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2022-01-18
2021年12月24日に環境省より第1回の「脱炭素先行地域募集要領」および「ガイドブック」が公表されました。これに先立って同年6月に策定された「地域脱炭素ロードマップ」では、環境省をはじめとした国の積極的な支援のもと、地方自治体や地元企業・金融機関が中心となり、少なくとも100カ所の脱炭素先行地域において、2025年度までに地域特性などに応じた脱炭素に向かう先行的な取り組み実施の道筋をつけ、2030年度までに実行することとしています。これにより、農山漁村、離島、都市部の街区など多様な地域において、地域課題を解決し、住民の暮らしの質の向上を実現しながら脱炭素に向かう取り組みの方向性を示せるとしています。脱炭素先行地域へのエントリーを目指す自治体などは、初回の募集期間である2022年1月25日~2月21日の間に「脱炭素先行地域計画提案書」と「脱炭素先行地域計画提案概要」の2つの様式の提出が求められ、その後、学識経験者らの審査を経て2022年春ごろに20~30カ所が選定される予定です。
ガイドブックによれば、脱炭素先行地域は、「地域脱炭素ロードマップなどを踏まえ、脱炭素先行地域に相応しい再エネ導入量や当該地域のある地方自治体での再エネ発電量の割合等のほか、地域の課題解決と脱炭素を同時実現して地方創生にも貢献する点」などの観点から、評価の高い地域が選定されます。具体的には「2030年度までに、脱炭素先行地域内の民生部門(家庭部門及び業務その他部門)の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロを実現すること」や「再エネポテンシャル等を踏まえた再エネ設備の最大限の導入」などをはじめ、8つの要件を満たす必要があります。例えば、「民生部門の電力消費に伴うCO2排出の実質ゼロ実現」をさらに掘り下げると、「脱炭素先行地域内の民生部門の電力需要量の実績値を集計又は推計し、脱炭素先行地域内に供給される再エネ等の電力供給量及び民生部門による省エネによる削減量の合計がそれと同等以上となる計画であること」という必須要件の「確認事項」に加えて、「今ある技術を活用し、全国の多くの地域で取り組みやすいものであること」や「技術的に確立されているが、社会実装された例が少なく先進性があること」といった加点要素になる「評価事項」により評価が行われます。2021年12月28日時点で514の自治体が2050年ゼロカーボンシティを表明しており、PwCもいくつかの自治体などを支援していますが、エントリー時期に違いはあるものの、その多くが脱炭素先行地域に選出され、交付金の配分対象となることを目指しているため、激戦が予想されます。よって、今後の脱炭素ドミノにつながるような汎用性や先行事例がないような先進性を併せ持つ取り組みが期待されていると考えられます。
※出典:環境省「脱炭素先行地域づくりガイドブック」https://www.env.go.jp/press/files/jp/110359/117269.pdf
脱炭素先行地域は市町村といった行政区域より小さな地域、例えば住宅街・団地や中心市街地、大学のキャンパス、農山漁村、離島などがイメージされているため、そのまま応用することは難しいかもしれませんが、2025年に世界初のカーボンゼロ都市になると決めたコペンハーゲンをはじめ、グラスゴー、アムステルダムなどの海外の先進事例も踏まえて、脱炭素先行地域づくりに向けて重要なポイントを5点挙げます。
元々スマートシティはエネルギー利用の効率化や再エネ普及からスタートしているので、脱炭素化とスマートシティは非常に相性が良く、海外の先進都市では各都市固有の課題から創出された個別のスマートシティ事業が脱炭素戦略を加速させる取り組みとなっています。スマートシティ施策と脱炭素戦略を計画段階から戦略的にひもづけることで、脱炭素化の取り組みをより効果的に進めることにつながります。
国や自治体、民間企業などが脱炭素化を加速している一方で、地域住民1人ひとりの意識変革や行動変容につながっていないことが課題となっています。欧州では「Smart Citizenなくして、Smart Cityなし」と言われており、地域住民を巻き込んだ議論の場が設定されています。また、単に詳細に計画したものについて合意を取って実行していくのではなく、日々計画も変化していくために、常にインタラクティブな環境を用意するとともに、ビジョンを示し、各取り組みについて地域住民にとってのメリット、デメリットをしっかりと共有していくことが重要視されています。
PwCコンサルティングは、企業、大学・研究機関、地方公共団体、関係府省などを会員とするスマートシティ官民連携プラットフォームにて「ネット・ゼロ スマートシティ検討分科会」を運営していますが、その中で自治体から脱炭素化に向けた最も大きな課題として挙げられるのは人材不足、専門知識・情報不足、資金不足です。各地域の課題やステークホルダーは多岐にわたることから自治体のみの取り組みでは効果を出しづらいため、自治体、民間企業、大学などの学術機関がお互いの知恵を出しあって課題を解決するためのコンソーシアム(協議会)を設立して調整役を担い、地域住民を巻き込んで推進していくことが重要です。
日本の太陽光導入容量はすでに平地面積当たり世界最大であり、新規の太陽光発電の適地が少なくなっていることに加えて、風力発電については風況が良い平野の面積が狭かったり、洋上風力に向く遠浅の海が少なかったりします。ですが、再エネポテンシャル最大化に向けて、農業の耕作放棄地のスペースを活用した太陽光発電、ソーラーシェアリングと呼ばれる営農型の太陽光発電、民間の住宅や建築物を対象にした太陽光発電設備の設置、陸上・洋上風力発電、バイオマス発電、小水力発電、コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)による再エネ調達、分散型エネルギー資源を活用するVPP(Virtual Power Plant)推進など、ありとあらゆる手段を尽くす必要があります。
多くの自治体はエネルギー収支が赤字となっており、地域経済を圧迫しているため、エネルギーの地産地消により地域経済の活性化、地方創生につなげることが重要です。PwCには、エネルギーを地域にとどめて還流させて電気料金を引き下げることにより住民や地元企業の「可処分所得」を増やしたい、事業収益により自治体の新たな財源を確保する手段の1つとして地域新電力を設立したい、といった相談が増えています。また、ふる里(出身地)の再エネ電力を「ふるさと納税」の返礼品として用いて全国各地(居住地)で消費することよって地域外から収益を得ることも可能となっています。
※PwC「電力×ふるさと納税制度」ソリューション
https://www.pwc.com/jp/ja/industries/eu/renewable-energy-support-co-creation.html
これら5つのポイントに留意した計画を立案することは、脱炭素先行地域を目指す上で重要なだけでなく、脱炭素の取り組みを実質的に前進させるためにも有意義だと言えるでしょう。
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