新たな公開国別報告(PCbCR)の規定案を公表(EU)

2024-11-26

2024年8月1日、欧州委員会は、公開国別報告(PCbCR)の共通テンプレートと電子形式の導入について、2024年8月29日まで(4週間)、意見を募集した(その後、2024年9月6日まで(5週間)に期限を延長)。EU指令2013/34/EUのArticle 48b(1)に基づき、EU加盟国は、貸借対照表日における連結収入が7億5000万ユーロ超(2年連続)の会計年度について、法人所得税情報の報告書を作成し、公表し、アクセス可能にすることを特定多国籍企業(日系企業を含む)等に義務付けている。本EU指令(ミニマムスタンダード)上、本要件は、2024年6月22日以後に開始する会計年度に適用されることになっているが、早期適用を選択している国もある(例えば、ルーマニア(本誌2023年1月号参照))。

PCbCRの共通テンプレートについては、従前の非公開(税務当局に提出)の国別報告の記載要領に従う(その旨、報告書に記載)ことも選択として認められる(既に多くのEU加盟国の国内法で、そのような規定が設けられている)。本報告書の開示に係る電子形式は、XHTML(Extensible Hypertext Markup Language)、およびInline XBRL(Extensible Business Reporting Language)(注)とされている(2025年1月以後開始会計年度から適用)。これにより、税務情報の透明性に加え、アクセスのしやすさや比較可能性の向上が見込まれるとされる一方、これまで、多くの国(OECD)において、原則として採用されてきた、非公開国別報告の電子形式(XML)とは異なる電子形式が求められることから、実務上の負担(コンプライアンスコスト)を懸念するコメントも寄せられている。なお、日系企業を含め、EU域外の最終親企業(Ultimate Parent Undertaking)での開示(指令Article 48b(6))の特例の適用を受ける場合、(少なくとも)当該最終親企業においては、本新規定の適用(共通テンプレートおよび電子形式の利用)は義務ではない(ただし、最終親企業およびEU子会社について、これらに従うことも可能)とされている。また、Article 48b(4)の適用を受けるEU域外の最終親企業のEU子会社等について、最終親企業が必ずしもすべての必要情報の提供を行わない旨の報告書の作成および公表等において、本新規定(共通テンプレートおよび電子報告フォーマット)の対象にならないものとみられる。

(注)XHTMLは、EU上場企業の年次財務報告や、サステナビリティー報告で義務化されている電子形式で、これと整合させる目的があるとしている。Inline XBRL(オープン標準)は、人および機械可読マークアップ言語で、XBRLを、XHTML文書に埋め込むことができるとされる。

出典:European Commission website
「月刊 国際税務」2024年10月号収録 Worldwide Tax Summary
PwC税理士法人編
PwC税理士法人顧問 岡田 至康 監修

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