これからどうなる?─「排出量取引制度」Q&A

第6回 その他の事項

  • 2025-07-10

※本稿は、2025年年6月10日号(No.1745)に寄稿した記事を転載したものです。
※発行元である株式会社中央経済社の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。

この記事のエッセンス

  • 排出量取引制度において、第三者機関は、対象企業が国に申請する割当量の算定について、申請する算定根拠および手順等を確認し、国の指針に整合していれば認証する。対象企業における体制整備に一定の期間を要すると考えられるため、制度開始当初より法人全体の排出量に対して一律の高い水準での保証を要求しない対応が考えられている。
  • 本格稼働する排出量取引制度は、対象企業に対して、各社の事業計画等を反映した直接排出および間接排出についての削減目標、およびその他関連事項を記載した移行計画の提出を求め、国は、提出された情報を公表するとされている。対象企業は、政府目標等を踏まえた野心的な排出削減目標の策定と、その達成に向けた対外的なコミットメントが求められる。
  • 論点整理案において、その他の検討すべき事項として、「中小企業に対する負担の不当な押し付けへの対応」、「既存制度との関係整理」、「サプライチェーン全体での排出削減の推進(GXリーグの見直し)」、「2033年度以降の排出量取引制度について」などが説明されている。

はじめに

カーボンニュートラル目標を表明する国および法域が増加するなか、海外において、排出削減と経済成長および産業競争力の強化をともに実現するグリーントランスフォーメーション(以下、「GX」という)に向けた投資が進んでいる。

国内では2023年5月に、GXの実現を目指す投資(以下、「GX投資」という)の促進に向けた政策パッケージである「成長志向型カーボンプライシング構想」を反映した「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(以下、「GX推進法」という)が成立した。これは、GX経済移行債を財源とする20兆円規模の先行投資支援と排出量取引制度を含むカーボンプライシングとの組み合せにより、企業のGX投資の促進を含んでいる。2023年度から排出量取引制度が試行され、クライメート・トランジション利付国庫債券は2024年2月から発行されている。

また、内閣官房のGX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ(以下、「CP専門WG」という)において、排出量取引の制度化に向けた論点整理が行われた。議論は排出量取引制度の骨格の形成を中心に行われ、制度運営における詳細は、今後の法制化において明確にされるが、現在試行されている排出量取引制度とは異なる点がある排出量取引制度の本格稼働が予想されている。本連載においてはCP専門WGにおける資料をもとに排出量取引制度の議論を中心に解説していく。

最終回の第6回は、第三者機関の関与、移行計画およびその他の検討すべき事項について、概要を解説する。なお、記載については、筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。


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執筆者

川端 稔

監査事業本部 パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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石川 剛士

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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