複合的クライシスにどう備える

南海トラフ地震の想定被害をもとに考える企業のBCP対策

  • 2025-07-15

はじめに

世界情勢の緊迫や、突然の大地震、地球温暖化による気象災害の激甚化、重要なシステムのダウンなど、企業が直面し得るクライシス(危機)は多様化、複雑化しており、いつ、何が起きるのかを予測することはきわめて難しい状況です。

余震を何度も繰り返し、本震より余震の被害が大きかった2016年の熊本地震や、2024年1月に起きた地震の復興途上で、夏に豪雨被害を受けた能登半島のように、複数のクライシスが同時多発的に、あるいは時間を置かずに発生するケースが起こり得ることも、私たちは経験しました。

こうした複合的クライシスに直面した場合、企業は何を優先し、どのように対処すればよいのでしょうか?本コラムでは、30年以内の発生確率が80%程度と政府の地震調査委員会が発表した南海トラフ地震が起こった場合を想定し、「複合的被害」に備えて整えるべきBCPの要件とポイントについて解説します。

複合的な危機を想定した大規模訓練の必要性

複合的被害にスピーディに対応するためには、平時からの訓練も欠かせません。多くの企業の場合、BCPの訓練は行っていても、特定の災害だけを想定した訓練や、特定部門のみの参加、実務への干渉防止などを理由にした小規模な訓練にとどめるケースが多いようです。

しかし、南海トラフ地震のように被害エリアが広範囲にわたり、地震や津波の被害だけでなく、道路の寸断、大規模停電など複合的な被害が想定されるクライシスに対処するには、部分的、限定的な訓練だけでは不十分です。

各地から続々と異なる被災状況が報告される中、全体の状況を把握し、優先順位を付けながら各部署を動かせるような大規模訓練の実施が求められます。

PwCコンサルティングでは、こうした大規模訓練の企画や実施についても支援を行っています。現行のBCPを把握し、大規模災害が発生した場合に生じ得るリスクを洗い出した上で、より適切な対策を提案する他、それを機能させる訓練プランも策定可能です。

おわりに

この他にも、PwCコンサルティングが災害発生時の危機管理に関して提供できるサービスは多岐にわたります。

例えば、ここまで南海トラフ地震に焦点を当てて対策を論じてきましたが、地震や洪水といった発生事象別のBCPではなく、ITシステムの停止、データ消失、サプライチェーンの寸断など、災害によって起こり得る結果事象を起点にBCPを策定するというアプローチもあります。これは日本経済団体連合会などが提唱している「オールハザード型BCP」と呼ばれるもので、複数被害の同時多発に耐え得る対策方法として注目されています。

PwCコンサルティングは、こうした新しいアプローチも含め、BCPの見直しや、BCPの実効性を高めるための訓練対応、被災現場の状況を把握するクラウドサービスやAIカメラといったテクノロジーの導入など、多面的なサービスで企業の危機管理を支援しています。

まずは、現行のBCPがビジネスの継続に十分かどうか、しっかり検討してみることをお勧めします。

執筆者

濱野 真子

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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