これからどうなる?─「排出量取引制度」Q&A

第4回 排出枠の割当、償却義務および取引参加者と取引

  • 2025-06-01

※本稿は、2025年年5月1日(No.1742)に寄稿した記事を転載したものです。
※発行元である株式会社中央経済社の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。

この記事のエッセンス

  • 本格稼働する排出量取引制度の対象企業において、リーケージリスクを緩和する措置について検討が行われ、排出枠の不足分のうち一定量の追加割当を行う取扱いが想定されている。EUETSでは、2026年以降、炭素国境調整メカニズムの暫時導入に伴い、無償割当は段階的に削減され、2034年には完全に廃止される。
  • 償却義務を未履行の場合、償却義務を履行した企業との公平性を確保する観点から、排出枠の上限価格および調達コスト相当の算定率(1.X倍)を用い、不足分に相当する金銭として、「未償却相当負担金」(仮称)の支払が求められる想定である。
  • 排出枠の取引は、基本的に排出枠自体を必要とする対象企業による実需に基づく取引が想定されるため、当初は排出枠の現物取引のみとする。また、排出枠の取引は、取引所のみにおいて取引が行われる取引所集中義務の導入が想定されている。取引参加者は、対象企業以外にも取引に関する一定の経験などの要件を満たした一部取引業者の参加を認める方針が明らかにされている。

はじめに

カーボンニュートラル目標を表明する国および法域が増加するなか、海外において、排出削減と経済成長および産業競争力の強化を共に実現するグリーントランスフォーメーション(以下、「GX」という)に向けた投資が進んでいる。

国内では2023年5月に、GXの実現を目指す投資(以下、「GX投資」という)の促進に向けた政策パッケージである「成長志向型カーボンプライシング構想」を反映した「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(以下、「GX推進法」という)が成立した。これは、GX経済移行債を財源とする20兆円規模の先行投資支援と排出量取引制度を含むカーボンプライシングとの組み合せにより、企業のGX投資の促進を含んでいる。2023年度から排出量取引制度が試行され、クライメート・トランジション利付国庫債券は2024年2月から発行されている。

また、内閣官房のGX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ(以下、「CP専門WG」という)において、排出量取引の制度化に向けた論点整理が行われた。議論は排出量取引制度の骨格の形成を中心に行われ、制度運営における詳細は、今後の法制化において明確にされるが、現在試行されている排出量取引制度とは異なる点がある排出量取引制度の本格稼働が予想されている。本連載においてはCP専門WGにおける資料をもとに排出量取引制度の議論を中心に解説していく。

第4回は、排出枠の割当、償却義務および取引参加者と取引について、概要を解説する。なお、記載については、筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。


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執筆者

川端 稔

監査事業本部 パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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石川 剛士

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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