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日本のサービス事業者は、長年にわたり高品質なサービスを利用客に提供してきました。特に、「おもてなし」力は世界に誇れる日本の強みとして広く認識されています。観光関連事業者もその一翼を担っており、質の高いサービスを維持しています。しかしながら、多くの観光関連事業者は労働集約型のビジネスモデルに依存しており、低収益性が課題とされてきました。さらに、海外事業者の参入により競争が激化し、ビジネス環境はさらに厳しいものとなっています。
このような昨今の情勢変化を受け、2023年3月31日に閣議決定した「観光立国推進基本計画(第4次)」では、観光立国の持続可能な形での復活に向けて、観光の質的向上を目的とした戦略が策定されました。これにより、観光事業者が高品質なサービスに見合った価値(適正な価格)を享受して本業でしっかりと「稼ぐ」ことが、これまで以上に強く求められています。
私たちは、観光業で「稼ぐ」とは、単に売上を伸ばすだけではなく「利益の獲得」を意味すると考えています。具体的には、会計上のトップラインの「売上」を増やしつつ、テクノロジーやデジタルも有効活用しながら不要な業務や費用を削減して、健全な利益を確保することを目指します。そして、獲得した利益を資本として、従業員への人的投資や施設などへの設備投資を行い、さらに魅力ある観光サービスや観光地をつくることで、地域全体の観光業が「産業」として発展する好循環を生み出すことが重要です。他国と同程度もしくはそれ以上の高品質なサービスを提供しているにもかかわらず、他国よりも低い価格設定の下で利益の得にくいビジネスモデルを続ける―そのような状況からの脱却が、今まさに求められています。PwCコンサルティングでは観光業の持続的な発展のために、こうした課題に対する具体的な解決方法を提示していきたいと考えています。
では、地域内の自治体・事業者が観光業でしっかりと「稼ぐ」ためには、どのような活動が必要なのでしょうか。
前述のとおり、利益を獲得・増加させるには、(1)売上増加と(2)費用削減の両輪が欠かせません。それぞれの要素をさらに分解すると、以下のような取り組みが重要になります。
(1)売上増加に向けた要因
―(a)客数の増加
―(b)単価の向上
―(c)滞在時間の長期化
(2)費用削減に向けた要因
―(d)変動/固定費の削減
―(e)外部に支払う手数料の削減
これらの要因をバランスよく組み合わせることで、観光業の収益性を高め、持続可能な事業運営につなげることが可能になります。これらの要素を具体化すると、以下の8つの分類に整理することができます(図表1)。
(1)―(a):①既存顧客の定着化
(1)―(a):②新規ターゲット層の獲得
(1)―(b):③競争力強化
(1)―(b):④価格調整
(1)―(c):⑤観光の多様化
(2)―(d):⑥地域内連携
(2)―(d):⑦IT活用
(2)―(e):⑧顧客特性ごとの販路
図表1:「稼ぐ観光地づくり」の方法論の整理
これら8つの取り組みは単独で実施するものではなく、複合的に組み合わせることで、より効果的な施策となります。ただし、それには各地域や各事業者が抱える内部要因(人材・資源・組織体制など)と、外部環境(市場動向・競合状況・制度など)が大きく影響するのは言うまでもありません。また、これらの変革は言葉で語るほど容易なものでもありません。
PwCコンサルティングでは主体者・推進者となり得る観光地(地域)や観光事業者がこれら8つの取り組みをどのように進めると収益化が図れるかを検討し、整理しました(図表2)。
図表2:収益化プロセス
その結果、収益化の起点となるのはいずれも「競争力強化」であることが分かりました。足元では外資系オペレーターを含む競合の増加により、市場の競争環境が厳しくなったとともに、利用客の選択肢が増加し、その嗜好も多様化が進んでいます。それにより、単一的な特徴、例えば観光名所に近いなどのみでは利用客に選ばれにくくなっているのです。競争力強化を図る上では、「誰に」「何を」「どのように」訴求するかを具体的に考えて施策を検討する必要があります。
その際、観光事業者が施設の改築などといった大きな投資に着手する必要は必ずしもありません。また、「競争力強化ができない=収益化ができない」といった短絡的な考えに陥る必要もありません。ほんの少し視点を変え、新規ターゲット層の獲得にも目を向けた施設・サービスの再設計から始めることもできるのではないでしょうか。
例えば、有名な観光名所へ訪れた帰りに1泊2食付きプランで滞在する宿泊客が大半だった施設が、有名な観光名所に訪れるだけでなく、ラウンジでお酒を飲んだり読書をしたりしながらゆっくりしたい、夕食は地元の飲食店で食事(泊食分離)がしたい、といった新しい旅行ニーズに応える形で施設・サービスの再設計を行うことで、他施設との差別化を図ることができるでしょう。
あるいは、ファミリー層向けに豪華な食事をリーズナブルに提供することを強みにしていた宿泊施設が、昨今のウェルネスツーリズム(心身の健康増進やリフレッシュを目的とした旅行スタイル)のトレンドを踏まえ、家庭で作るには手間がかかる、身体に優しい食事を強みにして新しいターゲット層を獲得できる可能性もあるでしょう。具体的には、日常生活で乱れた腸内環境をリセットしたいが、1人でファスティング(断食)するのは難しいというニーズのためのファスティングプランの企画や、仕事が多忙で外食生活が続いているため、高価格でも高栄養価な食事を取ってリフレッシュしたいという共働き層をターゲットに置いた新たなプランを醸成・発信することも考えられます。
本コラムでは、ほんの少し視点を変える例として、食習慣にまつわる変化に焦点を当てて解説しました。
PwCコンサルティングは、ホスピタリティ業界における深い知見と実績、そして課題解決に向けた多様なソリューションを活用しながら、各自治体や事業者の皆さまにとって最適な解決策を提案してまいります。