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2020-07-10
金融安定理事会が設置したTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース)の勧告に沿った情報開示が日本でも普及し始め、同勧告への賛同を示すTCFDサポーターは、日本国内で約260団体(2020年4月時点)にまで増加しています。一方、PwCがさまざまな業種の企業から気候関連対策に関するご相談をいただく中で、「自社が直面する気候関連リスクをしっかりと理解できていない」「TCFD対応のための分析を企業全体の気候関連戦略・対策に活かせていない」といった声が多いのも事実です。本シリーズでは、さまざまな業種における主要な気候関連のリスクを解説します。第1回では、非金融領域における気候変動のハイリスクセクター全体で具体的にどのようなリスクが認識されているかを俯瞰します。後続のコラムでは金融セクターを含め主要な個別セクターをいくつか取り上げ、それぞれのリスクをさらに具体的に解説します。具体的に予定しているテーマは、以下の通りです。
また、シリーズの最後には締めくくりとして、TCFD対応の気候関連戦略・対策への統合について解説する予定です。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の見解であり、所属する組織を代表するものではない旨をあらかじめお断りしておきます。
TCFD勧告は2008年からのリーマンショックを受け、「次の金融危機は気候変動によってもたらされる」という懸念から検討が開始されたという背景がありますが、その対象は金融セクターのみにとどまりません。実際に金融市場において顕在化する気候関連リスクは、その投融資先であるさまざまなセクターにおけるリスクに起因します。そのため、TCFD勧告では、気候変動のリスクが特に高いと考えられる非金融のハイリスクセクターを、4つのグループにカテゴライズして定義しています。
これらのセクターは、気候変動による移行リスクと物理的リスク(詳細は後述)の観点から、特に影響を受けやすい3つの要因、GHG(温室効果ガス)排出量、エネルギー使用量、水使用量を基に決められています。
前項で紹介した4つのハイリスクセクターは、気候変動によって大きな影響を受けるという点では共通している一方、具体的なリスク要因や種別、その影響経路は各セクターで異なります。
図表1では、4つのハイリスクセクターについて、リスク種別ごとに4セクター間での相対的なリスクの重要度を示しています※2。それぞれのリスク種別の概要は以下の通りです。
図表1:4つのハイリスクセクターにおけるリスクの重要度
主要なリスクを、その要因と共にいくつか見ていきます。
エネルギーセクターでは、現在そのビジネスの大半を化石燃料に依存していることから、そのGHG排出に対する炭素税といった規制・法的リスクが大きいと考えられます。さらに、この自社の排出に起因する費用面でのリスクに加え、顧客セクターでの排出削減の動きを受けて売上が減少する技術・市場リスクも考えられます。エネルギーセクターにおける詳細なリスクに関する分析は、後続のコラムで解説予定です。
運輸セクターでは、特に自動車関連セクターで従来の内燃機関自動車から電気自動車(EV)への急速な転換が既に進んでおり、このトレンドに乗り遅れると大きく競争力を失いかねないリスクがあります。材料と建物セクターでは、今後さらなる激甚化が予想されている台風や洪水といった気象災害により、不動産などの資産価値が大きく棄損するリスクが予想されています。農業・食料・林産物セクターでは、気温上昇といった気候パターンの変化により、農作物の収穫に大きな影響が出ると考えられます。後続のコラムでは、不動産と農業のそれぞれのセクターについて、そのリスクを詳しく解説します。
また、気候リスクはハイリスクセクターのみに関係するものではなく、程度の差こそあれ、あらゆるセクターに影響を及ぼし、場合によってはハイリスクセクター以外のセクターであってもそれに匹敵するリスクに晒される可能性があります。例えば気象災害の激甚化はその1つの例で、PwCが上記ハイリスクセクターに該当しない製造業のクライアントでの将来の災害リスクを分析したところ、日本国内における風水災の激甚化により、風水災リスクによる売上減少予測額が最大6割程度増加するという結果が導き出されました。
ここまでは気候変動によるリスクについて紹介してきましたが、TCFDではリスクと合わせて気候変動による機会も重要な要素として捉えられています。企業などでの気候変動対策が進むことによって、新たな市場が生まれるといったビジネス機会がその一例です。
例えばエネルギーセクターでは、再生可能エネルギーや代替エネルギーなどの低・脱炭素エネルギーが大きな市場として捉えられており、既にさまざまな企業がその市場開拓に向けて動き始めています。自動車セクターのリスクとして挙げたEVへの市場転換は、裏返すと大きなビジネス機会とも言えます。
気候変動対策は、リスクを軽減していきながら、新たなビジネス機会を積極的に獲得するという両輪で進めることが重要であると言えます。2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックが世界を大混乱に陥れましたが、その教訓として、発生確率は低いが起こると甚大な被害をもたらす、いわゆるテールリスクへの備えが見直されています。COVID-19後の世界経済の復興にあたっては、まさにこのテールリスクの増大を引き起こす気候変動への対策として、積極的に気候機会への投資が求められるでしょう。
※1 リスク種別は、TCFD勧告が定義するものを基にPwCにて類似するものを一部グループ化。相対評価は、PwCの各種調査に基づく独自の評価で設定。
※2 評価がないリスクは必ずしもリスクがないことを意味しない。また、各セクターに含まれる個別業種(前項参照)レベル、個社レベルでは、必ずしもこの限りでない。
本多 昇
ディレクター, PwC Japan有限責任監査法人
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