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世界情勢の緊迫や、突然の大地震、地球温暖化による気象災害の激甚化、重要なシステムのダウンなど、企業が直面し得るクライシス(危機)は多様化、複雑化しており、いつ、何が起きるのかを予測することはきわめて難しい状況です。
余震を何度も繰り返し、本震より余震の被害が大きかった2016年の熊本地震や、2024年1月に起きた地震の復興途上で、夏に豪雨被害を受けた能登半島のように、複数のクライシスが同時多発的に、あるいは時間を置かずに発生するケースが起こり得ることも、私たちは経験しました。
こうした複合的クライシスに直面した場合、企業は何を優先し、どのように対処すればよいのでしょうか?本コラムでは、30年以内の発生確率が80%程度と政府の地震調査委員会が発表した南海トラフ地震が起こった場合を想定し、「複合的被害」に備えて整えるべきBCPの要件とポイントについて解説します。
南海トラフ地震は、静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域とし、100~150年間隔で繰り返し発生してきた大規模地震です。
科学的に想定される最大クラスの地震(南海トラフ巨大地震)が発生した場合、静岡県から宮崎県にかけての一部では震度7となる可能性がある他、関東地方から九州地方にかけての太平洋沿岸の広い地域に10mを超える大津波の襲来が想定されています*1。
政府は、南海トラフ地震の予兆を確認した場合、本震が起こらなくても危険情報を発令し、外出自粛要請や交通機関の運休、道路の通行止め、危険地域からの避難命令など、経済活動の停滞に影響するさまざまな規制を行うことを検討しています。
さらに、紀伊半島の東西で別々に地震が発生した場合、首都圏から九州までが地震や津波の被害に遭うだけでなく、結果として以下のような事象が複合的に発生すると想定されています*2。
*1 出典:気象庁ホームページ(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jishin/nteq/index.html)
*2 参照:
静岡県HP南海トラフ地震臨時情報について|静岡県公式ホームページ
内閣府 南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)発表を受けて の防災対応に関する検証と改善方策
内閣府 大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ
大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策―~富士山噴火をモデルケースに~(報告)
日本企業の多くは、2011年3月11日に発生した東日本大震災で、生産停止やサプライチェーンの寸断といった影響を受けたことを教訓に、BCPの整備を進めてきました。しかし、南海トラフ地震が発生した場合に起こり得る複合災害や大規模な災害はまだ想定しきれておらず、現行のBCPでは不十分と言えます。
南海トラフ地震が発生すると、その被害は首都圏や東海、関西などの地域にとどまらず、広いエリア(複数のエリア)に及びます。そのため、現行のBCPのままで南海トラフ地震に対応しようとした場合、以下のようなリスクが想定されます。
以上のように、地震による被害が広いエリアに及んだ場合、現行のBCPで想定しているバックアップ拠点も影響を受ける恐れもあります。
東京が被災した場合、中京地区や関西地区からの応援や、機能代替を検討している企業も少なからず見受けられますが、南海トラフ地震で想定されるように東京から九州にかけての広範囲で激甚災害が起きた際、最悪の場合、代替機能や支援機能が全て機能しなくなるというシナリオも想定されます。
また、富士山が噴火した場合、降灰の影響で付近にあるデータセンターが機能しなくなる可能性もあります。関東近郊にのみデータセンターを置く企業は、それ以外のエリアにもバックアップデータを保存できるようにするなど、何らかの対策が必要になります。
これらの複数拠点の同時被災や、ボトルネックの存在を前提としたBCP対策が求められているのです。
例えば、データセンターが特定地域にしかないのであれば、コンテナ型などの移動式データセンターを設け、災害時のレジリエンスを高めるのも方法でしょう。実際、そうしたサービスの提供を行っている企業もあります。また、広いエリアで陸上の交通網が寸断されることを想定し、国内の長距離輸送をフェリーや専用船に切り替える動きもあります。
この他、主要なオペレーションの中枢を北海道や九州西部など南海トラフ地震の被害想定エリア外の地域に分散させる、クラウドサービスを活用しオンラインで継続可能な業務はオンラインで行う、といった対策を講じることも有効です。
複合的被害にスピーディに対応するためには、平時からの訓練も欠かせません。多くの企業の場合、BCPの訓練は行っていても、特定の災害だけを想定した訓練や、特定部門のみの参加、実務への干渉防止などを理由にした小規模な訓練にとどめるケースが多いようです。
しかし、南海トラフ地震のように被害エリアが広範囲にわたり、地震や津波の被害だけでなく、道路の寸断、大規模停電など複合的な被害が想定されるクライシスに対処するには、部分的、限定的な訓練だけでは不十分です。
各地から続々と異なる被災状況が報告される中、全体の状況を把握し、優先順位を付けながら各部署を動かせるような大規模訓練の実施が求められます。
PwCコンサルティングでは、こうした大規模訓練の企画や実施についても支援を行っています。現行のBCPを把握し、大規模災害が発生した場合に生じ得るリスクを洗い出した上で、より適切な対策を提案する他、それを機能させる訓練プランも策定可能です。
この他にも、PwCコンサルティングが災害発生時の危機管理に関して提供できるサービスは多岐にわたります。
例えば、ここまで南海トラフ地震に焦点を当てて対策を論じてきましたが、地震や洪水といった発生事象別のBCPではなく、ITシステムの停止、データ消失、サプライチェーンの寸断など、災害によって起こり得る結果事象を起点にBCPを策定するというアプローチもあります。これは日本経済団体連合会などが提唱している「オールハザード型BCP」と呼ばれるもので、複数被害の同時多発に耐え得る対策方法として注目されています。
PwCコンサルティングは、こうした新しいアプローチも含め、BCPの見直しや、BCPの実効性を高めるための訓練対応、被災現場の状況を把握するクラウドサービスやAIカメラといったテクノロジーの導入など、多面的なサービスで企業の危機管理を支援しています。
まずは、現行のBCPがビジネスの継続に十分かどうか、しっかり検討してみることをお勧めします。
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