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2021-05-11
日本における地域インフラの多くは高度経済成長期の1960年代から80年代にかけて整備されたことから、現在は老朽化が進み、各種の損傷や事故が報告されています。これらのインフラの維持管理にあたっては、老朽化だけでなく、人口構造の変化に伴う費用対効果や財政状況の悪化など多くの問題があり、改善が困難な状況です。
地域インフラは住民の安全・安心な暮らしを担保する生活基盤であり、適切な維持ができない場合は、地域の魅力低下につながります。その結果、住民が地域を離れ、自治体の歳入は減少し、さらなる劣化を招くという負のスパイラルに陥る可能性があります。例えば、地域インフラが劣化しているにもかかわらず、そのまま放置したために地震や台風などの自然災害時にひどく損傷し、住民の生活に甚大な影響を及ぼすことも考えられます。
このような負の影響を避け、持続可能なまちづくりを実現するためにも、効率的なインフラ維持管理の仕組みづくりが不可欠となります。
これまで地域インフラの維持管理を担う中心は行政でした。しかし、行政のみでは財源的にも技術的にも困難な状況になってきたため、民営化や、民間事業者との協業が始まりました。その結果、計測・点検センサーを搭載したドローンを活用した設備の劣化検知など、新技術を活用することで維持管理の高度化が図られ、維持管理コストの削減や技術者の代替が進んできました。維持管理の効率化も進んでおり、このような取り組みはますます加速していくと考えられます。
地域インフラの維持管理は行政または民間事業者が主体となり、その高度化・効率化に取り組んできました。しかし、維持管理の多くは原則的に事前に策定した管理計画に沿って行われるため、住民ニーズとの間に乖離が生じる可能性があります。住民ニーズによりきめ細かくこたえる維持管理を実現するには、従来のやり方に加え、住民が参画する仕組みが不可欠です。地域インフラの利用者たる住民がその維持管理に自ら関わり、現状を理解し、問題意識を表現する仕組みをつくることで、効率的かつ満足度の高い維持管理が可能になると考えます。
例えば道路保全を考えた場合、従来は行政の維持管理計画に基づいて点検や補修が行われていましたが、住民が生活の中で見つけた不具合を行政へレポートし、行政が柔軟に対応できるような仕組みを構築すれば、住民が抱える課題を迅速に解決できます。また、住民が維持管理プロセスの一部を担うことで、点検コストの削減や補修箇所の早期把握といったベネフィットも得られます。
昨今のスマートシティは、住民の意見を収集し、活用するためにテクノロジーを積極的に導入する傾向にあります。
たとえばバルセロナ市では住民の意見を収集し、政策へ生かすために「Decidim」というウェブプラットフォームを構築し、住民に対して市政への参加を促しました。その結果、市が2015年から2019年のアクションプランを策定する際には、4万人以上の住民が「Decidim」を通じて、日々の生活に直結する議題などに対して1万件以上の提案を行いました。そして実際に、約1,500のプランが採択されたのです。
地域インフラという観点では、シンガポールで「Beeline SG」というシャトルバス予約アプリが開発されました。単純なオンデマンド乗車の仕組みだけでなく、新たな運行ルートを提案できる仕組みが実装されており、顧客が真に必要とする運行ルートを定めることでバスの運行を効率化しました。実際に2015年から2019年1月までに80,000件を超える新ルートの提案があり、348ルートの開設に至りました。日本でも千葉市が地域課題(道路の損傷や遊具の破損など)のレポートアプリ「ちばレポ」を構築し、地域インフラの点検に住民が参加しています。
このように地域インフラの維持管理に住民参加の観点を加えることで、住民が抱える課題に迅速に対応することや、住民との協働により地域インフラを効率的に維持管理することが可能になります。
PwCでは、スマートシティを「社会課題を解決する『仕組み』を有し、新たなテクノロジーを活用して、継続的に住民満足度を高めるまち」と定義しています。住民参加型の地域インフラの維持管理は、社会課題の解決および継続的な住民満足度の向上に資する1つの効果的な仕組みであると言えるでしょう。老朽化が進んだ地域インフラを効率的に維持管理するという、多くの都市が抱える課題を解決するためにも、住民1人1人が声を上げ、行動することが、これからの魅力的なまちづくりには必要不可欠です。
※詳しくは「2050年 日本の都市の未来を再創造するスマートシティ」レポートをご覧ください。
藤平 寛人
マネージャー, PwCコンサルティング合同会社
※法人名・役職などは掲載当時のものです。
総人口と労働力の減少、高齢化の進行が予測される昨今の日本において、「スマートシティ」の取り組みが注目されています。PwCはSociety5.0時代の社会課題の解決に向け、クライアントである行政とその先に暮らす住民の価値創出を、ワンストップで支援します。
都市開発事業における価値創造および社会課題解決を支援します。また、都市開発事業を通じ、都市開発プロジェクトの投資家や開発コンソーシアム構成プレイヤーの価値向上につなげます。
PwCでは、多様なプロフェッショナルが豊富な経験と独創的な発想力を生かして、官公庁や地方自治体、公的機関が抱える課題の解決を支援しています。