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多くの国際的な電力市場において、卸電力市場は確立された取引です。市場参加者は、価格変動や規制の変更、間欠性のある再生可能エネルギーの統合といった、日本も経験し始めている課題に直面しています。発電事業者、小売電気事業者、大口需要家にとって、市場が成熟し、流動性が高まるにつれ、先物やオプション契約などのエネルギーデリバティブは、リスクヘッジと安定したキャッシュフローの確保のためにますます重要になってきています。
電力自由化後、日本の卸電力市場は当初、限定的な流動性に加え、市場参加者が慎重であったため、成長が鈍化していました。その後、規制改革、新しい取引プラットフォームや新規市場参入(特に、2022年のFIP制度の開始)により、市場参加者が増加しました。その結果、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場 ― 即時現物の受渡しを行う市場 ―における市場取引活動が増加し、今日の総発電量の40%*1を占めるに至っています。
加えて、中長期的な受け渡しを視野に入れた市場、特に、電力先物取引の導入に伴い、近年取引量が大幅に拡大しました。先物取引は、将来の受け渡しに向け、固定価格を設定し、金融決済される取引所取引による契約です。
東京商品取引所(TOCOM)が2019年に日本市場向けの電力先物取引を開始した後、欧州エネルギー取引所(EEX)が2020年5月に、米国のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が2021年に、インターコンチネンタル取引所(ICE)が2025年に取引を開始しました。これらの取引所では、東西エリアのベースロード電力と日中ロード電力を対象とした先物契約を提供しています。2019年に先物取引が開始されて以来、これらの取引所における日本の先物の取引活動は著しく活発化しています。特に、EEXの伸びは目覚ましく、取引量は2023年の18.3TWhから2024年には72.9TWhに急増し、2024年のEEXの市場シェアは90%を超えています*2(図表1)。
図表1:EEX取引所における日本先物の伸び
ここで、新しい市場だけでなく、さまざまな新しい商品も導入されています。近年の革新的な商品は、JEPXとTOCOMが立ち上げた「JJ-Link」プラットフォームで、金融先物契約をスポット市場での現物受渡しに変換することができます。さらにEEX Japanは、2025年2月に東京と関西の電力月次オプションを導入し、デリバティブ商品の幅を広げています。これらの平均価格オプションは、それぞれの受渡月のJEPXスポット価格平均に対して決済されます。
さらに、EEXは、2025年4月に日本の電力デリバティブ市場にオーダーブック取引を導入し、透明性と流動性の向上を目指しています。
このように、日本の電力市場インフラは、スポット市場、複数の先物取引所、新しい市場商品などが相互に作用してプラットフォームが成長していくエコシステムとなっています。
この新しい卸売電力市場のエコシステムでは、より長い取引期間と、より多くの競争的な注文(ビッド・アスク・スプレッドの縮小)による取引コストの削減を提供することで、参加者がこれまで利用できなかった、あるいは十分に利用されていなかったリスク管理戦略の必要性が高まりました。
先物契約の主な用途のひとつは、市場リスクを軽減するために、長期的に将来の価格を確保することです。小売電気業者や大口の需要家は、調達コストの上昇をヘッジできる一方、発電事業者は将来の発電売価を保証することで収益を安定させることができます(後者のユースケースについて、図表2で説明します)。
図表2:電力先物契約を利用しヘッジした電力供給のシンプルな例
例:ある発電事業者が、先物取引を通じてt時点の市場価格を12,000円/MWで売ることで、t時点の市場価格での売電をヘッジします。このユースケースでは、発電時刻tに市場価格が10,000円/MWに下落する前提としています。売電に先立ち、発電事業者は(下落した)市場価格10,000円/MWで先物ポジションを決済し、同じ市場価格10,000円/MWで受け渡しします。発電事業者は、先物取引で2,000円/MW(12,000円/MW-10,000円/MW)、電力受け渡しで10,000円/MWの利益を得るので、実質的に12,000円/MWの電力受け渡し価格を得ることになります。
同時に、日次または週次受け渡しとなる短期先物など、より短期間のヘッジ手段も利用できるようになってきています。これによって、小売電気事業者や発電事業者は、国内でも起こり得る予期せぬ天候の変化や送電網の混雑を反映して、短期的にポジションを調整することができます。
日本の先物市場が東部(東京地区)と西部(関西地区)の価格帯に区分される中、価格差を管理するツールとして、先物ポジションの反対売買による地域スプレッド取引が台頭しています。これは、市場参加者が送電の混雑に起因する地域的な価格差をヘッジするのに役立ちます。同様に、電力先物とLNG先物を活用した燃料連動型ヘッジにも適用できます。日本の電力価格は、LNGの輸入コストと密接に結びついているため、市場参加者は燃料リスクをヘッジし、急な燃料価格変動から自社を守ることができます。
さらに、構造化された商品は、リスク管理のための新たなアプローチを提供します。例えば、最近導入されたEEXオプションを利用すれば、小売電気事業者は、比較的低いコストで、全体的なエクスポージャーの不確実な割合に対して、ある閾値を超える価格上昇へのエクスポージャーを制限することができます。
このように、市場参加者は、卸電力市場を余剰電力の二次的なオプションと見なすべきではないと考えられます。ヘッジ目的でも最適化目的でも、積極的な市場参加が不可欠です。必要な能力を開発するためにトレーディング部門を設置またはアップグレードする際には、以下の点を予測・考慮すると良いでしょう。
エネルギー取引組織におけるリスク管理のベストプラクティスと海外市場から得られる教訓については、次回のコラムで紹介します。
*1 出典:Japan Electric Power Exchange (JEPX) Overview [20240404 #Commodities#Tips]
*2 出典:EEX日本電力先物市場について
*3 出典:EEX Power Derivatives Market Update Q1 2025
*4 ETRM:Energy Trading Risk Management(system)、エネルギートレーディングリスクマネジメント(システム)。エネルギー取引のライフサイクル(取引から決済まで)をサポートし、関連するリスク管理を支援するソフトウェア
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