したり、複数の自動車リース会社が取引先の整備業者を相互利用したりするケースが挙げられる。これらは「シェアリング」より「マッチングプラットフォーム活用」と呼ぶ方が的確かもしれない。

マッチングプラットフォームの本質は、供給者が保有する非稼働リソースと需要者の利用ニーズを、デジタル技術によって低コスト・高精度でマッチングさせることで、機会損失を防ぎリソースの価値を向上させることである。今後、位置情報や稼働情報などのデータ取得や高度な分析技術が普及することで、従来では難しかった領域(例=高度なスキルを要する修理、特殊条件の配送)でもマッチングは普及していくだろう。人手不足で悩む企業・業界は、プラットフォームをどのように設計し、活用するかが鍵となる。

プラットフォーム設計者の視点で重要なのは、まずは業務全体を俯瞰して各社個々に進める競争領域と企業間で連携する協調領域を見極めることである。協調領域とみなす部分は、プラットフォーム上でやりとりしやすいように、情報やサービスの標準化・データ化を進める。人手不足で悩んでいる業界では、顧客獲得すらも競争領域ではなくなるため、限られた供給リソースで効率的に需要を満たすための需要予測、稼働管理、変動価格設定などの機能が重要になる。付加価値が低い業務をアウトソースとして取り込む余地もある。そして働き手・利用者双方に対して、データ分析に基づいたフィードバックを提供し、参加者のメリットを高めていくことにも意義がある。また、スキルを持つ個人がパートタイムや週末でも気軽に参加できる仕組みとすれば、幅広く柔軟なリソース確保に繋がる。

一方、プラットフォーム参加者(特に働き手)の視点では、プラットフォーム上でやりとりできるよう自社(個人の場合は自分)のスキルの見える化、サービスの標準化をするとともに、競争優位に繋がらない業務は徹底的に効率化する。中長期的にはより得意な領域にフォーカスできるようなスキルや設備に投資していくことが有効である。

労働力不足の時代には、企業規模の大小や個人を問わず、マッチングプラットフォームを通して競争と協調が促進され、業界全体のリソースの稼働率や生産性が高まる。これが結果的に社会課題の解決にも貢献するだろう。

執筆者

北川 友彦

北川 友彦

パートナー
PwC Strategy&

※本稿は、日刊自動車新聞2021年11月22日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

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