TCFD改訂附属書・追加ガイダンスのポイント

2022-01-14

気候変動への関心が近年高まっています。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)が公表した「第16回グローバルリスク報告書2021年版」(1)では、環境関連のリスクが「発生可能性」と「影響度合い」の両方の観点から上位を占めています。特に異常気象は「発生可能性の高い上位グローバルリスク」において2017年度より連続して第1位となりました。

気候変動がサブプライムローンの次のシステミックリスクになり得るという強い危機感のもと、金融安定理事会の気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TCFD」という)は、2017年6月、「Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures(以下、「TCFD最終報告書」という)」を発表し、企業等が効果的な気候関連開示を行うための枠組み(以下、「TCFD提言」という)を提示しました。

TCFD最終報告書の発表から4年が経過し、2021年10月時点で世界では2,600を超える組織がTCFDに賛同を表明しており、TCFD提言に沿った気候関連開示が進んできています。一方で、TCFD提言のうち、特に「戦略」(移行計画と財務的影響)および「指標と目標」に大きな課題があることが明らかになってきました。

市場や業界では、気候変動課題に関連する報告基準の収束や、気候変動関連指標の整合性・比較可能性の向上に向けた取組みが行われており、また機関投資家からも意思決定に有用な移行計画に関する情報開示への要求が高まっています。この状況を踏まえて、TCFDは、2017年にTCFD最終報告書と一緒に公表された「Annex:Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures (2017)(以下、「附属書」という)」を改訂するとともに、それを補足する追加ガイダンスを公表しました。

本稿では、今回の重要な改訂内容(追加ガイダンスの内容も含む)を解説するとともに、各企業がこれを踏まえて今後どのようなことに留意して気候変動対応を行っていくべきかについて考察します。

(1) 出典:世界経済フォーラム、2021年、「第16回グローバルリスク報告書2021年度版」

(全文はPDFをご参照ください。)

「旬刊経理情報」2021年12月10日号 寄稿

PwCサステナビリティ合同会社
ディレクター 山﨑 英幸

PwCあらた有限責任監査法人
マネージャー 萩原 早紀

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